◎質問と市長答弁は次の通りです。なお、実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように対応する質疑と答弁を交互に記載しました。
大貫:私は、日本共産党を代表して市長に質問します。
なぜこれほどまでにアベノミクスを本市で実行しようとするのか
大貫:2015年度予算案の根本的問題は、自治体の使命である「住民の福祉の増進」という視点が希薄であり、安倍政権の経済成長戦略最優先が貫かれていることです。
市長は、予算案に「将来に向けて必要となる『人』や『企業』、『都市』への投資を積極的に盛り込みました」としています。人と企業を同列に位置付ける発想こそが問題です。企業も横浜市を支える大切な存在です。しかし、「住民の福祉の増進」が地方自治体本来の仕事であり使命であることを考えれば、人と企業を同列に考えてはなりません。住民が元気で住みやすい豊かな横浜市を本当に願うならば、「住民こそ主人公」の立場に立ちきることが必要であると思いますが、市長の見解を伺います。
新年度予算案の最大の特徴は、一般会計で前年度より増額となった773億円のうち、施設等整備費増が525億円と大半を占めていることです。その主たる要因は、横浜環状道路整備費が340億円、前年度比149億円、78%も増額されたことです。一方、新年度国家予算における公共事業関係費は5兆9,711億円と、今年度とほぼ同額です。三大首都圏環状道路整備には前年度比1%増の2,379億円を計上していますが、増額は24億円に過ぎません。
三環状関係の国家予算の伸びに対し、本市の横浜環状道路整備費の大幅増額は異常です。これはまさに、国土強靭化と国際競争力強化を名目にした巨大ゼネコンのための大型公共事業推進であり、安倍政権の経済成長政策であるアベノミクスを国に代わり横浜で率先して実行しようとするものです。ここに、自民党化した林市政の実態が露骨に表れています。なぜ、これほどまでにアベノミクスを本市で実行しようとするのか、本当にそれでよしと考えていらっしゃるのか、市長の見解を伺います。
林市長:大貫議員のご質問にお答え申し上げます。
市政運営について、ご質問いただきました。
27年予算案の考え方についてですが、人口減少や超高齢社会の到来、都市インフラの老朽化など、横浜を取り巻く環境が大きく変化をしています。今回の予算ではこれらの課題を乗り越えて、市民生活をしっかりと支えるとともに、横浜をさらに発展させるために、必要な人、企業、都市への投資を積極的に盛り込みました。
大貫先生、今、人と企業を並列にしてらっしゃるという言い方をしてらっしゃいますけど、基本的には企業というのは企業市民、そしてこういった経済活動がしっかりしてなければ、やはり市民生活もお支えできないということでございまして、これトータルして、横浜市の経済成長にはこういう並べ方は私はまちがいはないと思っておりまして、基礎自治体として、市民おひとりおひとりに寄り添って、子育て、教育、福祉、医療、生活に直結する分野については、これはぜひご覧いただきたいんですが、よりいっそう充実させた予算としてございます。
(第二質問)
大貫議員:市長は、人と企業を同列に扱うことについては、経済発展上で考えれば同じだと、こういうふうにおっしゃっていましたけども、地方自治の本市からいえば、住民の福祉こそ、この地方自治体、横浜市の仕事です。そこのところが一番の市長の問題点です。そこについて、私たち地方自治体に関わる者は、住民の福祉、そこに予算、横浜のその仕事を行うべきだというふうに主張して、私の発言を終わりにします。
市費の直接投入で少子高齢化、都市インフラの老朽化などの課題解決を
大貫:市長は、横浜の未来に向けて解決すべき課題として、少子高齢化、生産年齢人口の減少、都市インフラ・住宅ストックの老朽化などあげています。その通りです。しかし、それらの打開・解決のための方策に問題があります。
市長は、課題解決には財源が足らないとし、中期計画において2025年に向けて経済成長の基盤をつくり、法人市民税収入を増やすとしていますが、大企業頼りでは税収入が劇的に増える保証は全くありません。また、課題解決のためには、市長の好きな言葉で言えば、スピード感を持って対処しなければならないのに、あまりにも迂遠なやり方です。
市長は本市の経済力、財政力を過少評価しています。2015年度予算案は3会計合計で3兆4,820億円に達しています。大阪や名古屋に比べ法人市民税収入が少ないのは事実です。しかし、370万という日本最大の市民に支えられた個人市民税は、2012年度で大阪市の2倍以上の2,872億円であり、景気に変動されやすい法人市民税収入と違い、安定しています。財源はあるのです。
