2023年12月7日
横浜市長 山中 竹春 様
日本共産党横浜市会議員団 団長 古谷やすひこ
国連では「地球沸騰化の時代」が到来したとして、各国政府などに、より強力な対策を直ちに取ることが呼びかけられました。
水素・アンモニアは火力発電の「延命」
日本も、深刻な気候変動を回避するための気温上昇1.5℃抑制に向けて、化石燃料依存から脱却し、石炭火力発電をやめ、急速な温室効果ガス(その大半は二酸化炭素)の排出削減を進める必要があります。しかし、海外の多くの先進国や自治体が2030年度までに石炭火力発電の全廃を目標に定めている中、日本政府は、撤退時期を示さず、火力発電を延命する水素・アンモニアの活用が盛り込まれたGX(グリーントランスフォーメーション)を進めるとしています。
12月3日、世界の環境NGOが参加する「気候行動ネットワーク(CAN)」は、ドバイで開催されている国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)で、岸田文雄首相が1日におこなった首脳級会合での発言に基づき、日本を「本日の化石賞」に選んだと発表しました。授賞理由は、岸田文雄首相が「世界の脱炭素に貢献する」とアピールしながら、石炭火力発電所でアンモニアを混焼する方針を掲げ、石炭火力継続を宣言したためです。CANは、アンモニア混焼方針は実質的な温室効果ガスの排出削減につながらないどころか、日本の脱炭素化の可能性をつぶすとして、環境にやさしいとみせかける「グリーンウォッシュだ」と批判しています。
さらに岸田首相が、アンモニア混焼を東南アジア諸国に売り込む「アジアゼロエミッション共同体」を拡大する意向を明らかにしたことも、東南アジアの国々の再生可能エネルギーへの移行を遅らせると指摘しています。
横浜市の温室効果ガス削減目標は国を上回る50%の設定をしていますが、目標達成に向けた逆算スケジュールなどの具体策は書かれていません。大規模自治体としての本気度が問われています。
本市の対策が気候危機対策の「本道」から遠ざかることに危機感
化石賞を受賞した日本政府のGX戦略に翻弄され、本市がやらなければならない省エネの徹底や再生可能エネルギーの促進という気候危機対策の「本道」から遠ざかる動きが生まれていることに、強い危機感を覚えます。
具体的には、横浜港で海外から水素・アンモニアを大量輸入し、貯蔵・利活用を行う「カーボンニュートラルポート(CNP)」の形成を行うとして、2023年8月8日に推進母体の「横浜脱炭素イノベーション協議会」を設立しましたが、その目的に省エネも再生可能エネルギーもありません。
そもそも水素やアンモニアは、天然ガスや石炭に混ぜて、既存の発電設備を利用して発電をするもので、現時点で石炭火力の代替えにはなり得ません。
また、原産国で大量の二酸化炭素を放出する化石燃料由来の「グレー水素」の活用では、温室効果ガスの総量削減に繋がらず、気候危機対策になりません。現在、世界で生産されている水素の9割以上がグレー水素と言われています。横浜で現在使われている水素もグレー水素です。
市の計画には、水素の生産時に発生する二酸化炭素を取り出して分離・回収して地中に貯めたもの(CCS)を活用する「CCUS」の普及に対応するとも明記していますが、CCS、CCUSともに普及には莫大な時間と経費が必要であり、実現性に乏しく、切迫した気候危機を前に全く間尺に合わないものです。
真っすぐに省エネと再生可能エネルギーの促進を
横浜市が署名した「世界気候エネルギー首長誓約」の第一には、「持続可能なエネルギー(エネルギーの地産地消など)を推進」が掲げられています。誓約に沿った施策の推進が求められています。
私達は、水素やアンモニアに予算と労力をかけるのではなく、省エネの徹底と自然再生可能エネルギーの促進にこそ全力をあげることが必要だと考えます。
そのためには、企業と国の方ばかりを見るのではなく、市民とともに考え一緒に行動することが不可欠です。本市が『気候非常事態』を発出し、『脱原発・脱石炭火力』宣言を行うなど目に見える本気の姿勢を示し、市民へ心を込めた啓発を行う必要があります。施策としては、次世代の太陽光発電(ペロブスカイト太陽電池)の実用化検証や、一定規模以上の新築・増設建築物への太陽光発電設備の設置の義務付けと一般家庭への補助金の復活、公共施設への太陽光発電設備の100%設置の前倒し、市内事業者の再エネへの切り替の促進、学校の断熱化などによる省エネ促進など、大都市横浜に求められていることは山ほどあります。
国の原発・石炭火力延命策であるGXに振り回されることなく、横浜市が本気で、地球温暖化対策を進めるために以下提案します。
記
一、本市の気候危機対策は、水素・アンモニアの活用ではなく、省エネの徹底と再生可能エネルギーの普及促進に集中すること。
以上