◎実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように対応する質疑と答弁を交互に記載しました。
間違い多い自由社版中学歴史教科書
古谷議員:私は、日本共産党を代表して、市政に関わる課題について順次質問いたします。
まずはじめに、現在、市内8区の市立中学校2年生3年生で使用されている歴史教科書の記述の間違いの是正についてです。わが団として、11月29日に教育長あてに、この問題と副読本「わかるヨコハマ」改定に関わる問題で強く抗議の申し入れを行いました。今日は、特に記述間違い問題に絞って質問いたします。
市内8区で使用されている歴史教科書は、自由社版です。同教科書は、多くの間違い及び不適切記述がかねてより指摘されています。例えば、縄文時代の集落の生活の想像図では、この時代ではありえない川沿いに集落があったり、広場に炉があったり、整然とした耕地など、現在の歴史の検証上ありえないものであります。また、南蛮貿易のころの「銀は金と同じかそれ以上の価値」という誤った説明などです。
2010年度に行われた新しい教科書の検定では、同社は、指摘された間違いや不適切な記述について、ほとんどの箇所を削除して申請しています。さらに、最終的に合格とした検定審議会でも、150か所の欠陥があるとして修正を求めていますが、その中には8区で使用されている教科書と同一の記述の部分も含まれています。
国の検定意見や修正表など客観的資料の作成・配布が有効
今、解決が迫られているのは、2010年度の検定にあたって自由社が自主的に修正し、国が欠陥として修正を求めた記述部分が、8区では使用中の教科書についてそのまま放置されている点です。
教科用図書検定規則では、誤記等発見した時には、発行者は大臣の承認の上、必要な訂正を行わなければならない、また、学習を進める上で支障となる記載等を発見した時は必要な訂正を行うことができると規定しています。また、文部科学大臣は「その訂正の申請を勧告できる」としています。しかし、自由社は音沙汰なし。国も全く動いていません。
国は、服部良一衆議院議員の質問主意書への答弁書で、検定で修正を求めた記述について、「その時点でおいて、適切に判断されたもの」とし、誤記とは認めようとはしていません。間違いのある教科書により正確な知識を知る権利を侵害されている状況について、「教科用図書として適切と判断され合格となったもの、各学校において合格図書を使用して指導が行われることについては問題ない」と、そのまま使用されることを容認しています。
自由社と国が是正措置をしないとしたら、子どもたちを救うのは、教科書等の取扱いに関して職務権限を有している市教委しかありません。しかし、これまでの市教委の対応もひどいものであります。間違いの修正は教科書会社と国の領域であり、市は関与ができないという主張を述べ、それを理由に「自由社に訂正を求める」請願を不採択としています。
見かねた神奈川県教育委員会は、本年6月に発行者に訂正申請の勧告ができる文科省に対して、その権限行使を求める要望書を提出しています。それに引き替え、市教委の対応はあまりにも子どもたちに対して無責任。子どものことを第一と考えるのであれば、裁量でできることはいくらでもあります。
そこで、まず教育長に伺います。現行教科書の使用をそのまま継続すれば、誤った知識を子どもたちに植え付けることとなるが、それを回避する手立てとして、新旧対比表や国の検定意見や自由社の修正表など客観的資料の作成・配布が有効と思いますがどうか、伺います。
教育委員長に伺います。委員長は教育委員会を代表しています。自由社教科書の採択を主導されています。「教育委員会の権限と責任において公正適正に採択した」というのであれば、自由社に対して、以前写真の裏焼の訂正版を配布したことや年表の盗作の詫び状の送付したことと同様の対応をとるように要望していただきたい。また、国に対しても、県教育委員長にならい、是正勧告するよう要望することが、最低限の責任ある態度と思いますが、教育委員長に伺います。
