産科医師不足に市独自の奨学金制度などの対策を
関議員:私は、日本共産党を代表し、質問します。
まず、産科・産婦人科の医師不足問題についてです。
わが子の誕生は、何にも代えがたい喜びです。ところが昨年、荒川区で病院探しに時間がかかり数日後には胎児が死亡するという事故がおきました。本市でも行政区で見ると栄区では、出産を取り扱う産科・産婦人科が1か所もありません。「出産難民」ともいわれ、行政の責任も問われていますが、市長はどのように考えているのか伺います。
中田市長:産科医療でありますけれども、医療機関などの社会資源と、それから出生数の需給バランス、また国や地方自治体の医療政策、こういったもののバランスの中で成り立っているというふうに思います。
本市においては、出産を取り扱う施設が減少傾向にあること、これを踏まえまして様々な緊急産科医療対策に取り組んでいるところであるというのが現状です。
関議員:荒川区の場合、産科の病院であるにもかかわらず、緊急に受け入れてもらえない理由に、早産であること、対応できる医師がいないなど、医師をはじめスタッフの不足があると言われています。特に、産科は、異常出産に備え必ず医師がいなくてはならないので医師不足の問題は重要です。そこで本市は、2006年度2007年度に、市内の出産を取り扱う産科・産婦人科に対し、医師、助産師、看護師の充足状況を調査しています。それぞれの年度毎の結果を健康福祉局長に伺います。
上野健康福祉局長:今年4月に実施した産科医療および分娩に関する調査の結果では、回答を頂いた市内40の出産を取り扱う施設におきまして、医師は46人、助産師は65人、看護師は36人不足しているという回答がございまして、前回調査と比べても減少しているという状況でした。
関議員:2007年度の実態はかなり深刻です。ところが、不思議なことに、調査結果の記者発表資料には、医師の記述は見られず、医師不足に対する市の認識が弱いと思わざるをえませんが、健康福祉局長に伺います。
上野健康福祉局長:ただいま申し上げた調査の結果からですね、本誌においても出産を取り扱う施設、さらには出産を取り扱う産科・産婦人科の医師が減少傾向にあるということは十分認識しております。
関議員:横浜地区地域保健医療計画策定に向け、市長の諮問機関である「横浜市保健医療協議会」が改定試案を発表しています。それによると「小児科・産婦人科では、女性医師の割合が高いことから、保育所の整備やワークシェアの導入など、働きやすい環境を整える支援を行い、離職防止を図る」としています。また、産科は、特に労働環境が厳しいことも認めています。市として労働環境の改善について具体的な考えがあるのか、これは佐々木副市長に伺います。
佐々木副市長:産科・産婦人科における女性医師の割合が増加している中で、医師自身の出産等による離職があることなどを踏まえまして、本市においても女性医師が働きやすい環境、また離職しなくてもよい環境を整備することが必要と考えております。
関議員:具体的にどうでしょうか。
佐々木副市長:働きやすい環境という意味では、その医師の配置の問題ですとか、また離職しなくてもよい環境ということでいいますと、たとえばですけれども院内保育所の整備とかあるいは子育てに配慮した体制、そういったことが考えられると思うんです。
関議員:荒川区で発生したような事故の背景にある医師不足を解決をする抜本策として、市内で働くことを条件にした奨学金制度、医師の再就職を促進するドクター・バンク、仕事と家庭を両立させる女性医師への支援策を早急に検討すべきと考えますが、加えてですね検討すべきと考えるんですけれども、これ健康福祉局長に伺います。
上野健康福祉局長:いま先生おっしゃいました奨学金制度、地方財政措置の中で都道府県による地域定着を条件とした奨学金という制度が盛り込まれております。また、ドクターバンク登録制度、これも20年度の厚生労働省の概算要求の中にそういった記載がございまして、横浜市を含む県域全体の問題としてとらえていきたい。横浜市としては、先ほど佐々木副市長がお答えしたとおり、女性医師を確保するために、院内保育所の整備等について医療機関に働きかけを行ってまいりたいと思います。
関議員:市独自の施策として、奨学金制度はどうですか。
上野健康福祉局長:これはただいま申し上げましたとおりです。あるいは奨学金制度を作った場合に地方財政措置をされるということで、たとえば市大医学部が定員増するといったことに対して神奈川県が対応すべき問題というふうに考えております。
関議員:ぜひ、市独自でもこういった施策を考えていくべきではないかというふうに強く要望したいと思います。とにかく医師をはじめスタッフ不足、これをやらなければいまの深刻な状況というのは解決しないと思いますので、とにかく全力をあげていただきたいというふうに思います。
精神障害者に対するサービスを他障害と同等に引き上げよ
次に、精神障害者施策について伺います。
議員団として、この間精神障害者の方々と懇談をしてきました。その中で改めて感じたのは、精神障害者の施策が遅れていることです。他の障害者との格差を是正する問題です。そこで、市長にですね、市長ご自身、施策上の格差があることを認識されていられるんでしょうか。そうであれば、なぜ格差が生じていると考えているのか伺います。
