宇佐美委員:日本共産党を代表して質問します。よろしくお願いいたします。
まず初めに、西谷浄水場再整備と技術継承について伺います。
西谷浄水場は1915年に創設され、現在は市内4分の1の水道水をつくっている浄水場であり、市民生活を支える上で大きな役割を果たしています。この西谷浄水場の再整備計画が2021年度から本格的に事業化が始まります。
この再整備計画の策定に当たって当初の計画から変更した経緯と内容を併せて伺います。
遠藤担当理事兼水道技術管理者:西谷浄水場については、ろ過池、排水処理の池、導水路の耐震性不足と粒状活性炭施設の導入が課題となっていました。このうち喫緊の課題であるろ過池の耐震化と粒状活性炭施設の導入を先行して整備することとし、平成27年12月に公共事業評価委員会に諮り、妥当であるとの審議結果をいただきました。また、同月の水道・交通委員会で報告いたしました。しかし、翌平成28年4月には熊本地震が発生いたしまして、その際、取水ポンプなど浄水施設の上流側での被害によって長期間にわたって断水が発生したことがありました。そのことから、本市においても整備のスケジュールの見直しを行いました。その結果、水源から浄水場までポンプを使わないで水を送ることができる西谷浄水場の能力を最大限発揮させるために、導水路、浄水施設、排水処理施設の3つを合わせて整備して、早期に相模湖系水利権の水量の全量処理が可能となるように施設の増強に計画を改めました。これによりまして、当初の予定より全量処理を15年早く実現することといたしました。この計画についても、改めて公共事業評価委員会に諮り、昨年2月の水道・交通委員会で報告いたしました。
宇佐美委員:丁寧にありがとうございます。では、この再整備で今回採用する整備手法を伺います。
江夏西谷浄水場再整備推進室長:西谷浄水場の浄水処理施設と導水路は設計と工事を一括して発注するDB方式、排水処理施設は設計と施工に加え運営も一括して発注するDBO方式で整備します。
宇佐美委員:では、この整備手法による整備費として2021年度は約12億円の予算が組まれていますが、変更後の事業費は幾らか伺います。
江夏西谷浄水場再整備推進室長:今回3つの施設を合せて整備することによりまして、西谷浄水場全体の再整備に係る整備費としては695億円を試算しております。
宇佐美委員:私がお伺いしたのは、その全てを入れると幾らになりますか。
江夏西谷浄水場再整備推進室長 全て導水管も含めまして1175億円と試算しております。
宇佐美委員:その1175億円、どのように試算されたのか、またその算出結果の妥当性についての検討をどのようにされたのか、併せて伺います。
遠藤担当理事兼水道技術管理者:整備費の根拠と妥当性についてですけれども、計画の変更に当たって水道の事業に専門性を有する建設コンサルタントに基本計画の策定、整備費の積算を委託しております。その内容を設計関係者会議の中で綿密にチェックを行いました。整備費については、基本計画の整備内容や施工方法などについて過不足がないか精査し、その費用は厚生労働省から通知されている水道施設整備費に関わる歩掛かり表や水道局土木工事積算基準などの国や市の基準、さらには局の契約実績などに基づいて算出いたしました。したがって、整備費は妥当であると考えております。
宇佐美委員:今後は冒頭伺ったように、再整備は、浄水処理施設はDB方式、排水処理施設はDBO方式、導水路整備事業はDB方式。再整備全般は工程品質コストの管理運営にコンストラクションマネジメントを導入するということで、2021年度に各契約を民間事業者と結ぶ予定になっていますが、私が危惧しているのは、民間事業者が工事の際、新技術などを用いた場合、局内の検討委員会で適切な価格を算出できるのかということです。コストの管理、民間依存の中で新しい技術となるとコストを算出するための元データはありません。この新技術が企業秘密とされてしまった場合、なおのこと算出方法がなくなり、結果として事業者の言いなりの価格になってしまうことになりかねないということを危惧しております。その点どうお考えか伺います。
大久保水道局長:DB方式あるいはDBO方式というのは、従来は設計と施工を分離して発注しておりましたけれども、また運営も分離して発注をしておりましたけれども、それを一括して発注することによって効率的な事業推進と、それから経費の縮減につなげていくということでございます。したがいまして、これまでと手法を1つにしたということであって、設計に関してはこれまでとやり方が変わっておりません。また、先ほどお答えをしましたとおり、積算に当たりましては国からの通知、あるいは横浜市の積算基準というものに基づいてしっかりと積算をしておりますので、その点については御心配はないかと思っております。また、今回は西谷浄水場の再整備というのは、水道局を挙げた大変大きなプロジェクトでございます。したがいまして、今年、令和2年度には西浄水場再整備推進室を設置いたしまして体制の強化を図っております。ここには、多岐にわたる工事が必要となるために様々な職種の職員、知識や経験を有したベテランから若手職員まで配置をしております。また、局横断的な関係者会議というものを立ち上げまして、節目節目で事業の進捗、それから設計施工内容についてチェック、確認をしてまいります。
