◎質問と答弁は次の通りです。なお、実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように対応する質疑と答弁を交互に記載しました。
白井議員:日本共産党を代表して質問します。
子育て支援に全力ならば小児医療費助成の年齢引き上げを
まず、子育て支援の意義についてです。
子どもの医療費が無料になる小児医療費助成制度は、対象が小学校1年生でとどまっており、2014年度も前進がありません。県内最低レベルです。市長は、まず横浜市内の子育て世代で貧困が深刻化していることを直視することです。子ども・子育て新制度に向けての横浜市の調査結果では、子育て世帯の年収は、500万円以上が68.7%を占める一方、300万円以下が9%みられます。5年前との比較では、400万円以下の世帯が増加し、700万円以上の世帯が減っています。政府の統計でも子育て世代では10年間に低賃金化が進んでいます。4月からの消費税増税が、子育て世帯を襲うことになり、格差拡大が懸念されます。各世帯の子育てに伴う経済的負担を本市として支援して軽減することの意義がますます重要となっていますが、市長の認識を伺います。
2014年度の他都市状況をみると、横須賀市が小児医療費助成の拡大を市の最重点施策にあげ、対象年齢を1歳引き上げて小3までとし、4年計画で小6まで引き上げます。若い世代の転出抑制、ひいては転入を呼び込むとしています。逗子市も対象年齢を2歳引き上げて小3まで、また相模原市は対象年齢が小3までとなっており、新年度から所得制限を緩めます。県内19市のうち対象年齢が小1までにとどまっているのは横浜市と川崎市ですが、川崎市は所得制限の基準が横浜市より緩やかで、新年度、制度拡充に向けての準備を進めます。
市長は、子育て支援に全力をあげるとしていますが、国の成長戦略に位置付けられた保育所待機児童解消に特化しています。総合的な支援が必要です。子ども・子育て施策等の充実は、若い世代を横浜にとどまらせ、引き寄せます。横浜を活気付けます。小児医療費助成制度は、対象者が多い点では効果が期待できます。県内最低水準でよしとされているのでしょうか。対象年齢引き上げに向けての市長の決意を伺います。
林市長:白井議員のご質問にお答え申し上げます。
小児医療費助成について、ご質問いただきました。
子育てに伴う経済的負担の軽減の意義についてですが、少子化が進む中、子どもを産み育てやすい環境づくりを進めていくことは、重要なテーマであると考えています。小児医療費助成制度は、子育て世帯の方々の経済的負担の緩和とそのお子様たちの健やかな育成を図るための大切な施策のひとつとして認識しています。
年ごとの助成の水準についてですが、切れ目のない子育て支援の充実として、26年度予算案では保育所待機児解消の継続、放課後児童育成推進など多岐にわたって計上しています。
小児医療費助成制度については、各自治体がそれぞれの考えに基づき制度を運営しているため、内容に差が生じていますが、本市としても今後とも努力していきますが、本来は国の制度として子どもの医療費助成の充実に向けた環境整備などが必要だと考えます。
就学援助に対する生保基準の切り下げの影響を避けよ
白井議員:家庭の経済的理由により、小中学校で学用品費、就学旅行費、給食費などの援助が受けられる就学援助制度は、これまで経年で認定者数と援助率が増えています。2011年度は約3万8000人で14.1%、2012年度は約4万100人で15%です。2013年度は4万376人の見込みです。しかし、2014年度は3万9987人の見込みで、前年度比1%減です。認定者数の減は、所得限度額を生活保護基準切り下げにあわせて引き下げた結果です。
もともと生保基準を切り下げた国は、他の制度へ影響が及ばないよう対応を地方に求めていました。本市も、国の考えを受け、本市で実施している事業においても、原則としてできる限り影響が及ばないよう対応することを基本的考え方とし、その趣旨を盛り込んで関係局に要請を出しています。
