◎質問と土井水道局長答弁は次の通りです。なお、実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われました。
宇佐美議員:宇佐美さやかです。日本共産党を代表して、水第5号議案「横浜水道長期ビジョンの策定」について質問します。
横浜水道長期ビジョンは「福祉の水」の精神で
宇佐美議員:今回、市長が提出した横浜市水道局作成の横浜水道長期ビジョンは、5つの章立てで、第1章の「横浜水道長期ビジョンの位置付け」、第2章「横浜水道の歩み」、第3章「水道事業を取り巻く外部環境」、第4章「目指す将来像」と、第5章「取り組みの方向性」という構成になっています。本来なら、この構成順に質問をするところではありますが、私が一番大切だと思うのは「基本理念」だということで、最初に伺いたいと思います。
長期ビジョンは、第4章「目指す将来像の基本理念」として「暮らしとまちの未来を支える横浜の水」を掲げ、水道局の使命を「安全で良質な水を安定してお届けするとともに、地域や社会からの要請に適切に応えることで、安心な市民生活と経済・産業など活力あふれる都市活動の源となり、横浜の未来を支えていくことを目指します」としています。
水道法の第1条には、「この法律は、水道の布設及び管理を適正かつ合理的ならしめるとともに、水道を計画的に整備し、及び水道事業を保護育成することによって、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与することを目的とする」と謳われています。これは、憲法25条の生存権からきている精神で、どんなに経済的に困窮している人であっても生きていくうえで欠かせない水を事業者は提供しなければならないということです。
さらに、横浜市水道事業及び工業用水事業の設置等に関する条例の第3条には、「公共の福祉を増進するように運営されなければならない」と規定されています。
ここには、福祉の水という精神が盛り込まれているのですから、このことも忘れないでいただきたいですし、6人に1人が貧困という貧困大国となった現在、この水道法と水道設置条例の精神こそ高く掲げなければならない基本理念だと考えます。当局のレクチャーで私がそのことを言いましたら、「もちろん根底にはその精神は流れていますので、あえて載せることはしませんでした」とおしゃいました。これからも決して忘れてはいけない精神として、明記するべきだと考えますが、見解を伺います。
土井水道局長:水第5号議案について、ご質問いただきました。
基本理念と水道法第1条との関係性ですが、水道法第1条には、「清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与する」とあり、これは全ての水道事業の目的となります。これを十分基本にした上で、今回の長期ビジョンでは、横浜水道が20年後から30年後の水道事業を見据えた根幹となる考え方として、基本理念「暮らしとまちの未来を支える横浜の水」を定めております。
負担増を強いる巨大ダム建設の反省を
宇佐美議員:次に、宮ヶ瀬ダムの建設が市民負担の増加をもたらしている行政責任について、伺います。長期ビジョンの第2章の「横浜水道の歩み」の中に、「宮ヶ瀬ダムの本格稼働で、将来にわたり安定給水ができる水源と施設が整いました」とあります。この評価は、あまりにも一面的ではないでしょうか。
宮ヶ瀬ダム関連の総事業費は、ダム本体、取水施設整備など約7,500億円です。この事業の本市負担額は、2016年度までの累計で702億2,400万円です。2016年度予算では、出資金・補助金あわせて4億3,000万円。これだけの巨費を投じて整備した施設が、今では本市にとってお荷物以外の何物でもありません。現在の本市の上水道の保有水源は、195万5,700トンで、うち宮ヶ瀬ダムの相模川水系分は49万9,000トンで、宮ヶ瀬分を除くと145万トンです。本市の2009年度から2015年度の一日最大給水量は約131万トンから約122万トンまで下がっています。この数字から見る限りでは、宮ヶ瀬ダムは不要だったと言わざるを得ません。歴代市長の過大な水需要予測に基づく過大な投資だったことは明らかです。
過大投資のつけは、水道料金にも及んでいます。私たち日本共産党は、過剰な水需要予測に基づく宮ヶ瀬ダム建設に計画段階から反対し、過大な建設費が水道料金として市民の負担増になることを指摘してきました。水道水の生産原価は、2016年度予算によると1立方メートルあたり相模川系統と馬入川系統が約157円、企業団系統が約195円となっています。2016年度の予算では、企業団の料金改定で9%引き下げられて、単年度13億円の負担軽減となりました。企業団系統は今回引き下げられたとはいえ、高いことには変わりありません。