中田市長:格差と簡単に言えるかどうかはわかりませんけれども、一部に違いがあるという認識はございます。精神障害者については、長らく主に医療的な施策を中心に展開されてきたわけであります。それが平成5年に障害者基本法が成立をして明確に障害者という位置づけになったわけでありますね。ですから、そういう意味では昭和20年から30年代にかけて解消された身体障害者・知的障害者の施策との違いというのが現在はあるというふうに認識をしております。
関議員:市長にもう一度伺いますが、この格差に対してどのようにいま認識されておりますか。格差は当然だというふうに考えていらっしゃるでしょうか、それとも問題だというふうに考えていらっしゃるでしょうか。
中田市長:いまお答えしたんですけれども、格差と認めるかどうかというところについては、それはなかなか一口に言えない状況だろうと思います。制度そのものがそういう意味では成り立ち方が違うということなどを含めてですね、いまこれが格差あれが格差というかたちに簡単にちょっと論じるということは、私の立場ではできないなという思いです。
関議員:ぜひ市長に論じていただきたかったんですけれどもね。
いま市長がおっしゃったように、1995年、精神障害者保健福祉手帳が認められ、手帳の保持者も増えていると聞いています。過去5年間の推移を健康福祉局長に伺います。
上野健康福祉局長:精神障害者手帳交付者の数を申し上げますと、平成14年度が7588人、15年度が9066人、16年度が1万702人、17年度が1万2417人、18年度が1万4133人です。
関議員:だいたい倍になっているようですが、大幅に増加していると思います。理由は何か、健康福祉局長に伺います。
上野健康福祉局長:全体として、市内の精神障害者の絶対数が増えているという背景がございます。そういった中で、この手帳を持つことによりまして各種の福祉サービスが受けられるということと、本人や家族など精神障害に対する意識が変化をしてきているなどから、交付者が増えているんだろうというふうに考えています。
関議員:精神障害者に対する周りの意識が変化しているというお答えだったんですが、社会的に理解が広がってきているのではないかなというふうに思いますけれども、精神障害者施策においては、他の障害者施策に比べ、医療費助成制度、これも限られています。在宅障害者手当制度、また鉄道等の割引制度は適用されていないということです。こうした格差を改め、施策での同等の扱いは当然だというふうに考えます。さきほど市長は格差についていろいろ考えがあるとおっしゃったんですけれども、同等の扱いが必要じゃないかと、障害者として、思うんですけれども、健康福祉局長に伺いたいと思います。
上野健康福祉局長:保健福祉施策を実施していくにあたりましては、障害者がそれぞれ身体障害、知的障害、精神障害、障害の特性に応じたサービス提供をしていくことが必要だというふうに感じております。精神障害者にとって必要なサービスは何か、十分に検討していきたいというふうに思います。
関議員:そうしますと、在宅障害者手当制度ないんですけれども、これは必要じゃないという、たとえばそういうお考えがありますか。
上野健康福祉局長:ただいま申し上げましたとおりですね、たとえば身体障害者でいえば補装具の給付とかですね、手話通訳者の派遣の問題とか、あるいは知的障害者でいえばヘルパーの派遣とか短期入所とか、そういった障害特性に応じたサービス提供の仕方、そういうふうなことが必要だということで、引き続き精神障害者にとって必要なサービスはなにか、検討していきたいと考えております。
関議員:精神障害者の方自身が、こうしたいまない制度、これ非常に求めているわけですね。ですから障害によって非常に必要だというふうな認識にぜひ変わっていただきたいんですけれど、どうでしょうか。
上野健康福祉局長:今後も障害者の立場にたって必要なサービスの検討をしてまいりたいと思います。
関議員:ぜひ取り組んでいっていただきたいというふうに、強く要望しておきます。
国連の「障害者の権利条約」に署名することを、政府は9月28日決定いたしました。署名することで、障害者の人権と社会参加を促進するため、「あらゆるしかるべき立法、行政、その他の措置」を講ずることが国に義務付けられてくるとのことです。障害者の権利を奪っている自立支援法の「応益負担原則」についても見直しがせまられると思いますが、市としても積極的に国に働きかけるべきと考えますが、これは市長に伺います。
中田市長:障害者自立支援法の利用者負担ということについては、本市も様々施策を講じたりということもやっております。ただ、これはやはり自立支援法からきた負担に対する本市の独自施策というようなことは、ある意味では国の法律に対する市側の自発的な措置ということになるわけであります。本来やはり国がもっと責任もたなければいけないというのは、そういう趣旨と承りましたけれども、そういう意味では国に対して引き続き必要な要望等については行動してまいりたいと思います。
関議員:ぜひ応益負担原則についても、項目の中に入れていただきたいというふうに要望しておきます。
今後、署名をしたことで早急に同条約を批准することも考えられます。市長、それこそ国に先駆けて障害者差別禁止条例を制定すべきと思いますが、改めて市長に伺います。
中田市長:障害のある人の権利擁護ということについては国において法令整備を進めているところでありますが、今回の条約への対応も含めて、当面は国の動向を見守りたい、そう思います。本市としても障害のある人の権利擁護や差別防止というのは、重要な課題であるというふうに認識をしておりますので、その意味において引き続き各種施策には積極的に取り組んでいくというふうに申し上げたいと思います。