宇佐美委員:一生懸命やっているというアピールだったと思うのですけれども、民間事業者に頼るのは、やはり設計施工だけでなく、マネジメントも一緒だと思うのです。再整備事業の全てを民間に頼るとなると、今一生懸命おっしゃっていただいたのですけれども、将来水道局に技術やノウハウが蓄積されないということになることも危惧しています。適切な工事価格の判断、工事価格の見直し、工程の管理など事業者への指導には技術だけではなく事業を評価できる技術者の存在が不可欠だと思いますが、そういう意味でも技術継承をしっかり行う体制が確保できているのか、伺います。
大久保水道局長:繰り返しになりますけれども、こうした工事については、もちろん局職員の監督の下で民間事業者に設計を委託し、その内容をチェックし、そして施工につなげていくというやり方についてはこの西谷浄水場の再整備事業にかかわらず横浜市全体として行われているやり方でございます。ただ、そのチェックをしていく、それからしっかりとその設計の内容が適切であるか、設計の内容や工法、あるいは施工の内容が適切であるかということについては、局職員がその技術力を持ってしっかりとチェック確認をしていくということが必要だと思っております。そのために、繰り返しになりますけれども、局横断的な体制を整えまして、しっかりとそれを進めるとともに、先ほど来話題になっております職員の技術継承というものにつきましても、しっかりとその技術を継承できるように取り組んでいく必要があると考えております。
宇佐美委員:現場では水を濁らせることなく、さらに水圧の低下を起こさないためのバルブの回し方や、様々な音の中から漏水音を聞き分ける耳、水温や水の濁り、臭いなどで浄水処理の変更を判断する暗黙知と呼ばれる経験で習得した知識や経験を持った職員がおられると聞いています。これらの知識や経験は、マニュアルでは教えられないコツや勘を伴う技術だとも聞いています。今後20年に及ぶ工事が何事もなく無事に終了することが一番望ましいことですが、20年先となると、今ここにおられる職員の皆さん、異動されたり退職されたりということでほとんどおられないと思います。
今現在20代の職員さんが西谷浄水場の再整備の最後を見届けるということになったときに、工事が全て完璧だったのかを判断できるように技術継承をしっかり、今言っていただきましたけれども、しっかり行っていただきたいということを考えて質問をさせていただいておりました。
この次の質問ですが、技術継承にはなくてはならない経験豊富な先輩職員の処遇について伺いたいと思います。水道局では現在3つの形態で職員が働いていると聞いていますがどのようなものか、伺います。
池尻副局長兼総務部長:水道局では現在、60歳を定年とする一般職職員、定年後65歳までの間勤務する再任用職員、1会計年度を超えない範囲で任用される会計年度任用職員の3つが任用されております。
宇佐美委員:最後に言われた会計年度任用職員の採用方法と処遇はどうなっているのか、あわせて伺います。
池尻副局長兼総務部長:会計年度任用職員は業務繁忙や常勤職員の退職等に伴い、補助的定型的な業務を担う職員一般公募を行っております。再任用の任期を終了した職員も応募することができ、適正な選考を経て採用者を決定いたします。会計年度任用職員制度の開始に伴い、新たに結婚休暇や介護時間等の利用を可能とし、勤務時間等の条件によっては従来アルバイト職員には支給していなかった期末手当を支給するなど、勤務条件の改善を図っております。
宇佐美委員:国は高齢者安定雇用法の改正を行いました。このことへの見解を伺います。
大久保水道局長:令和3年4月から施行されます改正高年齢者雇用安定法では、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主などに対して、70歳までの定年の引上げ、また70歳までの継続雇用制度の導入など一定の努力義務が課されました。この努力義務は公務員に直接適用されるものではありませんけれども、法の趣旨である少子高齢化社会の中で、人口減少の中で、経済社会活力維持のために働く意欲のある誰もが年齢にかかわらず能力を十分に発揮できるように高年齢者が活躍できる環境整備を図るということは、公務職場においても必要なことであると認識しております。