教育委員会の就学援助の認定基準は、小学生の子ども2人の4人世帯の場合、2013年度の所得限度額は358万円ですが、新たな認定基準で1年目の2014年度は14万円下げて344万円に、2年目の2015年度は11万円下げて333万円に、そして3年目の2016年度は11万円下げて322万円にする見込みとしています。この方向では相当数の認定外が出ることは必至です。
本市の所得限度額は政令市平均よりも緩やかではありますが、市長部局から依頼があったのですから、引き下げるべきではありません。市長部局や国の意向を無視した理由を教育長に伺います。
岡田教育長:子育て支援の意義について、ご質問いただきました。
就学援助についての国の依頼に対する対応ですが、生活保護の対象ではなくなった要保護者の方は、国の通知に従って引き続き対象としてまいります。準要保護者の方につきましては、国の通知では各市町村が判断するとされております。本市の就学援助は本市の生活保護基準に準じる制度であるため、要保護者の準基準見直しに伴い、同様に認定基準の見直しを行います。以上、ご答弁申し上げました。
(第2質問)
白井議員:貧困が深刻化する子育て世代の経済的支援は重要です。就学援助について市長に伺います。
市長部局から教育委員会に、生活保護基準引き下げ前と同様の扱いとなるよう必要な対応をお願いしますと依頼したにも関わらず、教育委員会は対応していません。こんなやり方を市長は容認されたのでしょうか伺って、質問を終わります。
林市長:ただいまの白井議員のご質問にお答え申し上げます。
就学援助についての国の依頼に対する教育委員会の対応についてですが、生活保護の対象でなくなった方が引き続き制度の対象になることや、就学援助の本市の所得基準額が全国20政令指定都市の平均を上回る水準であることからも、適当と考えます。以上、ご答弁申し上げました。
中学校給食をやらないのは学校給食法の否定
白井議員:次に、中学校給食についてです。
横浜市は中学校で給食を実施していません。これまで教育委員会では、「中学校期になると、体格・食事量など個人差が大きくなり、給食などの画一的な献立よりも、子どもたちの体調や栄養バランスを考慮した個々に応じた昼食の方が望ましい」として家庭弁当を基本としていますが、学校給食法では、成長期にある児童・生徒の心身の健康の保持増進と体位の向上を図ることや、正しい食事のあり方と望ましい食習慣を育成することを目標にかかげ、学校の設置者である地方公共団体は学校給食の達成に努めることが定められています。
中学校給食実施に踏み切った大阪市は、その法に基づき、その目的を、生徒に必要な食事摂取基準や栄養バランス、安全面や衛生面にも十分配慮した学校給食を提供し、心身の成長著しい時期をサポートするためとしています。また、実施を決めた川崎市でも、その理由は、育ちざかりの生徒にとって栄養バランスがあり、安全・安心で温かい食事をとることができるというものです。本市の教育委員会の言い分と全く逆です。
教育委員会が、個人差が大きい中学生には家庭弁当がいいとしていることは、学校給食法を否定したものです。市長の認識を伺います。
また、教育委員会は、「食事を生徒自らが管理する能力を育てることも重要であり、弁当昼食は食育の観点からも意義がある」とされていますが、本当に家庭弁当で自己管理能力を育てようとするならば、家庭弁当の栄養バランスを調査し、保護者や生徒に弁当を作るにあたっての指導を頻繁にすることが必要ですが、これまで行われたことがありません。
食育基本法では、学校で給食を通して食育を推進すると明記してあります。
川崎市は、完全給食提供により、さらなる食育の充実が図られると断言されています。全校で実施した相模原市は、望ましい食習慣の育成や食育を推進するための教育の一環としての給食を進めていきますとの考えを示しています。
本市が、弁当昼食は食育の観点からも意義があるとしていることは、食育基本法をもないがしろにしたものと言えます。市長の認識を伺います。
林市長:中学校給食について、ご質問いただきました。
給食が不要と考えているのかとのことですが、中学校昼食については家庭弁当にもよさがあるとの考えをご答弁申し上げたものでして、学校給食法を否定するものではありません。
