議会での質問・討論(詳細)
2019年9月20日

■【反対討論】 北谷まり議員

市民の審判も経ずに決めたカジノ誘致は撤回を!

北谷まりです。日本共産党を代表して、5件の議案と、6件の請願の不採択に反対する立場から討論を行います。

最初は、市第76号議案 令和元年度横浜市一般会計補正予算案のうちIR(統合型リゾート)推進事業とIRに係る債務負担行為、カジノ誘致反対を共通項とした請願第11号、第15号、第18号、第21号についてです。請願第21号は、2億6千万円のIR調査費と1億4千万円の予算外義務負担の削除を求めており、署名数は5820名です。

市長は市民に一度もカジノ誘致の是非を問うことなく、8月22日の記者会見で誘致を宣言されました。昨年12月の本会議で、私は「白紙から態度を決める前にどのように民意を問うのか」と質問しました。市長は「市民の皆様からご意見を伺う機会や具体的な方法について検討している」と答弁されたこと、覚えておられないのでしょうか。9月3日の議案関連質疑で、この答弁を無視した一方的な誘致表明について市長の二元代表制を重視するという持論は撤回されたのかとのわが党の質問に対しては、とうとうお答えになりませんでした。これは議会制民主主義の冒涜そのものです。 

市長が進めるカジノ誘致について、9月14日・15日に神奈川新聞社などが行なった市民意向調査では、カジノ誘致について反対は6割を超え、反対の理由で最も多かったのは「カジノが横浜のイメージにそぐわないから」だったと報道されています。開港以来先人たちが築いてきた国際港都横浜の品格を損なうことへの危惧です。また、市民の7割を超える人たちがその賛否を問うための住民投票を行うべき、と答えています。

まさに、今回の市長のカジノ誘致の進め方について、その是非を問うてほしいという市民世論に耳を傾けることこそ、市長が一番先にやるべきことではないでしょうか。
先日、私はカジノ誘致に反対する市民の皆さんが行った署名活動に参加しました。カジノは絶対にやめさせてほしいと署名するテーブルには行列ができ、署名用紙を何枚も持ち帰る方もいました。市民の皆さんの市長への怒りとカジノ反対の思いが、どれだけ大きいのか改めて実感しました。

市長は「IR=カジノととらえる方が多い・・・」「IRというものはどういうものか、伝わっていない」と言われました。カジノは決してIRの一部分ではなく、市長も言われるようにカジノ収益がなければ展示場、劇場などIRとして施設が維持されないこと、施設内で食事や買い物、エンターテイメントなどの必要なものが用意されており、わざわざ町に出かける必要がなく、地域経済の活性化にはつながらないこと、これらのことを市民がわかっているから、反対の声が根強いのです。そのことを市長は認識すべきです。

市長は今後の横浜市において、人口減少社会により生産年齢人口が減るのに伴い市民税が減収することへの危機感を示し、不足する財源をカバーするには、IR事業者からの税収しかないと言い切っています。しかし、そもそもカジノは刑法で禁止されている賭博そのものです。税収のもとになるのは、賭博のカジノ収益です。カジノ収益はすべてカジノに来たお客が負けたお金であり、その分市民・住民の懐は小さくなるのです。住民の暮らしを破壊することによって税収を確保することは、住民の福祉増進をはかることを本旨とする地方自治体の財政政策として全く誤っています。

生産年齢人口の減少を本気で食い止めようとするならば、現時点でも、子育て世帯に選ばれる施策である小児医療費無料化や中学校給食がないことなど自治体としてやるべき施策が充実していないことで、子育て世帯が他都市に流出しているということを直視すべきです。

また、事業者が求める臨港幹線道路の延長、みなとみらい線の延伸、高速道路との直結など莫大な市費負担となる基盤整備について、今の財政状況からどのようにねん出できるのか、その負担をどう考えるのか、何も明らかにできていません。当然事業者から市に多額の負担を求めてくることが考えられ、この点でも認めるわけにはいきません。

市長の誘致表明の背景に、アメリカや巨大カジノ資本の要望のままに、安倍政権による強力なカジノ推進の旗振りがあることは報道の通りです。ある米国のIR事業者は、「日本でIRがオープンすれば、大多数のお客さんは日本人になるでしょう。したがって、まずは日本のお客さんに満足してもらえる施設にするのが大切です」と言っており、狙いは日本人の懐であることは明らかです。市長のいうインバウンド増を期待できません。

日本はすでにギャンブル大国と言われ、依存が疑われる者の割合が3.6%と諸外国に比べ突出して高いのです。カジノに「娯楽」だと思って通いつめ、そのうちにのめりこんで苦しむのは、市民です。2019年3月、横浜市自殺対策計画が策定されました。精神保健及び精神障害者福祉に関する法律からみても、カジノ誘致はこれらの法や福祉にまったく反する施策です。神奈川県保険医協会は8月22日に出された理事会声明で、「カジノがある地域ではギャンブル依存症の患者が増える」「ギャンブルにアクセスしやすいほどギャンブル依存症の患者が増える」と神奈川県精神神経科診療所協会は強く警鐘を鳴らし、「市民の健康をカジノで損なわせてはならない。横浜の文化・歴史をカジノで汚してはならない。我々、医師・歯科医師は、地域住民の健康を守る観点からカジノを含むIR誘致に強く反対する」と述べています。