宇佐美委員:70歳でもお元気な方、本当に多くおられますので、今65歳過ぎても本当に元気に仕事を続けたいという方々もおられます。生活のために仕事を続けたいという方々も多いかと思いますが、水道局を定年された方で再任用としても局に残ってくださった方が、若い職員さんに技術を伝えるために多くおられたときもあったと聞いています。今、徐々に退職者が減り、再任用での採用が減っているということも聞いています。そもそも再任用の方々は、技術を伝えるどころか、職員の定員削減により通常業務に回ることになり技術をじっくり教えることができていなかったと聞いています。再任用を終えた方でまだ水道局で働きたいという方を中心に会計年度任用職員として採用してはどうかと考えます。
技術継承のためにも会計年度任用職員として採用してはいかがか伺います。
大久保水道局長:会計年度任用職員につきましては常勤職員の職と異なる職務の内容や責任の程度を設定すると総務省の通知によりされております。水道局におきましても、業務の必要性に応じて会計年度任用職員を公募し、適切な人材を採用させていただいているところでございます。実態としては、再任用職員を終えた後、会計年度任用職員として働いていただいている方も多くいらっしゃることは事実でございます。そうした方には、若手職員の技術継承につきましても、その持っていらっしゃるスキル、知識などを発揮していただいて、若手職員の技術継承は常勤職員や再任用職員が中心的に担っておりますけれども、会計年度任用職員の方にもサポートしていただいているということを現在も行っておりますし、これからもお力をいただきたいと考えております。
宇佐美委員:今まで培ってきたものがしっかりと生かされ、次の世代に受け継げるようにしていただきたいと思います。
次に、かながわ広域水道ビジョンについて伺います。
かながわ広域水道ビジョンは素案が示され、県民意見募集が昨年10月に締め切られていますが、そもそもこのかながわ広域水道ビジョンとはどこが作成したどういう内容のものなのか、伺います。
近藤施設部長:かながわ広域水道ビジョンは、神奈川県内広域水道企業団が構成団体である本市や神奈川県、川崎市、横須賀市の水道事業者との協議を踏まえて作成したものです。ビジョンには企業団のおおむね30年後における将来像と、その実現に向けた取組の方向性が示されています。この中で、5水道事業者における水道施設の再構築などの取組を行うこととしております。
宇佐美委員:本市はその5事業体の中の一つだということだと思うのですが、この素案には本市の意見は反映されているのか、伺います。
大久保水道局長:神奈川県広域水道企業団は、横浜市も構成員の一員でございます。この企業団は神奈川県、横浜市、横須賀市、川崎市によって設立をいたしました特別地方公共団体でございますので、繰り返しになりますが、横浜市もその構成員の一員でございますので、このビジョンの策定に当たっては横浜市も一緒に協議をしながら進めてきたものでございます。
宇佐美委員:本市の意見がどこに反映されているのかということを伺っております。
大久保水道局長:繰り返しになりますが、そういう意味で一緒に協議をしながら進めてまいりましたので、全体が横浜市の意見も踏まえて作成されたと理解をしております。
宇佐美委員:ビジョンの中で本市の水道施設に関わって気になる記述を見つけました。水道施設の再構築の概要というものがありますがどういうものか、伺います。
近藤施設部長:神奈川県内の水需要は減少傾向にあり、将来、県内5水道事業者の施設能力に余裕が生じることが見込まれています。今後、各水道事業者において老朽化する施設の更新などのコストが増大していくことから、安定給水を維持しながら将来の水需要に見合う適正な規模にしていくため、現在県内11か所ある浄水場を将来的に8か所に再構築していくことを検討しています。
宇佐美委員:この再構築では本市の施設はどういう扱いになっているのか、伺います。
近藤施設部長:5水道事業者で廃止に向けて検討している3つの浄水場の一つは、本市と横須賀市の共同施設である小雀浄水場です。本市としては、将来の水需要の減少を考えると、今後進める西谷浄水場の再整備により給水能力が増強されること、また、既に再整備が完了している川井浄水場からの給水と、企業団から現状程度の給水を得ることで安定的な給水に問題はないと考えております。
宇佐美委員:廃止される小雀浄水場は、先ほど言っていただいたように、企業団が水利権を持っていて、相模川を水源としていると。この小雀浄水場に代わる浄水場はどこになりますか。
近藤施設部長:今現在考えている中では、横浜市の西谷浄水場と川井浄水場、あと水道企業団の相模原浄水場、西長沢浄水場、あと綾瀬浄水場、合計5か所の浄水場で横浜市内の給水を確保していくということで今検討を進めてございます。
