大企業優先ではなく中小企業振興制度の拡充を
私は日本共産党を代表して、今議会に提案された3件の議案について、反対の討論を行います。
はじめに、市第131号議案についてです。
本市独自の企業誘致制度である企業立地促進条例が制定されて5年が経過し、今回認定要件を見直し、新たに3年間の制度の延長を行うものです。
この間44件の認定がありましたが、株式会社セガやCSKホールディングスなどが進出を取りやめたことにより、入る見込みの土地売却代が入らなくなり、土地開発公社の計画が大幅に狂うことになりました。民間企業の身勝手な行動により、本市が振り回され、右往左往しています。
今般の日本経済のGDPの落ち込みは、世界のなかでも際立っています。ヨーロッパやアメリカの落ち込みに比べ、桁違いです。これは、日本の経済があまりにも外需頼みで、内需を痛めつけてきたその付けが回ってきたものです。大企業による外需頼みの経済のあり方は行き詰っており、本市も例外ではありません。このようなときに、市長が、国際競争力がある企業や収益性がある企業を対象に制度を続けるとのことですが、国と同じように行き詰まった外需頼みの経済を続けることは問題です。
企業誘致のための県の助成制度であるインベスト神奈川は、大企業の助成金の申請を1年前倒しして受付終了を決定しました。一方、中小企業には新規雇用に対する助成制度の要件を緩和し、対象枠を拡げました。これは、これまでの助成制度でつぎ込んだ額が、県財政を圧迫して来たこと、経済不況で今後、税収は減ると見込まれることなどによるものです。また、県民からは、大企業に優遇しても雇用が増えてこなかった現状において、中小企業への対策こそ強めるべきと言う声が上がっています。
この状況は本市も同じといわざるを得ません。既存の中小企業を底上げし、中小企業振興のための制度の拡充を図るべきです。この助成制度を継続することには、反対です。
営利目的の民間企業に図書館を任せるのか
続いて、市第72号議案は、第4回定例会で継続審議となった議案で、山内図書館へ指定管理者制度を導入するものです。
山内図書館は、社会教育法、図書館法、横浜市立図書館条例に則って、いままで直営で管理・運営されてきました。地方自治法の一部改正があり、直営の公の施設に指定管理者制度導入が可能になり、民間事業者が管理運営することができるようになりましたが、制度の導入については「公の施設の設置目的を効果的に達成するため、必要があると認められる時」として限定的な規定です。これからも直営で管理運営されることが原則です。
今回、山内図書館へ指定管理者制度が導入されれば、サービスが向上するといって、開館時間の延長やサービスポイントの拡大など、いくつか例示されていますが、これらはいずれも直営でも可能です。このことは、多様な保育サービスの提供が可能になることを理由にすすめられた市立保育園の民営化に際し、市立園でも一時保育サービスなどが実施されていることをみれば、直営でもサービス向上が可能なことは明らかです。今回例示されているような内容のサービスでは、導入目的にはなりません。
コスト削減になるといっても、それは指定管理者に人件費抑制を強要することになり、結果として人材確保を困難にします。図書館の目的達成の要は司書であり、質の高い司書あっての図書館です。コスト削減はこういったことへの逆行となり、ひいてはサービスの低下につながります。
また、図書館に指定管理者制度はなじまないということです。図書館には、図書を収集・保有して市民が利用できるようにすることだけでなく、教育機関としての位置づけや、他の図書館との連携・協力などの役割があり、これらを持続、発展させることが求められています。期間を区切って管理運営を行う指定管理者制度が、これらの事業を行うのに適しているとは考えられません。
さらに制度上、司書職員の継続雇用は難しく、業務の継続ができなくなり、不安定雇用を生み出すことにもなります。
また、図書館法では「公立図書館は入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」と決めています。社団法人日本図書館協会は、この「無料の原則」から「公立図書館に指定管理者制度を適用することには制度的な矛盾がある」と指摘しており、まさにそのとおりと考えます。
すでに制度を導入した他都市では、図書館の指定管理者に大型書店や物流会社、人材派遣会社などが指定されていますが、重要な図書館業務である図書館毎の連携・協力、学校や地域への出張サービスや文庫活動などの読書普及活動、地域資料の発掘・収集などを、営利を目的とする民間企業が行うことが適切か、公正公平かつ効果的に行うことができるのかとの懸念があります。
地域館の山内図書館一館だけに導入してみて、評価して今後の市全体の図書館の管理運営を検討するということですが、議会の審議のなかでこれほど弊害が明らかになっている以上、制度の導入を行うべきではありません。議案には、反対です。
生活費である在宅障害者手当は存続を
次に、市第134号議案は、横浜市在宅心身障害者手当支給条例を廃止しようとするものです。
在宅心身障害者手当は、在宅の心身障害者にたいし、生活の安定に寄与することを目的にして支給されており、現在5万5000人が受給しています。
市長は、「様々な在宅障害者福祉施策が充実をしてきた現在、生活の安定に寄与するという当初の目的は果たされた」と述べていますが、障害者の生活実態は安定したものとはいえません。
障害者の収入は、障害者年金が基本です。本市の統計資料では、2006年度の障害基礎年金は年額88万円から89万円です。その他に障害者の収入となるのは、神奈川県の在宅重度障害者手当、最高額で年額6万円と、横浜市の在宅心身障害者手当、最高が年額6万円あります。働くことが困難で、就労による所得が得られない人が大多数のなか、この手当ての使い道を問うアンケートでは、「衣食住費などの生活費に当てる」人が70%を超えています。ほとんどの人が生活費に当てているわけです。障害者が1人の市民として自立した生活をするための充分なものではありません。
この手当をなくすことは、生活上かなりの痛手になるとの悲痛な声が様々寄せられています。今でさえ厳しい生活、その生活水準を落とせといっているに等しいものです。
市長は「限られた予算を使って、有効に今後の施策を展開していかなければいけない」とのことですが、現在の手当は有効でないと何をもっていえるんでしょうか。廃止する理由にはなりません。「家族が求めている施策へと転換を図る」とのことですが、もちろん家族は将来の施策も求めていますが、現在の生活の維持と将来の施策の両方を求めているわけです。両方やってこそ、安心が確保されます。本市の財政規模からすれば、両方可能です。
「制度の廃止を1年間かけて充分周知する」ということですが、なぜ制度廃止を検討する段階で広く当事者に聞くことをしなかったのでしょうか。1年間かけて充分周知することができるなら、事前にできないことではなかったはずです。この手当は廃止すべきではありません。議案には反対です。
なお、常任委員会での山内図書館への指定管理者制度導入議案と在宅心身障害者手当廃止議案の採決にあたって、いずれの議案にも賛成会派から附帯意見が付けられたことについて、いずれも重大な問題点が明らかになっているにもかかわらず、附帯意見をつけてよしとする態度は市民の願いに応えるものではないと、一言申し上げざるをえません。以上で討論を終わります。