「国際戦略」は「平和に貢献する」という見地から見直すべき
私は日本共産党を代表して、7件の議案と1件の請願について、討論を行います。まず、市第186号議案「横浜市国際戦略」の策定についてです。
同国際戦略は、国際事業を推進する意義について「本市が都市として持続的に成長していくための“投資”である」と規定しています。これにみるように、本市の直接的な経済成長のための経済戦略が中心となっています。
本市は、国連から平和活動や海外諸都市との交流が評価され、ピースメッセンジャー都市の称号が与えられ、さらに世界恒久平和への実現に寄与することを目的としている平和市長会議に加盟しています。
しかし今でも、国際局での国際平和にかかわる事業・施策と予算は、パネル展等の啓発活動に12万6千円、ピースメッセンジャー都市国際協会負担金支出に14万5千円などしかありません。きわめて不十分と言わざるを得ません。
私たちは、今回の国際戦略策定によって、国際平和の取り組みがさらに後退することを危惧しているところです。市長は、「恒久平和の実現は長年にわたる人類の願い」であることや、「ピースメッセンジャー都市として、平和市長会議の一員として国際平和の実現に向けた取り組みを行い、世界にアピールしていく」と答弁されました。それならば、これを契機に、国際平和にかかわる事業を拡充し、さまざまな国際事業を通じて国際社会が平和と発展に向けて貢献していくことを本戦略の中で明記して、市民はもとより、世界の人々に対して、きちんと伝わるようにすべきです。以心伝心が通用しないことは、グローバル社会の常識です。
地方自治体の国際戦略は、これまでの国際事業の方針としていた「横浜市海外諸都市との都市間交流指針」のように、交流・友好・平和を高く掲げて、海外諸都市との互恵関係を築いていくことを目標にすべきであり、国際平和に貢献するという高い見地で見直すべきです。
「特別自治市」の市民的議論は不十分
次に、市第188号議案「横浜市区役所事務分掌条例の制定」についてです。
本議案については、あくまでも現行の区行政の役割を整理した最小限の条例にとどまっており、われわれの求めるものではありませんが、反対するものでもありません。
問題は、付帯意見の中身です。付帯意見には、「第30次地方制度調査会以降“総合区”という新たな区のあり方が示されるとともに、横浜市においては新たな大都市制度として『特別自治市』を目指している。」となっていて、これは明らかに神奈川県から横浜市を独立させる特別自治市構想推進宣言です。しかし、特別自治市についてはまだ市民的議論は十分ではなく、市民の総意とはなり得ていません。特別自治市は全国的には、広域自治体としての都道府県の役割を否定する道州制導入とセットで議論されています。現行の地方自治制度を根本から変えてしまうことにつながる特別自治市は、住民自治を発展させる点からいっても、課題があるものです。
よって、特別自治市推進を前提とした付帯意見には同意することはできません。
保育の質向上のために市立保育園の廃止はやめるべき
市第196号議案は、「横浜市保育所条例の一部改正」で、2017年4月から港南区の港南台保育園と旭区の若葉台保育園の2つの市立保育園を民間移管させます。
2014年9月に公表された「市立保育所のあり方に関する基本方針」で、その役割を保育資源ネットワーク構築事業の事務局園と位置づけています。このネットワーク構築事業が、どの地域でも真に横浜の保育の充実と地域の子育て支援になるためには、その役割を担う市立保育所をこれ以上減らすべきではありません。また、横浜の保育の質の向上のためのネットワーク構築を遂行させるには、市立保育所での実施体制の充実が必要です。子どもの権利に関する条約第3条「子どもの最善の利益」に基づけば、子どもたちには最善の保育を受ける権利があり、本市はその責任と役割をきちんと果たすべきです。
子ども・子育て支援新制度になり、民間保育園では保育料以外の費用を徴収できるようになったことから、保育料以外の費用を徴収しない公立園に経済的困難を抱える子が増えていること、公立園が虐待や障害のある子を積極的に受け入れていることなどを鑑みれば、公立園の役割はますます重要なものとなっています。規範としての水準を示し、市民・保護者の信頼とニーズに応えるためにも、市立保育園の廃止はやめるべきです。
この趣旨で請願第24号「市立保育所の存続等について」は、不採択ではなく採択すべきです。
公的な施設である養護老人ホームはますます必要に
市第199号議案「横浜市老人福祉施設条例の一部改正」で、2016年4月から横浜市名瀬ホームを廃止するものです。これによって、市が運営する養護老人ホームは保土ヶ谷区の恵風ホームだけとなります。これも廃止する計画となっています。
市内7か所ある老人福祉法に基づく養護老人ホームは、環境上の理由や経済的な理由で、家庭において生活することが困難な65歳以上の人が入所対象の公的な施設です。このことから、養護老人ホームは、高齢者が安心して生活できる最後の砦として存在しているのです。貧困・孤立・虐待などの処遇困難な高齢者が急増する今、困難を抱えた高齢者を救済する措置福祉施設である養護老人ホームはますます必要とされており、これこそ公が対処しなければならないものです。
