◎実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように対応する質疑と答弁を交互に記載しました。
市職員の退職手当の引き下げはやめよ
岩崎議員:日本共産党を代表して、市長に質問いたします。
はじめに、市第5号議案「横浜市退職手当条例等の一部改正」について伺います。
「国家公務員の退職手当の支給水準との均衡を図るため」として、本市職員の退職手当を大幅に削減する議案であります。
一般職員の退職金は、現状で一人当たりの額は平均2709万円。これが改正で2280万円となり、実に平均額で約430万円、率で約16%もの大幅削減になります。職員の退職後の生活設計に変更を強いるものです。
安倍政権がデフレ脱却のために賃上げが必要と認めるようになっているもとでの、退職手当の大幅削減は、時代の流れに逆行します。また、退職金の大幅な削減は、職員の仕事に対する意欲を失わせる要因ともなり、市長が言われる「オールよこはまで、職員が力を発揮する」との考え方にも反します。
市長は、市内経済の活性化対策や地方自治の精神等の見地から主体的に判断し、退職金の引き下げ案の撤回を求めます。市長の見解を伺います。
林市長:岩崎議員のご質問にお答え申し上げます。
市第5号議案についてご質問いただきました。退職手当見直しの考え方についてですが、人事院が民間企業の退職給付額の調査を行った結果を受け、国は官民の均衡を図るため、国家公務員の引き下げを行いました。そこで、本市においてもこれまでと同様、国に準じて退職手当制度を見直し、民間との均衡を図りたいと考えています。
南本牧ふ頭の一部を国に売却して横浜港の一体的管理は保てるのか
岩崎議員:次に、市第23号議案「中区南本牧所在市有土地の処分」について伺います。
今回の市有土地処分と第1回市会定例会での処分によって、MC-3・ターミナル機能が国の所有になります。それによってMC-3が、「市が管理する港」から「国が管理する港」に位置づけ・性格が変わるのではないかと危惧します。
そこで、次の二点について伺います。
一つは、「横浜港を一体的に管理する本市の港湾管理者としての権限」は、極めて重要であると考えます。当局は、この権限は将来にわたって担保できると説明しますが、その法的根拠を伺います。
一つは、ピースメッセンジャー都市・横浜の商業港が、国の政策・都合で軍事的利用される心配があります。横浜港は平和な商業港であり続ける必要があります。それを担保する法的根拠、及び市長自身の決意を併せて伺います。
林市長:市第23号議案についてご質問いただきました。本市が横浜港を一体管理する権限を堅持できる法的根拠ですが、南本牧MC―3コンテナターミナルの用地は港湾法に基づき、特例港湾運営会社である横浜港ふ頭株式会社へ国が貸し付けることを前提に、売却します。仮に会社へ貸し付けない場合は、港湾管理者である本市へ貸付または管理を委託することになっており、国が直接施設を管理運営することはありません。また、本市は、会社に対して監督権限を有しており、港湾管理者としての地位も変更ありません。
MC―3コンテナターミナルの土地を国が保有することに伴う平和な商業港を担保する法的根拠についてですが、横浜港では従来よりコンテナターミナルをはじめ、多くの大型船用の岸壁は国有施設となっています。これらの施設は国から本市が管理を受託するか、横浜港ふ頭株式会社が借り受けて運営してきています。今回の土地売却は、法改正により国直轄事業の範囲が背後用地の整備にも拡大されたことに伴うものであり、施設運営の仕組みに変更はありません。
公共工事の労務単価引き下げが本市工事に着実に反映されるように
岩崎議員:次に、市第27号議案及び市第28号議案「南本牧ふ頭第5ブロック廃棄物最終処分場建設工事・請負契約の締結」について伺います。
この度、国から「公共工事における労務単価の引き上げ」が示されました。そのこと自体が画期的なことだと思います。そこで、重要なのは、労務単価引き上げ措置が、現場の技能者、職人等の賃金引上げとして確実に反映させることです。
不況が続くもとで、公共工事は、低入札・ダンピング受注などによる過度な業者間競争等によって、建設現場で働く技能者、職人等の賃金が長期に低く抑えられてきました。
