2010年5月21日
横浜市教育委員会 教育長 山田 巧様
日本共産党横浜市議団
団 長 大貫 憲夫
横浜市教育委員会は、4月28日付で、指導主事室長等より学校長へ、教科書の適切な使用等について(通知)し、教育長より横浜市教職員組合執行委員長へ、『浜教組教文ニュースNo.179 中学校歴史教科書資料集』について(警告)しました。(通知)は、自由社版中学校歴史教科書に関わって、採択された教科書を必ず使用しなければならないこと、学校長に教員の管理監督及び教育課程の管理運営を適切に行うことを求めています。(警告)は、『資料集』が2009年8月の中学校の歴史教科書採択を否定する内容になっているとして、また、使用方法について、授業の中で資料集のみを使用して指導する展開例を示していることが、極めて不適切として、今後このような文書を配布しないことを求めています。
この(通知)と(警告)は、看過できない重大な問題点があります。
第一に、通知・警告に至る事実認定が誤っていることです。警告は「この資料集は、昨年8月の中学校の教科書採択を否定する内容となっている」とされています。また、通知は採択教科書の使用義務に、わざわざ触れています。たしかに、資料集の巻頭にある「はじめに」では、歴史教科書の採択方法について批判しています。しかし、「今年から市内8区で1万7千人の中学生が、自由社版の中学校歴史教科書を使い学習します」とあるように、採択された自由社版の教科書使用を拒否しているものではありません。職員団体が採択の仕方に対して、批判し、やり直しを求めることは組合活動の一環であり、言論表現の自由に含まれるものです。また、「教員の指導上の戸惑いを払拭し子どもたちの学びを保障する観点から作成した」とあるように自由社版教科書の不使用をすすめているわけではありません。資料等の作成・配布行為を法令違反行為をあおっているとの決めつけも問題です。
第二に、教員の副教材選択を制約していることです。巻末の「あとがきにかえて」に「自由社版教科書市販本の6単元について、他の教科書との比較研究を行い作成しました」とあるように、他の教科書との比較研究を行い、その結果を資料として組合員に配布したものです。展開例はあくまで例にすぎないもので、その実施を指示しているものではありません。そもそも、配布されても、それが授業で実際に使用されるまでは副教材ではありません。
ユネスコの「教員の地位に関する勧告」では、「教員職は専門職としての職務の遂行に当たって学問上の自由を享受すべきである。教員は生徒にもっとも適した教材および方法を判断するための格別に資格を認められたものである」「監督制度は、教員がその職業上の任務を果たすのを励まし、援助するように計画されるものでなければならず、教員の自由、創造性、責任感をそこなうようなものであってはならない」とあるように、また、丸山前教育次長が 3月5日の予算特別委員会で「さまざまな見方や考え方から捉えさせようということで、指導に当たる教員は補助資料や補足説明によって生徒に多面的・多角的な考察を促します」と述べられたように、副教材の選定は教員の裁量に委ねられています。
以上のことから、通知ならびに警告の撤回を求めるものです。