横浜市が使っている水のうち、半分は企業団からの水です。その結果、市水道局の負担は重くなっています。宮ヶ瀬ダムの建設が、結果として市民負担の増加をもたらしていることについての見解を伺います。
土井水道局長:宮ヶ瀬ダムの建設についてですが、大きく水需要が伸びていた昭和40年代の人口急増期に必要とされる水源量を確保されるために計画され、その後昭和62年に着工し、平成13年度から本格運用が開始されております。
宮ヶ瀬ダムが完成したことにより、貯水量が以前の2倍になり、その後県内では渇水問題が発生していないなど、お客さまへの安定給水に大きく貢献していると考えております。
値上げを心配する市民の声を無視するな
宇佐美議員:3番目は、水道料金体系の見直しについてです。料金体系については、2か所で言及されています。
1か所は、第3章「将来の事業環境」のうち「財源の課題」のところです。「本市では、現在、生活に必要な水道水をできるだけ安価で提供するとともに、水の適正な利用を促すことを目的に、使用料が多くなるほど単価が高くなる逓増型料金体系を採用しています。現在、給水人口は増えていますが、多量使用者が減少し、少量使用者が増加しているため、使用水量の減少以上に料金収入は減少しています」と、記しています。もう一か所は、第4章の都市の目指す将来の姿のところで「社会状況に適した料金体系の見直し」としているところです。「現在の水道料金は、人口や水需要の増加を前提に基本料金を低く抑え、コストの大部分を占める固定費の大半を使用料に応じてお支払いただく従量料金で賄う体系になっています。人口や水需要が減少する経営環境にあっても、必要な財源が確保される適正な料金体系に見直され」と明言しています。
このことは、現在の使用水量が多くなるほど単価が高くなるという逓増型の廃止ということです。逓増型の廃止は、圧倒的多数の少量使用者にとっては大幅な値上げになることを意味しています。
今回、1月4日から2月3日まで行われた素案に対するパブリックコメントの中で、市民のみなさんの声が寄せられています。「横浜市の水道料金は高めに設定されているようなので、料金を下げるための努力をお願いします」や、「水道料金が値上げされるのではないかと不安に思います」という声や、「環境にやさしい水道・資源を大切にする意味で少量利用者の料金設定を安くするべきでは」という意見もありました。
適正な料金体系として現行の料金体系を見直し廃止するということは、こういった市民の声を完全に無視することになりませんか。伺います。
土井水道局長:水道料金に関するパブリックコメントの意見への対応についてですが、パブリックコメントでは、料金体系の見直しについてご心配の声もありましたが、一方で推進のご意見もあり、さまざまなご意見をいただきました。
長期ビジョンでは、社会状況に適した料金体系への見直しを将来の姿として示しており、策定中の中期経営計画の中で、将来への事業環境の変化を見据えた料金体系のあり方などについて、みなさまからいただいたご意見も参考にしながら、検討を進めてまいります。
災害に強い水道構築のための財源確保策を国に求めよ
宇佐美議員:4番目は、第5章の「取り組みの方向性」のうち、災害に強い水道に向けての財源確保の考え方についてです。
今、多くの市民が心配していることの一つに、大地震や自然災害への対策があげられると思います。ビジョンでは、地震に関して「首都圏に大きな被害をもたらすことが懸念されるマグニチュード7クラスの地震が今後30年間に発生する確率は、70%と予測されています」としています。このことを踏まえて、水道施設の整備や更新を行う責務が市水道局にはあります。
ところが、水道施設の耐震化は、2016年度末予定で、浄水施設43%、配水池等89%、基幹管路67%、送・排水管24%です。市内管路の総延長は9,100キロです。管路は、新年度だけで214億円の予算が計上され、110キロの更新耐震化されます。管路の耐震化を100%にするには、1兆円を優に超える財源が必要です。管路をはじめとした水道施設の耐震化と更新は急務です。しかし、現状でも110キロのペースで進めるための資金の捻出すら危ういのは、先ほどの水道料金収入が減っていることでも明白です。