問題は使い方です。たとえば、建築業者の仕事興しのために全国各地で実施されているリフォーム助成制度を本市においても実施することや、小児医療費助成を小学生3年生にとどまらず小学6年生まで引き上げて生産年齢人口の減少をくいとめる一助とするなど、未来に向けて解決すべき課題解決になぜ予算を直接使わないのか、その理由を伺います。
林市長:少子高齢化等の課題への対応についてのご指摘ですが、予算案では都市活動を支える基盤整備など将来への投資とともに、防災減災対策や社会保障施策など、市民生活の安全安心を守る施策にもしっかりと取り組んでいます。昨年末に議決をいただいた中期4か年計画の実現に向けて必要な予算を積極的に盛り込みました。
住民福祉を増進すべきとのご指摘でございますが、今回の予算では横浜のさらなる発展のために必要な経済の活性化や、それを支えるまちづくりを支える投資を盛り込むとともに、重ねて申し上げますが、人への投資として子育て、教育、福祉、医療など市民のみなさまの日々の暮らしに直結する分野についてもよりいっそう充実をさせてきております。
自民党政治が「住民福祉の増進」の視点を捻じ曲げている
大貫:市長は、二期目の市長選を前に、横浜環状道路北西線・南線整備、国際コンテナ戦略港湾、新市庁舎整備をはじめとする大型公共事業などの政策協定を自民党と結んだと報道されています。経済活性化を理由に、将来に向けた課題解決に向けて、これほど迂遠なやり方で、また無責任な予算を計上したのはなぜか。それは、自民党との政策協定を最優先させたためであり、横浜における自民党政治が林市長をして自治体の使命である「住民福祉の増進」の視点を捻じ曲げているといわざるを得ません。
その最たるものが、カジノの横浜の誘致であり、中学校給食の拒否です。
横浜へのカジノ誘致は自民党横浜市議団の長年の要求です。一昨年、市長がカジノ誘致を打ち出したのは、カジノがアベノミクスの第三の矢、経済成長戦略に位置付けられたことを契機とするものです。一方、カジノ誘致最有力とされた東京も沖縄県も今の知事はカジノはいらないと言っています。また、新聞報道によれば60%を超える横浜市民がカジノ誘致に反対しています。
中学校給食についても市長は、自民党の頑な反対に屈し、家庭弁当に固執しているといわざるを得ません。配達弁当への公費投入の当初方針も撤回です。
なぜ、「住民こそ主人公」「住民福祉の増進」という地方自治体の立場に反して、これまでして自民党に追随されるのか、市長の見解を伺います。
林市長:予算案に対するご指摘についてですが、27年度予算案は中期4か年計画の実質的なスタートとして未来を見据えたこれらの課題解決にまい進する、そうした思いを込めた予算でございます。国の成長戦略や地方創生の動き、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催などチャンスもとらえ、横浜の未来を切り開いていくということでございまして、これはあくまでも横浜市が基礎自治体として自立していく予算というかたちで、私は立てておりますというか、みなさまのご賛同を得たいと願っておりまして、何かに追随するという気持ちはございません。
市内小規模事業者に視点を置いた政策が今こそ必要
大貫:次に、本市経済の現状と課題について伺います。
国の経済センサス調査によると、本市では2009年から2012年の間、事業所数が7,489、従業員が39,795人減少しています。新年度予算では、利用実績に合わせて、中小企業に対する融資枠が300億円引き下げらました。しかし、利用実績の減少は新たな事業展開のための手段を打つことができず、融資を受けたくても返済の見込みが立たない市内中小企業の状態があります。本市の経済現状をどのようにとらえているのか、その問題点、課題は何か、解決策はどう考えていらっしゃるのか、市長の見解を伺います。
本市経済においても、成熟社会への転換が求められています。昨年、決算特別委員会でも指摘しましたが、OECD諸国の中で日本が輸入超過となっている国がイタリアとフランスで、輸入品はバッグ、家具、ワイン、小物雑貨です。そのほとんどが小規模企業によるものです。横浜でも、市内企業の9割を占めるのが小規模事業者であり、その小規模事業者こそが、経済の担い手です。企業誘致による市外からの企業の立地も必要です。しかし、歴史的に集積されてきた産業がある本市にとって、市外から移ってくる企業は市内経済、産業を補完するものであって主、役ではありません。
昨年6月、小規模事業者は経済の基盤であり担い手と位置づけた小規模企業振興基本法が施行されました。アベノミクス・自民党の経済政策に引きずられることなく、市内小規模事業者に視点を置いた政策が今こそ必要です。小規模企業振興基本法をどのようにとらえて、どのように予算に反映されたのか、市長の見解を伺います。