また神奈川県弁護士会からは、IR誘致の撤回を求めるとともに、市が民意をはかることなく、カジノ誘致をおこなうことのようないよう会長声明が出され、カジノ解禁実施法自体が多くの問題を含んだ法律であり、同法に基づくIR誘致はすべきでないことや、横浜市の調査が不十分であることなどが述べられています。

市民の審判も経ずに決めたカジノ誘致は撤回し、住民の福祉の増進という地方自治体として行うべきことは何か、頭を冷やして再考すべきです。

このカジノ誘致に対して、委員会審査ではカジノ予算を外した修正案が出され、審議時間が足りないという意見もありました。市民が望んでもいないカジノ誘致に4億円もの税金を投じるのは認められません。台風15号の高波による浸水で金沢区の工業団地は深刻な被害を受けました。党市議団は9月13日、被害状況の調査を行いました。被災企業への支援は緊急の課題です。優先すべき課題に税金を使うべきです。

この予算が可決されたあとも、市民の反対の世論はますます大きくなることでしょう。私たちとしても、「横浜にカジノはいらない」の声を上げる市民と連帯し、カジノ誘致断念するまで戦い抜くことをここで表明するものです。

自治体職員の非正規雇用化をこれ以上増やさず、正規雇用への道を開くべき

次は、市第42号議案 横浜市会計年度任用職員の給与及び費用弁償に関する条例の制定と、市第43号議案 地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律の施行等に伴う関係条例の整備に関する条例の制定についてです。地方自治体は、住民の福祉と暮らしの増進に寄与するものであり、「公務の運営は任期の定めのない常勤職員を中心とする」ことが大原則です。「会計年度任用職員」という新たな仕組みの導入によって、非正規雇用を合法化し、非正規化を進めることにつながりかねません。
会計年度任用職員として非正規のままにするのではなく、正規職員としての雇用の道を開くことに全国で最大の基礎自治体の横浜市から踏み出すべきです。

次に、市第48号議案 横浜市児童福祉施設の設備及び運営の基準に関する条例等の一部改正についてです。児童が少数となる時間帯は、保育士一人の他に研修を受講した一人の配置でもよいとする特例によって、保育の質が低下するのでは、との質問に対し、資格を有しない方に対して研修の実施によって質を確保すると言われましたが、保育士は国家資格を有する専門職です。研修を実施したからといって、保育士と同等の専門知識や技能が簡単に身につくわけではなく、保育の質が低下するのは明白です。保育士不足解消は、配置基準の緩和ではなく、その役割に見合った処遇改善を国・自治体が図らない限り、実現できないことは自明の理のはずです。

保育園の朝夕の仕事を無資格者でもやれるようにしてしまう特例はやめるべき

次に、市49号議案 横浜市特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営の基準に関する条例の一部改正についてです。
消費税10%増税と同時にスタートする“幼児教育・保育の無償化”ですが、そもそも、消費税は不公平税制で社会保障に最もふさわしくない税であり、本来、別の財源で行うべきです。また、無償化といいながら、副食費を別途徴収するなど、様々な矛盾を抱えています。市長は、食材料費は家庭で子育てを行う場合もかかる費用であり、学校や他の社会保障分野の食事も自己負担とされているから、主食費・副食費を無償化の対象とするよう国に求める考えはないと言われました。しかし、給食は保育の一環であると市は認めています。保育料と副食費を切り離す必要はありません。無償化というのであれば、主食を含めて無償にすべきであり、今回対象外とされた0歳児から2歳児の課税世帯を含め、すべての子どもたちを無償とすべきであり、国に求めるべきです。
認可外施設への対応について、新たな助成は考えてないと市長は言われました。国の認可外保育施設指導監督基準を満たさなくても5年間にわたり無償化で保育事業を継続できるとしていますが、この状態で5年間も放置すべきではありません。どの子も、安全で安心な環境の下で保育を受ける権利があり、その実現のための施策・事業を打つことに躊躇することはあってはならないことです。

小児医療費助成の完全無料化を求める請願、業者婦人を不平等に扱う税法の廃止を求める請願は採択を

次に、請願第19号 所得税法第56条の廃止を求める意見書の提出方についてです。
男女平等のレベルを示すジェンダーギャップ指数で日本は世界149か国中110位です。日本の順位が低いのは経済と政治の分野で、経済では、男女間の賃金格差が大きいことです。 男女間の不平等の根源的な問題の一つは、男がやるべきとされる労働はお金が入り、女がやるべきとされる労働は無報酬であることです。業者婦人は働いているにもかかわらず、その働き分が税法上認められないという不平等のもとに長年おかれたままでいるのです。業者婦人の切実な願いである不平等を是正することは、女性全体の地位向上につながるもので、ジェンダー平等社会実現のために、採択すべきです。

最後は、請願第20号 小児医療費助成の完全無料化についてです。
中学校3年生までの医療費無料は県内33市町村のうち、29市町村まで広がりました。大井町では、県内で初めて、高校3年生まで所得制限なしで無料化となりました。「お金の心配をしないで病院に連れていきたい」と願う子育て世代など、13,740人の幅広い市民から、本市において、所得制限と一部負担金の撤廃を求めて出された請願です。
横浜市は国に対し、重要な施策である子どもの医療費助成は、本来は国の責任において全国一律で行われるべきものとし、全国一律の負担軽減制度の構築と、それまでの間、各市区町村への財政支援の実施を要望しています。市は、市民からの要望と制度の重要性を認識しているのですから、議会として市を応援し、市民の願いを実現させるために、採択を呼びかけます。

以上で討論を終わります。                      


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