コスト高の市庁舎再整備計画は白紙撤回し、市民討議で再検討を
日本共産党を代表して討論します。
まず、市第46号議案、市第58号議案の市役所の位置に関する条例の改正についてであります。
市役所の位置を、現在の関内駅前から北仲通南地区へと変更しようというものであります。
問題の一つ目は、巨額な建設費が生じることによって、むだな借金、市民に押し付けることであります。今回、当局が示した案の中で最も費用の高い北仲通南地区案を採用し、さらに、東京オリンピック・パラリンピックまでという一番コスト高になる時期に建設を進めようというものであります。このような二重の意味でコスト高になる計画は、間違っている。それを市民に押し付けるのは許されません。最悪の選択です。議員のみなさん、本当に胸を張って有権者の前で説明できるのでしょうか。
まず金額についてでありますが、当局が示した案では、北仲通南地区は603億円、港町地区は398億円で、今回の北仲通案が高いのは一目瞭然。今回、北仲通南地区決定に引きづられた大きな理由は、「市が北仲通南地区に超高層ビルを建設する責務を負っている」からだとしています。しかし、その主張は間違っているとして、現在、市民オンブズマンが市を相手に係争中であります。この裁判で市が敗訴すれば、北仲通南地区案を採用する合理的理由がなくなり、またURとの契約解除で土地取得費の168億円の相当部分が戻ることになります。結果、港町地区案での正味の建設費は、現計画の三分の一に縮減できます。それでも北仲通南地区案を強行しようという行為は、重大な市民への利益相反行為となります。
次に時期についてですが、市長の判断で新市庁舎の完成時期を前倒しをして2020年の東京オリンピック・パラリンピックに間に合わせるとしています。いま、首都圏では東京五輪に向けて大型工事建設ラッシュで、人件費、資材費が上昇しています。わざわざ建築コストが増大する時期に、新市庁舎をなぜ完成させなくてはならないのでしょうか。
労務費の上昇や建築資材の高騰は、入札不調という形で表れてきています。先ほども述べられていましたように、千葉県木更津市では、横浜市と同じように新市庁舎整備を計画していましたが、労務費や資材費の上昇で入札参加者すべてが見積額の予定価格を上回ったということで、入札中止としています。東京都内でも、豊島区が西部地域複合施設の建設計画を、入札不調が続いたことにより、2020年まで凍結をしました。宮城県では、子育て支援施設の建設費を、入札不調になりかねないとして、見積額を約10%増加しました。木更津市や豊島区では、重大な決断をして、無駄な税金を使わないという賢明な判断をしています。
市長は、設計施行一括発注方式で早期に事業費を固めるので高騰のリスクの軽減を見込むことができるとしています。しかし、これは間違っています。仮にこの方式で一旦契約を結んだとしても、この先工事単価がどんどん高騰すれば、契約規則のインフレスライド条項によって、追加追加の補正予算を組まざるを得なくなります。市長ご自身も、先日の白井議員の質問に対して「設計施工一括発注方式といえども、物価などが変動して、工事請負代金額が不適当となった場合には、契約金額を変更する必要があると考えています」と述べられています。このように、市長がおっしゃっている建設コスト高騰防止策の根拠は、全く薄弱です。
市会各会派の議員のみなさんは、市長の説明を本気で信じていらっしゃるのでしょうか。そこまでのリスクがありながら、なぜ今の時期にどうしてもやらなければならないのでしょうか。それでも、市長が言う「プレゼンをする場所がない」、こういった理由を認められるのでしょうか。
問題の2つ目は、今の時期に新市庁舎建設を強行することは横浜市だけの問題ではなく、東北の被災地の復興の足を引っ張ることになることであります。
7月31日の復興庁公表資料によれば、昨年度の復興関連予算の執行率は64.7%にとどまっており、中でも災害復旧の公共事業は55.2%が未執行であります。その原因は、人手不足に加えて、労務費の上昇、資材高騰を背景に、建設業者の入札参加の見送りが目立ったためだとしています。
例えば、仙台市内陸部では、復旧工事の必要な約2500か所のうち、工事が終わったのはわずか3%であります。震災から3年以上が経って、いまだ約26万人の被災者が仮設住宅暮らしを強いられている現状を、市長あるいは議員のみなさんはどう見られているのでしょうか。市長は「東日本大震災に伴う復興事情についても承知していますが、現市庁舎の抱える課題は本市にとっても喫緊の課題であり、事業を着実に進める必要があると考えています」と述べられましたが、この言葉を被災地でがんばっている方々に聞いてもらっても恥ずかしくはないでしょうか。
あらためて議員のみなさん、東京オリンピック・パラリンピック前の完成にこだわらず、今回の市庁舎再整備計画は白紙撤回し、市庁舎のあり方をあらためて市民討議に付して、再検討するべきではないでしょうか。位置条例は改正すべきではないと強く強く主張して、議員のみなさんへ反対を呼びかけます。