公的な施設である以上、すべての施設の管理・運営を民間まかせにするのではなく、市の施設として残し、公が規範としての水準を示すべきです。現場に市の職員が必ずいることで、実態を正確につかむことができるのではないでしょうか。
市の施設である名瀬ホームを廃止することは、公の福祉責任を後退させることになり、賛成できません。
公立学校間に格差を持ちこむ高校付属中学校
市第205号議案は、「横浜市立学校条例の一部改正」です。
横浜サイエンスフロンティア高等学校付属中学校の新設についてですが、受験競争の低年齢化、公立学校間に格差を持ち込むものであり、同意できません。
本市には港南区の南高校に付属中学校が設置されています。教育長は、「生徒や保護者が6年間の一貫した教育課程や学習環境のもとで、学ぶ機会を選択できるようにしたものである」と答弁されましたが、いったいどれだけの子どもたちが選択できるというのでしょうか。現実は、月に数万円もかかる塾に通い、受験対策がたてられる子どもにしか、道は開かれていないのです。2014年度の本市内中学生が就学援助を受けている割合は16.23%ですが、南高校付属中学校生徒の割合はこの数字よりもはるかに低く、経済的条件が揃っている子どもが、高い倍率をクリアして、在学していることがわかります。学ぶ機会を選択できる子どもだけを選抜し、入学後に遠方から通うための交通費の負担、カナダへの修学旅行費27万6千円、教材費3万3千円をはじめ、有名進学塾が行うテストの費用など、他の中学校に比べて多くの学校納入金があるということは、差別と選別を助長するものであり、公教育の使命から逸脱していると言わざるを得ません。そういうことを、サイエンスフロンティア高校付属中学校でも繰り返すのでしょうか。
先日、少子化で子どもの数が減少しているにもかかわらず、生活保護費以下の収入で暮らす子育て世帯が過去20年で倍増したと報道されました。子どもの貧困対策に本腰で取り組まなければならない時期に、格差と貧困を広げるやり方を、なぜ持ち込まなければならないのでしょうか。納得できません。貧困の連鎖を断ちきるには、多くの子どもたちが平等に教育の機会を与えられるよう、社会的責任として自治体が新たに政策を打っていく必要があることを、教育長は認識すべきです。
カジノを含むIRの誘致が前提の山下ふ頭開発基本計画は見直せ
市第207号議案「横浜山下ふ頭開発基本計画検討委員会条例の廃止」についてです。同検討委員会は、昨年の7月に山下ふ頭の中心部を「横浜のシンボルとなる大規模集客施設」、突堤部をホテルなど「リゾート空間」等の答申を市に提出しました。
私たちは、山下ふ頭開発がカジノを含むIRの誘致が前提となっていると指摘してきました。検討委員会議事録を見ても、カジノを含むIRが前提となった議論が行われていることは明らかです。大規模集客施設やホテルは、カジノ、ショッピングモール、ホテルなどを一体的に併設するIR、統合型リゾートの構成施設の主要部分です。多くの市民が反対しているIRが念頭に置かれた基本計画を市長に答申したまま、委員会を廃止することは許されません。
カジノ事業者以外にこの巨額な整備を回収できるような民間事業者が来ると確約できるのかとの質問に対し、市長ははっきりと答えておられず、これでは実現する裏付けのないまま、事業資金捻出のために数百億円もの市債を発行することになります。
みなとみらい21地区20街区では、一般のホテル事業では採算が取れないとして、会員制のホテル事業者が応札しました。過大な整備費を回収できるスキームは、どう考えてもカジノを含むIR以外は考えられず、一度立ち止まって見直すべきです。
次世代に過度な負担を強いる市庁舎移転新築工事
最後は、市第213号議案「横浜市市庁舎移転新築工事請負契約の締結」についてです。
新市庁舎建設については、私たちは、今後の市の窮迫する財政状況や、将来の人口減となることを踏まえ、本庁への一極集中から区への分権など、今後一層求められる都市内分権推進の立場に立ち、本庁舎と各区庁舎のあり方を見直すことが必要であること、東京オリンピック開催にこだわることなく、改めて費用負担が少ない手法で検討すべきであると、主張してまいりました。また、横浜市公共事業評価制度に基づく市民意見募集で、東京オリンピック前までの整備に疑問を示す意見や、現市庁舎が耐震補強工事を行ったばかりであることから、移転には賛成できないといった意見が多くあったにもかかわらず、これらの市民意見を一顧だにせず、遮二無二突き進んでいることが、市長の答弁から、はっきりうかがえます。
このまま異常に高額な事業費を支出していけば、将来世代に過度な負担を強いることになることは自明です。この際、立ち止まって検討するという英断をして、市民の皆さんの願いに応えるべきであり、このまま契約を認めることはできません。
以上、反対討論させていただきました。