3・11以後、復興特需ともいうべき状況が生まれ、被災地域における人手確保等により、結果的に建設労働者の賃金が上昇しているといわれています。しかし、この状況は一時的であり、安定的な賃金上昇の保証となるものではありません。根本的には、賃金水準を恒久的・安定的に保証できるように、国でおいては「公契約法」、本市では「公契約条例」や「入札制度の改善」等の制度の確立が必要となります。
そこで伺います。
まず、国交省文書の指示した内容が、本議案の契約金額に反映されているのかどうか。また、反映していない場合、本市の対応方針は何か伺います。
さらに、公共工事に従事するすべての労働者に対して、今回の措置が確実に適用されることを担保する本市の措置は何か伺います。
林市長:市第27号議案および第28号議案についてご質問いただきました。新年度、単価を適用する特例措置についてですが、今回の2件の工事も特例措置の対象となりますので、本市会で議決をいただき、契約が成立した後、金額変更の協議を行います。その結果、契約金額の変更が必要となった場合には改めて議案を提出させていただきます。
賃金アップに取り組むべきとのことですが、本市の公共事業では4月1日以降の新年度契約には大幅に上昇した労務単価を適用することにしました。このため、技能労働者の賃金についても適切な水準が確保される環境が整うと考えております。
南本牧ふ頭への2本目の道路・橋は本当に必要か
岩崎議員:次に、第29号議案及び第32号議案 「南本牧ふ頭連絡臨港道路の整備に係る工事委託契約等」について伺います。
まず、横浜港のコンテナ取扱量の現状と今後の動向に関する二つの事実を紹介します。
ひとつは、MC-1、MC-2でコンテナの輸送業務をしている会社からの聞き取りです。
社長の話によれば、「コンテナの量が減り続けているために、大型トレーラー1台あたりの売り上げ、これは仕事量になります、1年前と比べ1500万円から1200万円に、約2割減っている。」「アジアの物流動向、日本の経済状況、人口減少が始まっていることなどを見ると、今後、横浜港の取扱量が減り続けるのではと心配している。」と言うものです。
ひとつは、当局の説明です。横浜港全体のコンテナ取扱量の推移は、5年前348万TEUから昨年度は305万TEUへと43万減っています。その内、南本牧ふ頭は108万TEUから83万TEUへ25万の減となっています。横浜港全体でも、また南本牧でもコンテナ取扱量が減少傾向にあることは明らかです。
以上、示した二つの事実は、今後、横浜港においてコンテナ取扱量を増加させるのは容易なことではないということのメッセージだと思います。
そこで、市長に伺います。
本市は、横浜港全体のコンテナ取扱量の今後の見通しを、H20年代後半までに414万TEUと推定していますが、その根拠を具体的にお示しください。
次に、「南本牧ふ頭連絡臨港道路整備事業」について伺います。本事業は、総額520億円もの巨額な費用を必要とする大型公共事業です。ところが、この事業は南本牧ふ頭整備の当初計画には存在せず、最近になって出てきた追加工事です。
当局資料によれば、連絡臨港道路整備の目的は、1つ、首都高と連絡することで国際競争力の強化を図る。2つ、南本牧大橋ルートに加えて、もう一つルートを整備し交通の安定性確保を図る。3つ、産業道路のコンテナ車両による環境負荷の軽減を図るとしています。しかし、520億円もの巨費を投じる巨大開発の整備理由としては、あまりにも説得力に欠けます。
そこで伺います。
当初計画にこの道路整備計画がなかったのは、不可欠の道路ではないからです。このような大規模な事業を、後で理由をつけて追加するなどありえません。市長は、連絡臨港道路整備事業の妥当性をどのように認識されているか伺います。
今後、コンテナ取扱量の飛躍的増加は容易でないことや本市の厳しい財政状況等に照らして、2本目となる連絡臨港道路整備が、本市にとって真に必要な事業なのか。現時点で一度立ち止まって真摯に検証すべきであると考えます。市長の認識を伺います。
林市長:市第29号議案および市第32号議案についてご質問いただきました。コンテナ貨物取扱量の将来見通しの根拠ですが、将来貨物取扱量は日本や貿易相手国のGDP、人口などの社会指標との相関や実績により推計しております。