市長に伺います。このままでは、あやまった知識のまま3年生が卒業してしまいます。市教育委員会が自主的に解決できないとしたら、市長の出番です。教育委員の任命権者として教育委員会に対して、子どもたちが正確な知識を知る権利を擁護するために最善の努力をするように強くアピールしていただきたいと思いますが、その決意を伺います。
教育委員長「市教委が関与すべきものではない」
今田忠彦教育委員会委員長:市立中学校で使用する教科書について、ご質問をいただきました。
発行者への訂正依頼等についてですが、自由社の教科書にかぎらず、一般的に検定を経た教科書に誤記等があった場合は、発行者が文部科学大臣の承認を得て、必要な訂正を行う仕組みとなっており、これらの手続きは検定を行う文部科学省と発行者との問題であります。写真の訂正や詫び状の送付についても発行者が自主的に行ったものであり、教育委員会が関与したものではなく、また、制度上関与するべきものではないと考えております。
国に対する是正勧告の要望についてですが、ただいま申し上げましたように、本市教育委員会として必要性がないものと考えておりますので、国への要望は考えておりません。
山田巧教育長:市立中学校で使用する教科書について、ご質問をいただきました。
歴史教科書の訂正等についてでございますが、先ほど教育委員長からもご答弁いただきましたように、検定を経た教科書に誤記等があった場合は、発行者が文部科学大臣の承認を得て、必要な訂正を行う仕組みとなっており、これらの手続きは検定を行う文部科学省と発行者との問題でございます。従って、教育委員会が関与するものではないというふうに考えております。
林文子市長:古谷議員のご質問にお答え申し上げます。市立学校で使用する教科書について、ご質問いただきました。
教科書の取り扱いについては、法令で教育委員会の職務権限とされており、教育委員会において適切に対応していると考えております。
再生可能エネルギーの普及をもっと積極的に進めよ
古谷議員:続いて、再生可能エネルギーの普及についてです。昨年の福島原発事故を受けて、団での視察で伺った福岡市では、福島原発事故は原子力等に過度に依拠するリスクを顕在化させたとして、再生可能エネルギーを効率的に利用する自律分散型エネルギー社会の実現を目指すことが時代の流れだとの認識に立って、原発に代わるエネルギーをどう確保するのか、真剣に検討が進めてられています。
横浜市も、「地球温暖化対策実行計画」の前文にもあるように「エネルギーの自立化・分散化」を推進すると書かれています。昨年の福島原発事故を受けて、自然エネルギーの普及についての課題を、市長はどう認識して進めようとしているのか、伺います。
また現在、政府によって再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度について、福岡などでは再生可能エネルギーの普及の機会と捉えて、市独自の遊休地にメガソーラー事業の展開をするなど積極的な施策を展開していますが、本市でもこの機会を積極的にとらえる必要があると思いますがいかがでしょうか、伺います。
2011年度に策定した「地球温暖化対策実行計画」には、公共が率先して再生可能エネルギーの導入事業に取り組み、2020年度までの中期目標として、例えば太陽光発電の普及では戸建の50%、集合住宅の30%に太陽光パネルを設置する等の目標を定めています。しかし、本市の現状の到達は、昨年度末で戸建で2.4%、集合住宅で0.2%と極めて低い到達です。これでは到底目標には到達しないのではないでしょうか。市長の本気度が疑われます。どう目標を達成しようとしているのか、伺います。
この実行計画を本市で進めていくには、計画推進に責任を持つ温暖化対策統括本部が文字通り「統括」することが大事だと思います。環境創造局にも再生可能エネルギーの普及や省エネルギーの促進などを進める環境エネルギー課があります。こういった部門も温暖化対策統括本部に統合したり、市長が温暖化対策本部長に着任するぐらい思い切ったことを行うことで、企業や市民のみなさんとも一緒になってこの計画、前に進めていただくことを提案しますが、市長の決意を伺います。
ハマウィングが固定価格買取制度対象に、消化ガス、バイオガス発電も申請中
林文子市長:再生可能エネルギーについて、ご質問いただきました。
