市立中学1年生の柔軟体操事故の対応に市教委は真摯に向き合え
古谷議員:日本共産党 古谷やすひこです。市第16号議案の撤回について質問します。
そもそもこの議案は、2015年10月に本市市立中学校で野球部顧問の男性教諭が部活動で柔軟体操していた中学一年生の部員の男子生徒の背中を強く押し骨折させた。この事故をめぐって、横浜簡易裁判所において調停が行われ、市教委側は提示した調停案が被害者も同意するとの認識のもとで地方自治法96条の議決案件としてその調停案が議案として本定例会に提出されたものです。その後、調停申し立て人である被害生徒の保護者から「現在の調停条項案では合意ができない」との申し出があって、議案が撤回となったものです。
まず今回の第二回定例会の議案が5月12日に発送され、5月19日の本会議でその発送された議案にもとづいて論議がされました。その時には正式な議案だったわけですが、その本会議での質疑が終わった後の5月30日に市第16号議案の撤回が市長から議会側に依頼されました。つまり、撤回されるような不十分な議案も併せて本会議で議論されたわけです。さらに市教委は、議案として提出されているにも関わらず、常任委員会の場においても議案の記述以上の説明がなく事実関係の説明すら十分にできませんでした。こんな不十分な状況で議会に対して審議をさせるというのは、議案の提出の仕方としてあまりにもずさんであり議会軽視であると言わざるを得ません。これについての市長の見解を求めます。合わせて教育長、何が原因で誰の責任で議案が撤回されるような事態に至ったと考えていらっしゃるのか伺います。
今回議案が撤回されるに至った背景は、被害者や被害者家族の願いに学校や教育委員会が真摯に寄り添ってこなかったことが一番の問題だと考えます。中学一年生という発達途上にある生徒が治療リハビリを合わせて11か月にも及ぶような傷害を負わされたことについて、今後後遺障害が出てこないかと保護者が心配する気持ちは当然です。だからこそ、被害者は調停の場で横浜市に対して本件事故に関する一生涯についての治療費を保証するための書類の作成を請求したわけです。明らかな加害者である横浜市側が、その保護者の思いに真摯に寄り添った調停が行われていれば、こんな議案の撤回のようなことはなかったと思います。それなのに調停条項の1では「申立人が受傷した障害が原因で、今後、手術などの治療が必要になった場合には、その保障について相手側は申立人と協議を行う。」とされています。つまり協議を行わなければ、本件障害が原因で治療が必要になったとしても保証を受けることができなくなる提案ではありませんか。また対象も手術などの治療と限定しています。これのどこが被害者に寄り添った提案なんでしょうか。調停の現場では、被害者側の出席者は母親一人に対して、横浜市側は総務局法制課係長をはじめ5~6人弱の参加者と圧倒的に多い参加者で、お母さんが心理的な圧力を覚えたのではないかと察します。被害者に寄り添おうとするよりも、調停や裁判用語に不案内な被害者のことをごまかそうとしたことが今回議案に撤回するに至った原因ではないですか。教育長の見解を求めます。
子どもたちが守られるべき安全であるべき学校内で起きた今回の障害事故について、経緯を追っていっても疑問がたくさん浮かびます。なぜ「痛い」と言っていた生徒を押し続けたのか、なぜその後まともに練習ができなかった被害生徒を病院に連れて行かずに家に帰したのか、憤りを覚えます。教育長、今回のことはいったい何が原因でどんな問題があって被害生徒が傷害を受けるに至ったと認識しているのか。またその後の対応について適切になされたとの認識なのか、教育長、明快にお答え願います。
教育長、市教委はこの事故が起こってからやるべきことをきちんとやってきたでしょうか。事故が起こった2015年10月から約半年間保護者は学校へ様々な訴えを行っています。その後、2016年6月頃、被害生徒の母親から東部学校教育事務所へ連絡をして改善を訴えています。しかし、その後の対応はやはり学校へと返され校長先生が対応するということになっています。その直後、保護者が民事調停を起こすという決断に至っています。つまり、学校側とのやり取りに納得できず、教育委員会に連絡したのに埒が明かないと思わせてしまったのではないですか。この時点で東部学校教育事務所では、あらためて事実確認や関係者への聞き取り、保護者・被害生徒への聞き取りをなぜきちんとしなかったのか?また教育長も現場に足を運んだのでしょうか?これらの経過の中でも、学校教育事務所つまり市の教育委員会がその役割を果たしていないことも今回調停にまで至った直接的な原因だと思いますが、教育長の見解を伺います。また市長、一年七か月もたっているのにいまだ解決に至らず、一方的な被害者である生徒の保護者は裁判所に調停を申し立てるにまで至ったわけですが、市長なぜだと思いますか。
今後について、この議案の取り下げによって調停が継続されるわけですが、今までのような不誠実な態度をあらためて保護者の願い・思いに寄り添って、真に納得できるような提案を市が率先して出していくべきと思うが市長の見解を伺います。