関議員:ぜひよろしくお願いします。
利用者減などによる多額の不用額は福祉の後退ではないか
最後に、一般会計決算実質収支に関わって伺います。
メリットシステムは、歳出削減と財源確保への意識改革が目的と聞いています。2006年度の節減額は3億5700万円ということですが、その具体的内容を見ると、印刷物の委託料の削減、広告料による財源確保が目立ちます。意識改革が優先し、本来の仕事がおろそかにならないか危惧するところですが、そうなれば本末転倒です。行政運営調整局長の見解を伺います。
大場行政運営調整局長:厳しい財政状況の中で、本来業務を遂行していくという基本線のもとで、創意工夫によりコスト縮減を図っていく、これは当然に取り組んでいくことであります。メリットシステムはそのためのインセンティブとして機能しているということでございます。
関議員:また、広告料については、市民から「封筒に企業の大きな広告が掲載されていたため、役所の封書と思わなかった」という指摘も寄せられています。市に広告担当を配置し、3人体制で促進しています。大事なものは広告をのせない封筒でだすなど、行きすぎていないでしょうか。問題は、必要な事業費まで広告料で置き換えることにならないかです。必要な経費は予算としてきちんと配分すべきと考えますが、行政運営調整局長に伺います。
大場行政運営調整局長:先ほどもお話ししたとおり、厳しい財政状況の中でございます。事業の本来の目的を達成をしつつ、多様な財源確保に積極的に取り組む、これは当然のことでございます。広告事業についても、本市の様々な資産の広告媒体としての価値に着目をして、最大限に有効活用しているものでありまして、重要な財源確保策であるというふうに考えています。この広告事業についても、職員の経営感覚あるいはコスト意識を養うことにもつながっていると思います。意識改革にもつながっていることも、広告料収入の金額に現れない大きな効果というふうに考えております。
関議員:次に2006年度不用額ですが、ここ数年、最も額の多い福祉費に限って質問いたしします。
歳出で約105億円もの不用額を出しています。前年度の約47億円と比べても、倍以上の伸びです。一般会計不用額総額270億円に占める割合も39%と約4割になります。一般会計予算の構成比率23%の福祉費の不用額が、異常ともいえる増額ぶりですが、佐々木副市長の見解を伺います。
佐々木副市長:予算の編成時に事業費をできるかぎり的確に見積もってきてございます。しかしながら、国の制度改正に加えまして、予算の執行段階に入ってから情勢の変化等がございました。たとえばですけれども、障害者自立支援法による新制度については国から障害者施設における詳細な報酬単価が示されたのが予算編成後の18年3月だったというふうなこともございます。そういうふうな状況でございまして、結果として不用額が生じたというふうに認識しております。
関議員:たとえば、在宅重度要介護者家庭サポート事業における不用額は、月430世帯の利用を見込んだところ、月6世帯の利用に終わったことによるとのことです。自立支援法負担助成の3億2000万円についても見込み違いがあったということですが、市民への周知不足や厳しすぎる対象者要件になっていたのではないか。こうした事態が繰り返されないよう必要な手立てを講じることが大事です。具体的対策を健康福祉局長に伺います。
上野健康福祉局長:健康福祉局におきましては、国の制度改正に対しまして、市として独自に試算制度18年度新設して対応してきたところでありますけれども、社会情勢とかあるいは福祉ニーズの変化によりまして、結果として不用額が生じたものであります。今後とも必要に応じまして事業内容の見直しや制度の周知にも引き続き務めていきたいというふうに考えております。
関議員:福祉費において、不用額が2億円以上は15事業あります。保育関係の4事業は入所・利用児童数の減によるもの、介護関係他3事業は補助対象事業者数の減によるもの、自立支援や児童手当など4事業は対象者・利用者数の減によるもの、その他4事業となっています。いずれも福祉という市民サービスに直結するものです。これほどの不用額を生じてしまったことは、本市の財政運営に重大な問題点があるといわざるを得ません。市長の認識を伺います。
中田市長:これはおそらく関議員もおわかりでお聞きと思いますし、先ほど佐々木副市長からも答弁しましたように、特に国の法改正などに基づく、そしてその後の料金設定などが予算議論をして市会のみなさんに議論をしていただいているその最中に決まっていないという、そういう状態の中で予算を計上しているわけでありまして、そういう意味で初年度ということもありましたので、今後これから先、いまはだいたいわかるわけでありますので、そういう意味ではしっかりやれるというふうに思います。
また、不用額に関しましては、さきほど別の議員の方に答弁申し上げたとおり、私どもで色々工夫をして残してきたというものも含まれておりますので、そういった意味からも、いわゆる「不用」ということではない部分も、「不用」という言葉が適さないというものもありますけれども、いずれにしましてもご趣旨はよく賜りまして、今後の予算における予算の確定までの中でしっかりと精査をしていくということはやってもらいたいというふうに思います。
関議員:利用者数なんかの減は福祉の後退だと思うんですね。詳細については局別でさらに質問させていただきます。
「2006年度決算特別委員会」目次へ戻る