私は日本共産党を代表し、今定例会に提案された諸議案のうち、3件の議案について、反対の立場から討論を行います。
大資産家優遇の市民税軽減の継続で年間22億円の市税収入減
最初は、市第4号議案横浜市市税条例等の一部改正についてです。
今回の条例改正の問題点は、上場株式等の配当・譲渡益に対する市民税の軽減税率1.8%が2010年度から2012年度までの3年間延長されることです。これにより、一般の税率6%と比較して年間22億円の市税収入の減が生じます。
市民税軽減税率は2003年に、それまで3%から1.8%に引き下げられました。しかし、大資産家優遇との批判もあり、昨年の改定で、2010年度から2年間の特例措置として、配当は100万円以下部分、譲渡益は500万円以下部分のみを1.8%の軽減税率とし、2011年度からは3%に戻すとしていたものです。
それを、昨年来の「未曾有の経済危機」に対する経済効果をねらった減税措置として、特例措置を取りやめ、軽減税率1.8%を3年間継続することは、大資産家を優遇し、本市の税収にもマイナス影響を引き起こすものであり、条例改正には反対です。
環境・植物教育の役割果たすこども植物園に指定管理者制度はなじまない
次は、市第8号議案横浜市公園条例の一部改正についてです。議案は「横浜市こども植物園」と「横浜市児童遊園地」に指定管理者制度を導入しようとするものです。
これらの施設は、市民が緑化・農業・園芸などにふれあえる各種支援事業を行う「環境活動支援センター」に隣接し、地理的にも一体となって、市民の環境や植物教育等の役割を果たしてきたものです。にもかかわらず、「活動支援センター」は従前どおり直営としつつ、一体的な関係にあった両施設を引き裂いて指定管理者制度を導入することは、施設の役割・機能上からも問題です。
とりわけ、「こども植物園」は、植物の展示や相談業務等を通して、市民に対する植物知識の普及や指導を行うとともに、小・中学生に対して、園内の植物や昆虫、野鳥などを教材に、緑や命を大切にする植物教育の場として管理運営されてきた貴重な教育的施設です。効率的運営を優先した指定管理者制度の導入ではなく、教育的見地を尊重し、引き続き本市直営で管理運営すべきです。
国民の求める経済対策になり得ていない補正予算
次は、市第17号議案正予算案についてです。今回の補正予算は、国の経済対策により、選挙目当ての「ばらまき」と不評の補助金や交付金を主に活用したものです。中小企業融資事業や新型インフルエンザ対応等、市民生活の安心・安定のための施策等の評価はするものはありますが、国民の求める経済対策になり得ていません。特に、公共投資臨時交付金は、市民生活の支援と、市内建設業者の仕事興しに直結する特養ホームや市営住宅の建設こそ急がれているものです。保育園の建設はあるものの、待機児童を解消するにはもっと増やさなければなりません。しかし、公共投資臨時交付金はこれらに適用できないもので、国の補正予算の不十分さは否めません。港湾ふ頭整備は、国の直轄事業であったとしても、前倒しまでして進める事業ではありません。
市のずさんな会計処理で1億8000万円のペナルティーを市税で支払い
次は、補正予算の反対についてです。まず、今井川改修事業における補助金の返還に関するものです。河川改修工事において、昨年会計検査への対応準備中に、委託事業者JR東日本への支払いが河川改修工事の出来高よりも8億2400万円多いことが判明しました。それによって、国と県に5億8000万円の補助金を返還することになっただけでなく、ペナルティーとして1億8000万円を市税から支払うことになったものです。
今井川は保土ヶ谷区内を流れる二級河川で、流域では降雨量が増すと、決まって浸水被害に見舞われるところです。その原因の一つが、今井川にかかるJR岩間川橋梁部分の改修の遅れによるものです。JR岩間川河川橋梁改修事業は、本市がJR東日本に設計から施工管理まで、一貫して委託しているものです。