最後に、原発避難児童へのいじめの事案であれだけ議論したにもかかわらず、また同じような無責任な対応を繰り返してしまっています。市長は原発いじめの際にも結局教育長や教育委員会を追認したにとどまりましたが、教育委員会はまた同じような失敗を繰り返しました。市長は教育長の任命責任を全くお感じにはなっていないのでしょうか、見解を伺って質問を終えます。
<市長答弁>
林市長:今回の議案の提出についてですが、申立人である保護者の方と、調停条項案について、事前に丁寧な話し合いを重ねた上で合意をいただきましたので、提案させていただきました。しかし、調停後、保護者の方は弁護士にご相談なさいまして、この調停条項案では成立させられないとのお申し出になりました。保護者の方の調停案への不安を汲み取れず、結果的に議案を撤回することになりまして、大変申し訳なく思っています。
引き続き、調停での解決を希望していらっしゃいますので、今後はしっかりと寄りそってって誠実に対応してまいります。
調停を申し立てるまでに至った理由ですが、学校の初動対応、そして顧問教諭に不安や不信感を持たれ、学校教育事務所にご相談がありました。この先、お子様に何か後遺症がでたらという大きな不安と心配を持たれるのは当然です。しかし、学校との話し合いの中で、筋道がつくのが不安と思われたために、きちんと話し合う場を確保したがよいとのご判断で、調停に至りました。今後、当時の状況をきちんと確認いたしまして、私自身も、こういう保護者の方に寄りそえなかったということを、さらに、しっかりと教育委員会と話し合いまして、対策というか対応をですね、本当に丁寧に保護者のご意見を伺っていきたいと思います。そして、学校、学校教育事務所の信頼の回復に努めてまいります。
市が率先して提案すべきとのことでございますけど、現在、引き続き調停での解決を希望していらっしゃいますので、よくお話を伺いまして、お気持ちにしっかりと寄りそいながら誠実に対応してまいります。
教育長に対する任命責任ついてですが、教育長を任命した立場から、今回の件に関して改めて当時の状況を確認し検証する際は、生徒保護者の方に寄り添いながらしっかり対応するように指示をさせていただきました。また、学校において解決に苦慮している場合は、教育委員会事務局が迅速かつ的確に支援を行う必要があると考えますので、教育長には学校教育行政全体の管理監督者として責任を果たしてもらおうと思います。
残りの質問については、教育長より答弁させていただきます。
<教育長答弁>
教育長:議案の撤回に至った原因と責任についてですが、まず、双方で確認された調停内容に対してお申し出をせざるを得ない状況を生み出したことに対して、本当に申し訳なく思っています。このような事態に至った背景には、学校や教育委員会事務局が、保護者の方の思いをしっかりと受け止めることができなかったことであると反省をしています。事故が教員の配慮を欠く行為によって発生したものであるにもかかわらず、直後の部活顧問の対応、学校の取り組みは不十分なものでした。保護者の方の気持ちに思いが至らず、調停後の当該教員を顧問や担任のままといたしました。これは、学校の対応にも不審を抱かれることになったと考えています。今後は、しっかりと寄りそい、誠実に対応してまいります。
調停の場での対応についてですが、調停においては、調停委員の指示のもと、被害者の方の気持ちに寄りそいながら、誠実に対応してまいりました。しかし、たったお一人で、調停に参加なさった保護者の方の不安感に思いが至らず、関係部署で連携を図るため、毎回、複数人で参加しておりました。仕方ない部分もありますが、今後は保護者の方にご負担をかけないよう、心がけたいと思います。また、被害者をごまかそうという気持ちは一切ございませんでしたので、ぜひご理解いただきたいと思います。
被害生徒が障害を受けるに至った原因と問題についてですが、柔軟体操の際、生徒の状況に応じて丁寧に指導する必要があります。必要以上に負荷をかけた指導は、配慮にかけたもので、その行為により、当該生徒に怪我をさせてしまいました。柔軟体操の指導については、体育を教科としていない部活動指導者に対して、指導者の研修などで注意事項を確認しておりますけれども、今後は、ベテランの指導者も含めて、改めて徹底しなければならないと考えています。
事故発生後の初動対応が適切になされたかということについてですが、子どもが痛みを訴え続けている事態を目の当たりにしながら、医療機関に同行して診察を受けさせなかったことは、不適切だったと考えています。速やかに顧問教諭が、医療機関に同行して診察を受けてもらうべきだったと思います。また、顧問教諭が部活動での事故について速やかに管理職へ報告しなかったことも問題だったと考えています。
調停を申し出るまでに至った直接的な原因についてですけれども、将来の保証について不安を感じ、調停を申し出た背景には、事故発生時の初動対応や顧問教諭への不信感、さらには学校や教員への指導に対して、学校の説明や教育委員会の対応に対して、保護者の方々が誠実に対応されていないと感じたのではないかと思っています。学校事務所が対応し相談を受けながら調停の場で話し合うことになりました。当時、校長は当該教諭を指導しておりましたけれども、教育委員会も現場状況の把握に努め、積極的に関わる必要があったと反省をしております。