2015年11月20日
横浜市長 林 文子様
日本共産党横浜市会議員団
団長 大貫憲夫
国は、男女共同参画社会基本法、DV防止法、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活用推進法)にもとづき、第4次男女共同参画行動計画を策定中です。横浜市は、第4次横浜市男女共同参画行動計画策定にあたり、素案を示し市民から意見を募集しているところです。
私たちが、最も重視しなければならないことは、日本の女性の地位が男性と比較して大きな格差と差別があることを直視し、この格差と差別を是正することです。労働法制のあり方をその視点から根本的に見直して、男女の賃金格差をなくし、同じ仕事をしている正規と非正規の労働者に同じ待遇を保証することです。
この点で、素案は、「女性の多様な分野への参画や就労、ワーク・ライフ・バランスの推進・・・・課題は少なくありません」として、女性の就労支援策を掲げ、15の事業を具体化していますが、男女間賃金格差是正については、その一つに位置づけているだけです。これでは、働く女性への深刻な格差と差別への認識が不十分といわざるをえません。この認識がないままの計画では、「多様な働き方」という名のもとに、男性なみに長時間労働をこなせる一部の女性だけを正社員や管理職として登用し、それ以外の大多数の女性は、パートなどの非正規雇用や、正社員・「総合職」と賃金格差のある「限定正社員」・「一般職」などの間接差別の下で都合よく利用され、結果として差別と格差が温存され続けられてしまいます。
また、素案では、「日本一女性が働きやすい、働きがいのある都市の実現」を目指すとし、その好機として、安倍内閣が成長戦略の柱としている女性の活躍促進政策を挙げています。女性活用推進法など安倍内閣の女性政策は、少子化による労働力不足を女性の労働力で安上がりに補わせようとする財界・大企業の要求にこたえたものでしかなく、“経済成長”の立場の「女性活用」であり、女性の願いにも、世界の男女平等のルールを定めた国連女性差別撤廃条約の見地にも逆行しています。素案は、国の政策の範囲内で策定されているため、女性差別の解消、地位向上そのものに取り組むことが第一義になっていません。
横浜市での男女共同社会の実現には、賃金格差を実質的に是認し、派遣労働を拡大する国の女性政策、労働政策の転換が不可欠です。全国最大の基礎自治体として、素案でも謳っている国への働きかけは効果を発揮することは疑いありません。働きかけの方向性は当然政策転換を求めるものでなくてはなりません。
次に女性が働きつづける条件づくり、環境整備についてです。素案では、女性の年齢階級別労働力率の比較では、横浜市は、全国平均と政令市平均より低く、M字カーブの底が深いことが記されています。市内在住女性労働者の3割が市外勤務で、しかも、週60時間以上の割合が1割を占めるなど長時間労働する女性が他都市より多いのが東京に接する横浜市の特徴です。そのために、結婚、出産育児を機に仕事を辞める割合が他都市より高くなるわけです。これは、子どもを生み育てながら、働き続けられる条件整備が横浜市では特別に重要であることを示しています。仕事と家庭との両立の最大の障壁は長時間労働です。国レベルでの男女ともの長時間労働規制は待ったなしです。加えて、マタニティ・ハラスメント根絶、育児休業制度の拡充、そして、自治体の責任で認可保育所、学童保育施設を保障することです。「多様な働き方」に呼応した子育て支援や高齢者福祉・介護整備では、十分満足できる質と量が保障されないであろうことは、容易に予測がつきます。
女性も男性も持てる力を発揮できてこそ、所得が増え、経済は土台から強くなり、安定した経済成長も可能となります。国とともに地方自治体の責任は重大です。
第4次横浜市男女共同参画行動計画が、以上の基本認識と課題整理の上に立って、男女差別の解消にむけて、実効性のある計画になるよう、素案の構成に即して、下記の提案を行うものです。
記
一) 重点施策Ⅰ「働きたい・働き続けたい女性への就業等支援」=取組分野Ⅰに関して
1、男女間賃金格差等の是正の取り組みを重点施策として明確に位置づけ、具体的な事業を定めること。
2、市内企業における従業員女性割合の目標値50%(2020年度)を実現する具体的事業を明記すること。
3、放課後キッズクラブの整備率の全校化(2019年度)に加えて、学童保育クラブ事業についても活動指標として目標をもつこと。
4、就労支援件数の目標5か年累計12,500人は年平均にすると2,500人であり、現状値の約2,300人の109%にすぎません。女性有業率目標73%達成のためにも、少なくとも倍加すること。
5、女性有業率の目標値73%については、正規、非正規別の内訳を記し、正規を増やすこと。
6、公共工事や指定管理者など公的職場に携わる労働者の適正な賃金が確保される公契約条例制定を明記すること。
7、働き続けられるための条件整備として、また子どもの貧困対策として、中学校給食を実施すること。
8、保育所待機児童数については、目標値0人だけでなく、「児童福祉法24条1項」にもとづいて認可保育所を基軸とし、保育士の確保と労働条件の改善を本市の責任で行うことを表記すること。
9、介護離職防止に向けて、高齢者福祉を充実させ、特養ホームを増設すること。
二)重点施策Ⅱ困難な立場にある男女への支援=取組分野Ⅱに関して
1、小児医療費助成制度の拡充を盛り込むこと。
2、妊娠・出産による解雇、嫌がらせ(マタニティー・ハラスメント)に対し、女性労働者がすぐに相談でき、迅速に解決できる相談窓口と解決体制を本市に増設、強化し、周知を徹底すること。
3、最低賃金1000円以上となるよう、国に働きかけるとともに、市内事業者に対しても、横浜商工会議所、業界団体とも連携して、事業者努力を求めること。中小企業には、必要な経済的支援を行うこと。
4、 ひとり親家庭を正規雇用した中小企業へのインセンティブ付与を創設すること。
5、「ワーキングプア」をなくすよう、本市の非正規公務員を正規にすること。
三)重点施策Ⅳ社会基盤全体及び庁内の体制強化=取組分野Ⅳ
1、国の制度及び予算に関する提案・要望については、働く女性への差別を是正し、均等待遇を実現するために以下の法改正と制度改変を正面から求めること。
①男女雇用機会均等法に「すべての間接差別の禁止」を明記すること。
②パートタイム労働法や労働者派遣法を改正し、均等待遇の原則を明記すること。
③女性が自立できる賃金をめざし、最低賃金を時給1,000円以上に引き上げること。
④女性労働者を、いっそうの不安定・低賃金に固定化する労働法制改悪を中止すること。
⑤マタニティー・ハラスメント根絶のため、雇用均等室などの体制拡充、企業への指導を徹底し、違反した企業名の公表、罰則強化をはかること。
⑥所得保障は3か月間を100%に、保育所入所できない場合は育児休業1年以内延長、有期雇用を含め6か月以上勤務している労働者すべてを対象とするなど、育児休業制度を拡充すること。
⑦残業時間上限を年360時間に法規制するなど長時間労働を是正する、子育て期の労働者の残業免除、深夜労働の免除は中学校入学前まで、短時間勤務制度は小学校入学前まで請求できるようにすること。
⑧自営業・農業女性の労働を正当に評価するために、人権侵害である所得税法56条は廃止すること。