林市長:経済政策についてご質問いただきました。市内中小企業の現状認識と解決策についてですが、景気の回復傾向を受けて、業績が緩やかに回復している企業がある一方で、円安等による原材料費の上昇や人手不足などによりまして、厳しい経営環境におかれている企業のみなさまもいらっしゃいます。そのため、27年度予算では、これまでの支援に加え、経済変動による収益悪化等に対する融資メニューの創設や人材確保支援の強化等に取り組み、経営の安定をしっかりとお支えしていきます。
小規模基本法をどうとらえ、予算へ反映したかについてですが、基本法では小規模企業の事業の持続的な発展を図り、円滑かつ着実な事業運営を適切に支援することがうたわれておりまして、この考え方は本市においても非常に重要であると認識をしています。この法律などを踏まえ、27年度予算案では小規模企業向けの制度融資で利率を引き下げるなど資金繰り支援を拡充したほか、主に小規模企業が対象となる起業家支援や商店街支援等についても、きめ細かく強化をいたしました。
安倍政権に集団的自衛権の行使容認の撤回と憲法改定反対の意思を伝えよ
大貫:安倍首相は一昨年12月、慎重審議を求める国民のごうごうたる批判を押し切って、秘密保護法を制定しました。昨年1月には、それまで自民党政府が守ってきた武器輸出禁止三原則を廃止しました。7月には集団的自衛権の行使を認める閣議決定を強行し、今年5月には法制化を予定しています。次期参議院選挙後には国会で憲法改定作業に入るとされています。このように、安倍政権は、ひたすら日本を再び「戦争する国」に仕立てようとしています。
今年は戦後70年の節目になります。誰もが平和を希求しています。市長は、平和を守るという観点から、安倍政権の一連の憲法解釈改憲、憲法改定の動きをどのようにとらえらているのか。同時に、市民生活の基本である我が国の平和を守るため、安倍政権に対して集団的自衛権の行使容認の撤回と憲法改定反対の意思を明確に伝えるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
本市では、4月に国際局を創設し、自治体外交をより活発に展開しようとしています。我が国の国際社会との信頼のおおもとは、恒久平和をうたい戦争放棄を掲げた憲法9条です。国際局が自治体外交の役目を果たし、海外他都市との友好親善を図るためにも、国際局設置の理念の基本に憲法9条を据えることを求めます。
国際局を通じ国際平和に積極的に貢献し、さらに本市の平和に対する決意を示すために、本市で平和市長会議及びピース・メッセンジャー都市会議の開催を招聘することを提案します。いかがでしょうか。
林市長:国際平和事業について、ご質問いただきました。
憲法改正の動きについての捉え方についてですが、引き続き国民的議論がなされるものと考えております。また、今おっしゃいました集団的自衛権についての閣議決定と憲法改正に関して意志を伝えるかについてですが、そうしたことは考えておりません。
平和市長会議やピース・メッセンジャー都市会議を開催し、平和に対する決議を表すべきとの考えでございますが、これまでもピース・メッセンジャー都市会議を本市で開催したこともありますが、引き続き横浜開催の検討も含めまして、ピース・メッセンジャー都市としての取り組みを進めてまいります。
横浜市が先頭に立ち、「米軍基地を返せ」の市民的大運動を
大貫:平和問題のみならず本市のまちづくりに大きな障害となっているのは米軍基地の存在です。小柴貯油施設の大部分と深谷通信所が返還され、上瀬谷通信施設は今年返還の予定です。
一方、返還期日が明らかでない米軍ノース・ドックは、みなとみらい21地区に隣接する都心臨海部の一等地、瑞穂ふ頭の52ヘクタールを占拠しています。国際都市横浜は安全な都市でなくてはなりません。その横浜港のど真ん中にテロの標的になる巨大な米軍基地があっていいはずがありません。
また、米軍根岸住宅43ヘクタールには現在ほとんど居住者がいません。根岸住宅では居住施設が不足だとして池子に米軍住宅が必要とする根拠は完全に破たんしています。
これら残る米軍基地を一刻も早く返還させるためにも、横浜市が先頭に立ち、「米軍基地を返せ」、この市民的大運動が必要だと考えます。市長の見解を求めて、私の質問とします。
林市長:市内米軍施設の返還についてですが、米軍施設は日米安全保証条約および日米地位協定において必要なくなった時は無条件かつ速やかに返還されるものと考えています。本市はこれまでも市政の重要課題として市民・市会・行政が一体となって早期全面返還を国に求めてきておりまして、私も駐日大使が交代した折など真っ先にそのことを申し上げたり、国にも何度もご要請をしております。今後も返還に向けた取り組みを粘り強く進めてまいります。
以上、大貫議員のご質問にご答弁申し上げました。