宇佐美委員:では、廃止の方針が出された小雀浄水場の2019年度の給水量と全市給水に占める割合を伺います。
宍戸浄水部長:令和元年度の実績ですが、市内の一日平均給水量約111万立方メートルのうち、小雀浄水場からの給水量は約40万立方メートルで、全体の36%でした。なお、この40万立方メートルのうち22万立方メートルは、神奈川県内広域水道企業団から委託を受けて浄水処理しています。
宇佐美委員:市内36%の規模に給水しているということですが、この小雀浄水状を廃止して得られる効果を伺います。
近藤施設部長:小雀浄水場は近い将来更新が必要であり、水需要の減少を考慮して、仮に半分に縮小して更新したとしても、取水から浄水場までの整備に約1100億円を要すると試算しております。廃止した場合には、この費用に加えて、維持管理費も削減できると考えております。また、小雀浄水場は河川の下流から取水しており、停電等によるポンプ停止や水質事故などにより給水ができなくリスクがあります。小雀浄水場を廃止し、自然流下系の浄水場を活用することによりこれのリスクが低減されると考えております。
宇佐美委員:今効果を伺ったのですけれども、もう一度伺うのですが、小雀浄水場を維持する方がコストがかかると試算されているということですか。
近藤施設部長:この辺の関係につきましては、これからより詳細な検討していくところでございますけれども、先ほどお話ししています5水道事業体で11か所を8か所にするといった検討の中では施設整備費として約800億円、維持管理費では年間20億円節減できるといったような試算の結果がありますので、今後より詳細な検討を進めていく予定にしてございます。
宇佐美委員:すぐ目の前の利益だけを考えれば、小雀浄水場廃止した場合、当然ですがコストは浮きます。しかし、企業団の給水体制は1986年の大雪により電線が切れ、ポンプへの電源が消失したことにより給水できなくなったこともあります。さらに、10年前の東日本大震災をはじめ、その後の酒匂川の送水ポンプの故障などが度々起きています。そのたびに小雀浄水場が活躍していると聞いているのですが、災害時には自己水源の確保、設備の分散化が効率的、有効だと考えます。リスク回避、分散化のために維持費はかかりますが、加えて浄水を企業団に委ねる弊害も看過できないのです。小雀浄水場の廃止については結論を急ぐべきではないと考えますが、どうか伺います。
大久保水道局長:小雀浄水場は整備から50年以上が経過しておりまして、仮に存続するとしても、近い将来その更新が必要になります。その整備のための経費は、全て更新した場合でも1400億円、その一部を更新した場合でも1100億円かかると試算しております。この1100億円というのは、先ほど御質問いただきました西谷浄水場の再整備一連が1175億円ですから、そのぐらいのお金が小雀の再整備にはかかることになります。この再整備に要する経費は、大変恐縮でございますけれども、水道料金という形で市民の皆様に御負担をいただくことになります。
小雀浄水場の廃止につきましては、今既に決定をしたということではございませんで、将来の水需要が県域全体で減っていくということ。横浜市はもちろんでございますが、水需要が減っていくということ。それから、そうした更新費がこれからさらにかかっていくということ。そうしたことを踏まえまして、また一方で、委員御心配のように、企業団の浄水場を増強したり、あるいは必要な送水管を設置する、そういうお金も逆に必要になってまいります。そうしたことを踏まえて、どちらが有利であるのか、また災害対応力にとってどうなのか、あるいは環境面での負荷としてどうなのかということを総合的に判断して決定していくことになると考えております。
したがいまして、繰り返しになりますが、既に廃止をするということで決めたわけではございませんが、現時点では廃止をしたほうが有利であろうということを考えておりまして、検討を詳細に詰めていく段階であると御理解いただきたいと思います。なお、補足になりますが、仮に小雀浄水場を廃止したとしても配水池としての機能は残す必要がございますので、ここでの災害時の給水については御心配はないと考えております。
宇佐美委員:災害の対応では、先ほども申しましたけれども、自己水源の確保と基幹施設の分散化は不可欠です。企業団の方針ありきではなく、本当に横浜市が主体的に判断することを求めます。そして、今後も続く管路や基幹施設、設備の更新では、職員の技術力が低下していた場合、先ほども申しましたが、DBやDBO方式では課題設計や施工不良をチェックできないことになります。このことで事業費が膨らんだ際、結果として市民が負担させられるということも危惧しています。そういうことを招かないようにしっかりと