市政ニュース
2023年9月19日

選択制夫婦別姓を遠ざける「旧姓の通称使用の拡充を求める意見書」について

2023年第三回定例会に提出された『旧姓の通称使用の拡充を周知し、「第5期男女共同参画基本方針」に沿った政策推進を求める意見書の提出についての請願』は、選択式夫婦別姓の実現を遠ざけるもので、日本共産党横浜市議団としては、趣旨に賛同できません。

横浜市の意思として国に意見書が上がることは認められないことから、9月13日の政策・総務・財政常任員会で採択に反対しました。
採択の結果、自民党、公明党、立憲民主党、日本維新の会の賛成多数によって、採択されました。

日本共産党の主張した反対理由下記の通りです。 

「第5次男女共同参画基本計画」は選択制夫婦別姓の文言を削除したもの
 本請願で述べられているのは、「旧姓への通称使用の拡充を周知し、第5次男女共同参画基本計画に沿った政策推進を求める」ものですが、ここであげられている第5次男女共同参画基本計画は、選択式夫婦別姓の文言が削除されていますから、その計画の推進をすること自体が民法の改正による選択的夫婦別姓を実現することが遠のくと思います。選択的夫婦別姓は、もはや自民党以外の国政政党は公約に掲げてその実現を求めていますからみなさん承知していることと思います。夫婦同姓を義務付けている民法750条の改正は喫緊の課題です。

夫婦同性を法律で義務付けているのは日本だけ
 国際社会において夫婦が同じ姓を名乗ることを法律で義務付けている国は日本だけです。我が国の法制審議会ではすでに1996年に選択的夫婦別姓制度の導入を答申しています。しかしそれに一向に応えてこなかった政府は国連の女性差別撤廃委員会から、2003年・2009年・2016年と再三にわたり民法750条の改正をと勧告を受けています。氏名は個人として尊重される基礎であり、個人の人格の象徴だと思います。婚姻の際にどちらかに改姓を強制する現行制度は、以前の自分が消えるような喪失感を与えるものであり、個人の尊厳を守る立場とは相いれません。

通称使用を法律にしても国際社会には通用しない
 今請願にあるように「旧姓の通称使用を拡充する」「その法整備を」と求めていますが、かつて男女共同参画担当相であった野田聖子さんも「通称使用を法律にしても国際社会には通用しない」と明言されています。例えばパスポートですが、旧姓併記はできますが、国外では通称使用が理解されず、渡航や外国での生活などで支障がある。またこれはある研究者の方が言われていましたが、海外での仕事の実績が問われ、それを通称名で発表した記事や論文、あるいは出席した国際会議のプログラムなどで証明しなければならない。そのため、これから海外で活躍しようという若い人には証明が難しいという課題があります。

通称使用を拡大しても本質的な問題の解決にならない
 通称使用はダブルネームを認めることです。個人には使い分ける負担を増加させて、社会にはダブルネーム管理のコストや個人識別の誤りのリスクを増大させます。そして何よりも婚姻の際に姓の変更を望まない当事者にとって個人の人格、アイデンティティーに関わる本質的根源的な問題は、通称使用の拡大をしても何も解決はできません。憲法13条の個人の尊厳を冒すものであり、24条2項では婚姻に関して法律が個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない定めていると定めています。
 現実的なシステム改修の問題で言っても、旧姓使用を拡大するためには、行政や金融機関等の企業に膨大なシステム改修費用が必要になると思います。法的根拠のない姓の使用が広まると本人確認が困難になり、犯罪を誘発することも懸念されます。また多くの金融機関は、システム改修に費用がかかるとして、旧姓併記を導入していない。通称使用拡大もデジタル化にフィットするとは思えません。

選択式夫婦別姓は現代の家族の多様な考え方に合致する
選択的夫婦別姓を実現するための民法改正の実現にこそ市会の意思表示を

 国民の間に、家制度への考え方や家族間の違いはあると思います。だから、選択式夫婦別姓制度は夫婦同一性を選ぶ人の権利も保障しており、国民それぞれの思いをかなえる選択肢となる制度です。国連のSDGsで提唱する「誰一人取り残さない」社会の実現に向けて選択的夫婦別姓制度の実現させましょう。
 したがって、国への意見書を上げるのであれば、今請願ではなく、選択的夫婦別姓を実現するための民法改正の実現のために意見書を上げるべきです。よって本請願の趣旨には添い難いです。

請願 旧姓の通称使用拡充を求める意見書の提出方について


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