食育基本法に対する考え方ですが、教育委員会では家庭科や総合的な学習の時間などを使って、また市内のプロスポーツ団体、食に関する企業等や地域の協力を得て、各学校でさまざまな食育に取り組み、生徒の自己管理能力の育成等食育基本法の主旨に則した授業を実施していると聞いています。
グローバル人材育成よりも35人学級の実施を
白井議員:最後に、教育予算の重点についてです。
2014年度教育委員会重点施策・事業のトップに、これまでと違って、「国際都市横浜の時代を担うグローバル人材の育成」があげられています。また、横浜サイエンスフロンティア高校の中高一貫校化の検討、中高一貫の南高校のスーパーグローバルハイスクールの指定を目指した準備が始まります。
安倍首相は施政方針演説で、若者を伸ばす教育再生として英語教育の強化、海外留学の倍増、TOEFLを大学卒業要件化などで、グローバル人材育成を強調されました。安倍首相肝入りの政府の「教育再生実行会議」の第3次提言では、英語教育の抜本的拡充やグローバルリーダーを育成するスーパーグローバルハイスクール指定などが盛り込まれています。この方向は、大企業の国際競争力強化に貢献できる人材づくりであることは明白です。横浜市は、この路線を全国に先駆けて実行しようとしていると言わざるをえません。
グローバルに展開する多国籍企業が求める人材を育てることが、公教育の第一の目標でしょうか。国に従って、できる子だけを伸ばすことは、公教育と地方自治の否定にもなるものです。市長の認識を伺います。
国は5か年計画で35人学級実施を進めてきましたが、安倍政権でストップさせ、小学校1年生と2年生にとどまっています。来年度は子どもの自然減以上に教員を減らし、35人学級の前進はありません。横浜市として、子どもと向き合う時間の確保や、きめ細かな教育を推進するとしていますが、これまで教育委員会は、財政負担を理由に、市独自予算での少人数学級のための教員配置はありません。
2014年度、政令市において独自予算で実施するのは、相模原市は中3でモデル実施をはじめます。浜松市は、小1に加えて小2で30人学級の導入予定です。新潟市は、新たに小4・小5・中1で35人以下学級を予定しています。名古屋市より東の11政令市で小1・2の国基準でとどまっているのは、本市と川崎市の2市のみです。
日本の1クラスの平均人数は、小学校28人、中学校33人ですが、デンマーク、フィンランドは20人です。先進国では少人数学級が常識です。
市内の英語の教員から、「英語を身につけさせたいけど、今の40人学級では多すぎて無理だということが共通認識になっている」と聞いています。
公教育で何よりも重視すべきは、エリート教育ではなく、子どもたち全体の学力の底上げです。手をつないで全体を良くしていこうという意識を育むことです。35人学級は学力向上にも望ましい人間関係づくりにもなります。本市独自で小3まで拡大した場合は、教員必要数は95人で、その人件費は5億9000万円です。本市の予算規模からみて、できない金額ではありません。教育予算の重点に位置づけて、他都市並みに拡大を求めます。見解を伺って、1回目の質問を終わります。
林市長:教育予算の重点について、ご質問いただきました。
グローバル人材の育成が公教育の否定につながるのではないかとのことですが、未来を担う子どもたちが日本の文化を深く理解し、各国の文化を尊重しながら、日本語のみならず、国際共通語としての英語で、自らの考えをしっかり述べることができる人材に成長してほしいと考えます。今後も、国際都市横浜の子どもたちがグロ―バル化が進展する社会のなかで活躍できるようになっていくことが望ましいと考えています。
35人以下学級について、ご質問いただきました。
本市独自予算での35人以下学級実現についての見解ですが、県費負担教職員については県が基準を定め、予算措置すべきと考え、定数の改善を国・県へ要望しています。本市独自での35人以下学級の実現については、人件費の財源確保、人材の確保などの点からさまざまな課題があります。
残りの質問については、教育長より答弁させていただきます。