南本牧ふ頭に通じる2本目の臨港道路を整備することについての妥当性ですが、26年共用開始予定のMC―3コンテナターミナル、今年度着工するMC―4コンテナターミナルや物流関連施設の集積による今後の交通量の増加に対応するため、南本牧ふ頭連絡臨港道路の整備を行っています。
また、この道路は、首都高速湾岸線と直接接続するものでありまして、これにより背後県とのアクセスが大幅に上昇するとともに、防災機能強化にも寄与いたします。南本牧ふ頭連絡臨港道路整備事業が真に必要なものか検証すべきとのことですが、国際コンテナ戦略港湾である横浜港に貨物を集中させていくことが本市の責務です。主力ふ頭である南本牧ふ頭においては、集荷策の拡充や物流の効率化など国際競争力強化を図るとともに、今後の交通量の増加に対応する上でも、南本牧ふ頭連絡臨港道路の整備は欠くことのできない事業です。
保育士の処遇改善事業を確実に賃金引き上げにつなげよ
岩崎議員:最後に、第33号議案にある「 保育士等処遇改善臨時特例事業」について伺います。
保育士の処遇の現状は、勤続8年の保育士の給与が月22万円との事例も聞いていて、処遇改善は喫緊の課題であると認識しています。臨時特例事業は1年限りであり、処遇改善にとってカンフル剤の域を出ないものであり、恒久的な措置が求められます。とはいえ、今回の措置は処遇改善に資することも事実です。この事業実施に当たって大事なことは、「保育士の賃金引き上げに確実につなげること」にあります。
当局の説明では、その担保として保育所に対して改善計画の作成や実績報告を求めるとしていますが、それだけでは全く不十分です。例えば、派遣型保育士の場合は、事業費は保育園から保育士本人でなく派遣会社に支払われるために、検証が困難であります。その他、雇用形態ごとに、同様の懸念があります。
そこで、「保育士等の処遇改善=つまり賃金引上げの結果を出すこと」及び「処遇改善事業の恒久化」の視点から、二つのことを提案したいと思います。
一つ、処遇改善措置が実施されることを、対象者である保育士等にほとんど伝わっていないのが実態であることをふまえ、処遇改善事業が実施されることを、対象者となる全ての保育士等に周知する措置をとることです。「チラシを作成して全対象者に配布する」、または「ポスターを作成して全ての認可保育園に掲示する」など、広く周知することを提案します。市長の見解を伺います。
一つは、本事業は臨時特例措置で、実施期間は1年限りです。1年限りでは処遇問題は解決しません。恒久的な仕組みが必要です。本市は、国に事業の継続を求めるとともに、独自に手立てを講じることを求めます。市長の見解を伺います。
最後に、処遇改善の措置を認可保育園の保育士等だけにとどめず、横浜保育室の保育士、放課後学童クラブの指導員等についても、本市独自に処遇改善を図る措置を求めます。市長の見解を伺い、以上で、議案関連質問とします。
林市長:市第33号議案についてご質問いただきました。事業の内容をチラシの配布などにより周知すべきとのことですが、本事業はそれぞれの運営事業者が処遇改善の実施等改善の方法を決定することになっています。そのため、民間保育所に対し、様々な機会を通じて事業の主旨を周知していくことが必要だと考えています。なお、本事業の助成は処遇改善計画書を作成し、その計画の内容を職員に周知を行うことが交付の条件となっています。
本事業を恒久的なものとすべきとのことですが、国におけるこの事業は単年度限りとなっています。しかし、安心子ども基金はこれまでも毎年延長されてきた経緯がありますので、今後も国の動向を見極めながら本市としても検討してまいります。
なお、平成27年4月以降、子ども子育て支援新制度の導入が予定されており、保育士の処遇改善を含めて検討されるものと考えています。
横浜保育室の保育士や放課後児童クラブ指導員処遇改善も図るべきとのことですが、本事業の対象は認可保育所に限定されていますので、対象となっておりません。横浜保育室については、平成27年4月以降に導入予定の子ども子育て支援新制度の中で認可保育所等への移行を進めることにより、新制度における保育士の処遇改善の検討の中に含まれるものと考えています。放課後児童クラブについては、すでに国の基準を上回る補助を行っており、現段階で処遇改善を行う予定はありませんが、国に対して補助金の充実を要望しているところでございます。
以上、岩崎議員のご質問にご答弁申し上げました