同様の主張で、請願第7号「市役所の位置の決定における慎重かつ十分な議会審議の実施等について」の不採択についても反対します。
なお、議員の賛否を明らかにするのは当然のことであるということで、請願第9号「市の事務所の位置に関する条例の一部改正議案における各議員の賛否の公表等について」は採択すべきだとあらためて主張します。
子ども・子育て支援新制度実施を機に保育水準を引き上げよ
次に、子ども子育て支援新制度関係の市第49号、50号、51号、52号、63号および72号の6件の議案についてであります。
国で実施が決まった子ども・子育て支援新制度を条例化するにあたって、「支援」と言いながら、現行基準より後退するなど数多くの問題があり、今回新たに法定化するにあたっての基準も上げるべき、そして、すべての子どもたちが等しく保育を受ける権利を保障すべきという立場から、今回の条例案では不十分であるということで反対します。
この間、日本共産党議員団は不適切な保育運営費の使途について追求し続けてきましたが、保育運営費の使い方についても小規模園等で今回使途制限が事実上なくなることは大きな問題だと考えます。
現行基準より明らかに後退したものとして、4階以上の保育室に屋外階段を必置義務としないこととありますが、市長は「本市としても問題がないものと考えています」と答弁されました。今後、市内の4階以上の保育園が増えると、どんな事態になるでしょうか。
具体的にぜひ考えてみていただきたいと思います。保育士1人が抱えられる乳児はせいぜい3人です。しかし、3人抱えでは平行移動すら大変なのに、4階以上から垂直移動するというのは、あまりにも困難ではないでしょうか。煙に巻かれてしまうリスクは拡大します。こういうリスクを承知した上で、万が一ビル火災が起こった場合、許認可を出した市長の責任は非常に重いと指摘しておきます。
小規模園の保育士資格を有する保育者を3分の2で良しとした点についても、子どもの育ちに格差を持ち込むものであり、問題です。
今まで長年横浜の保育を支え、待機児童対策にも大きな役割を果たしてきた横浜保育室を、条例の中にも位置付けなかったことも大きな問題点です。今回の制度変更を機に、なぜ条例で位置付けなかったのでしょうか。新制度への移行を希望している所には手厚い移行支援を、移行を希望しない所についても市独自で条例で位置付けて、認可並みの公費助成を行うべきであります。今回の横浜保育室への処遇はあまりにも冷たい対応です。横浜の子どもたちが入る保育施設によって公費の扱いが違うというのは、税の公平性からみても理不尽です。
横浜市内の学童クラブは50年に及ぶ長い歴史の中で、子どもの権利を守り、子どもの遊びや生活や発達を保証してきました。現在、215か所で1万人近く子どもたちが放課後を過ごしています。今回、放課後事業健全育成事業が法制化されるのを機に、今までの水準を大幅に引き上げるべきで、それを保護者も強く望んでいます。
指導員の増員や処遇改善、保護者負担の軽減など、学童クラブから毎年毎年出され続けてきた要望に誠実に向き合って対応すべきです。また、各行政区に学童担当部署を置き、物件確保への公的援助など問題解決を進めるべきです。しかし、今回の条例化では、現状追認のレベルにとどまっており、全く不十分です。
今後、留守宅児童の受け皿として、学童クラブを積極的に増やすための支援ではなく、放課後キッズクラブの全校展開によって解消しようというのは誤りです。放課後キッズクラブは、5時までは全児童が対象であり、留守宅児童の生活の場の併用という位置付けです。市長は、キッズクラブと、放課後すぐに専用の生活の場となる学童クラブが同じ機能をもつと思っていらっしゃるのでしょうか。1校当たり5時以降に10人程度しかいない現状を見れば、キッズクラブが行う学童保育には何らかの問題があることは明らかであり、これでは小1の壁は解消しません。そのために、既存の学童クラブの分割移転支援にとどまらず、学童クラブが増えるような積極的な手立てを尽くすべきであります。キッズクラブについては、留守宅児童が安心して放課後を過ごせる生活の場として機能するような条件整備が必要です。
同様の趣旨で、請願第10号「子ども・子育て支援新制度の充実について」の不採択についても、反対します。
横浜市民の生活を破壊する消費税増税は撤回を
最後に、請願第8号「消費税増税撤回を求める意見書の提出方について」の不採択について、反対します。今年4月に消費税8%が強行された結果、市内経済の状況、市内商店街の状況を、議員のみなさんはどう感じていらっしゃるのでしょうか。今の経済の落ち込みは、個人消費でいえば過去20年の中で最大の下落幅にまで落ち込んでいます。国が決めたことだから地方が口を出すべきではないというのは、明確な誤りです。
消費税増税で不利益を被っているのは横浜市民であります。その横浜市民の付託を受けて活動している私たち議員は、横浜市民の生活を守る立場で主体的な行動をして、体を張って国の悪政の防波堤になるのが横浜市会議員ではないでしょうか。その立場で、あらためて横浜市民の生活を破壊する消費税増税の撤回を求める意見書を提出するべきであると主張して、討論を終えます。