国は、水道管路耐震化等推進事業に補助をしていましたが、財政不足を理由に2014年から同補助制度を廃止しました。本市に対して2011年度6億6,000万円、2012年度7億3,000万円の補助実績です。そこで、日本水道協会や大都市水道業管理者会議などの一般的要望にとどまらず、本市独自に管路の耐震化と更新のための補助金を復活してもらうように国に求めていくお考えは、ありませんか。伺います。
本市では、高速道路、港湾、都心部開発等の大型公共事業のために、多額の市債を発行しています。次世代のことを考えると、今以上の市債残高を増やすことは避けなければなりません。水道施設の耐震化など市民生活に必要な公共事業の財源確保には、大型公共事業を縮小することが必要です。しかし、現在の法では、一般会計で水道など企業会計のための市債発行は認められておりません。水道会計だけで多額の耐震化費用の捻出が出来ないのは明らかです。ですから、一般会計で市債を発行し水道施設整備資金として水道会計に繰り入れる仕組みづくりを国に求めていくべきと考えますが、見解を伺います。
土井水道局長:財源確保策の国への要望についてですが、水道管の更新耐震化のための補助金や繰り出し制度の拡充などを、現在、大都市水道事業管理者会議、公益社団法人日本水道協会、地方公営企業連絡協議会等のメンバーとして要望してきております。今後とも、本市としてもさまざまな機会をとらえ、国などの関係機関に対し、要望活動を行ってまいります。
人員を確保し、確かな技術の継承を
宇佐美議員:5番目は、第5章「取り組みの方向性」のうち「持続可能な経営基盤」、特に技術継承と人材育成についてです。
この間の中期経営計画期間内では、200名の職員定数を削減し、新規採用を大幅に減らしています。その結果、全体の職員定数1,666名のうち、20代が151人、30代が166人と極端に少なくなっています。その一方で、ビジョンでは、「今後は、技術を受け継ぐ職員が少なくなり、さらに技術継承が難しくなります」「生産年齢人口が減少する中でも、必要な人材を確保していかなければ、施設の維持管理や災害・事故発生時の復旧体制に支障をきたす恐れがあります」と、書かれています。
本気でこのビジョンに沿って技術継承と人材育成をしようとするなら、これまでのコスト優先の職員定数の削減の反省が不可欠です。
本市のビジョンが沿ったとしている国の新水道ビジョンにも、「水道行政機関としては、指導監督等のための一定の専門知識が要求されることから、通常時はもとより災害や事故時の緊急時の対応なども考慮すると、水道の健全な供給基盤を確保するため、非常時にも必要な人材の育成に努め、担当職員の専門性、人数にも配慮が必要です。水源から給水管に至るまでの水道施設全体を細やかに管理運営しなければなりません」、さらに「長期的視点に立てば抜本的な人材の確保・育成が急務となっています」と、かなりの切迫感をもって警鐘をならしています。
水道水に関わる業務は、取水、浄水、配水など多岐にわたり、専門的な技術を必要としています。「一つの専門分野に精通するには10年はかかる」と、ある職員の方からお聞きしました。やはり、若い職員をじっくりと確実に一つの部署で育てていかなければならないということだと思います。そのために、その年に退職する人数分の新規採用をしていただき、今以上の職員定数の削減をやめるべきと考えますが、見解を伺います。
土井水道局長:職員の定数についてですが、水道局がこれまで培ってきた技術・ノウハウの継承や事故・災害時の対応力強化を着実にするため、世代間のバランスの取れた職員構成となるよう、将来を見据え、計画的に職員を採用していく必要があると考えております。職員定数につきましては、事業運営に必要な人員を中期経営計画の目標として掲げております。
住民の声が反映されにくい広域化はやめるべき
宇佐美議員:最後に、国の新水道ビジョンが強調している広域化について伺います。
国の新水道ビジョンでは発展的広域化と称して経営統合・事業統合を推奨しています。もともと水道事業は、市町村が運営することを基本としています。市町村を超えた事業の経営統合は、住民の声が反映されにくいという欠点があります。
経営統合等住民自治に反する広域化を図る必要はないと考えますが、見解を伺って、私の質問を終わります。
土井水道局長:県、他市との事業統合などの広域化についてですが、本市では昭和40年代から、神奈川県、川崎市、横須賀市、神奈川県内広域水道事業団と協議しながら、水源開発などを進めてまいりました。今後も水需要の減少に伴う施設規模の適正化などの共通課題に対応するため、事業統合という考え方ではなく、これまでと同様に5つの事業体が連携して取り組みを進めてまいります。
以上、答弁いたしました。