この改修事業、初年度は作業ヤード確保の事前工事が遅れたことに加え、台風22号による浸水被害で本工事が大幅に遅れました。台風の浸水被害に不安を持つ住民との折衝など、現場も職員も忙殺状況となり、健康を害する職員もでる事態でした。さらに、台風被害の復旧や護岸補強などが重なる等、本格的工事は台風被害発生の約1年後にまでなりました。こうした状況から、改修工事の大幅な遅れは担当部局の共通認識になっていたことは明らかなはずです。
補助金を返還しペナルティーまで掛けられたずさんな会計処理となった最大の原因は、台風被害などで改修工事が遅れたにも関わらず、国や県の補助金を獲得するために、部局全体が当初の事業計画にこだわり、出来高を故意に膨らませたことにあります。
JRからの口頭による出来高額見込みに限度いっぱいの前払い金まで上乗せして、出来高を算定し、その結果工事が完了してない未工事分まで支払っていたわけです。事業進捗にあわせ、補助金の減額や年度末の出来高を引き下げる機会があったのに、実態に即した訂正はされませんでした。国から「鉄道事業者が工事を行う場合の費用等の透明性の確保を求める通達」が出されたにもかかわらず、部局には徹底されていなかったと説明されただけで、その理由と責任は不問にされたままです。
本市のその場しのぎの補助金事業の処理が引き起こしたツケを、何の責任もない市民の貴重な税金で負担することは、納得できるものではありません。
設計から運営まで民間まかせのPFI手法は市民利用施設になじまない
次は、戸塚駅西口再開発事業に関して整備する区役所や文化施設等の整備・維持管理・運営を、PFI手法で行おうとすることについてです。
本市のPFI手法で整備された施設は、直近の川井浄水場再整備事業を始め、すでに7施設ありますが、PFI手法が果たしていいものだったのか、検証することが必要だと思います。
反対の第1の理由は、PFI手法として実施する理由が曖昧なことです。財政負担額は、市が直接実施した場合と比較して7.6%、約13億円縮減できるという試算が示されています。PFIでは、施設整備、維持管理、運営の各業務費用の一体的発注によって重複コストが削減され、民間ノウハウの発揮で一定割合の縮減が実現することを前提に試算していますが、こうしたやり方では、PFIの方が有利となるのは当然のことです。また、サービス水準の向上についても、設計・建設から、維持管理・運営まで一貫した取り組みで、施設の機能性が向上し、良質なサービス提供が期待できるとしていますが、その根拠は、明示されていません。
第2の理由は、地元業者の参入が、困難な点です。大手ゼネコン中心では、事業を通じた地域経済振興策としても効果が期待できません。
第3に、施設の運営管理に住民・利用者の声が反映しにくいという点です。戸塚駅西口再開発の仮設店舗は本市最初のPFI事業です。オープン時に、エアコン騒動が起きました。婦人服販売店のAさんはドアを開けての営業です。エアコンを運転しても店内は30度以上となりました。廊下にはエアコンも設置されておらず、31度になっており、隣の2店舗は健康上の理由でエアコンを運転せずドアを開放。つまりAさんのエアコンだけでは、Aさんの店舗と廊下、隣の2店舗分を冷やすことはできず、Aさんは汗だくになり営業できなかった。そこで運営会社に「廊下の空調整備をしてほしい」と要望したが、運営会社は「業務要求水準書に記載されてないものには応えられない」「お金もなければ責任もない」と、断ったとのことです。
また、トイレ騒動もおきました。これは女子トイレが死角になることから、業務要求水準書に記載のない危険防止の警報ベルの設置要望ですが、これも大事(おおごと)だったとのことでした。
今回整備される共同ビルは区役所や文化施設等の公共施設を含むものです。多くの市民が利用する施設です。想定できない事案が起きても、事業者は契約を楯にして対応が後手にまわります。市民サービルの向上を目指すなら、不意のトラブル等にも緊急に対応できないPFI手法は市民利用施設になじまず、同意できるものではありません。
以上で、私の討論を終わります。