まず、原発事故を踏まえた再生可能エネルギーの普及に対する課題認識と今後の進め方ですが、震災後のエネルギーに関する市民意識の高まりを捉え、再生可能エネルギーの普及を加速化させることは、大変重要であると認識しています。今後よりいっそう節電・省エネルギー対策に取り組むとともに、将来の再生可能エネルギーの導入目標など、国の政策の動向も注視しながら、市としての取り組みを積極的に推進していきます。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度の活用につきましては、本市の再生可能エネルギーによる創エネ施策を進める上で有効と考えておりまして、積極的に活用しています。具体的には、風力発電のハマウィングが11月から固定価格買取制度の対象設備となりました。そのほか、下水道センターの消化ガス発電、ごみ焼却工場のバイオガス発電、浄水場の小水力発電などについて、設備認定の申請を行っています。
今後につきましては、事業採算性や事業手法などを考慮しながら、可能な施設で活用の検討を進めていきます。
温暖化対策実行計画に掲げた目標をどのように達成するかについてですが、震災以降、住宅用太陽光発電システムの導入は国の固定価格買取制度ともあいまって、今年度は4000件の補助目標に対し、11月末現在で受付件数が3200件を超えるなど、目標を上回る勢いで導入が進んでいます。また、新築の戸建住宅に太陽光発電システムを標準装備するハウスメーカーも出始めるなど、太陽光導入に拍車がかかる動きもあります。これらの動向を的確にとらえ、実行計画の進捗管理を行うとともに、市民のみなさまへの普及啓発に努め、目標達成に向けて積極的に取り組んでいきます。
再生可能エネルギーの導入促進に向けて思い切った取り組みが必要とのことですが、温暖化対策統括本部は再生可能エネルギーの導入をはじめ温暖化対策の推進に対して、全区局と統括することを目的とし、全国で初めて設置しました。統括本部が中心となり、本市のあらゆる事業に温暖化対策を取り入れるため、全区局長からなる温暖化対策連絡会議を設け、施策を推進しています。今後とも、低炭素社会とグリーン成長の実現に向け、私が先頭に立ち、強い決意を持って取り組んでいきます。
高速道路建設やめて橋やトンネルの維持管理に金をまわせ
古谷議員:続いて、道路予算の使い方の転換の問題です。中央自動車道の笹子トンネルの痛ましい事故がありました。報道などによりますと、中日本高速は、第二東名を新設する予算、捻出するために、道路維持管理費が犠牲になったともいわれています。つまり、道路利用者の安全よりも新設道路を優先させた結果だとも言えます。
横浜市内の道路やトンネル・橋などについても、維持・管理にはこれから莫大な費用がかかります。例えば橋だけでも今後50年間で約3700億円、年間でいうと約74億円の予算が毎年毎年の維持管理費として必要だと道路局長も9月の決算特別委員会で答弁されています。こんな中で新たな高速道路を作っている場合ではなく、市内道路等の維持・管理にこそ、しっかりお金をかけるべきです。新設の北西線などは直ちに中止してそのお金も回すべきであります。それが、今回の笹子トンネル事故の教訓だと思いますが、市長の考え、伺います。
東京オリンピックの時代につくられた首都高速横羽線も、新聞などでも危険性が指摘され、トンネルだけではなく橋脚などの老朽化も大変大きな問題です。市民の命と安全を守る責務を負っている市長として、首都高速道路公団に対して、至急点検及び必要な対策を行うように強く求めていただきたいと思いますが、市長の考え、伺います。
市長「高速道路整備も道路の維持管理も必要不可欠」
林文子市長:道路の維持について、ご質問いただきました。
高速道路を新設するのではなく、その費用を維持管理費に充てるべきとのことですが、横浜環状道路をはじめとする高速道路は、市内の交通渋滞の解消や広域的な交通の円滑化を図るとともに、震災対策としても重要な役割を果たすなど、本市の成長を支える基盤として必要なものです。また、道路の維持管理につきましても、厳しい予算状況のなかではありますが、維持管理費を確保し、日常点検による修繕や橋梁の長寿命化対策などを実施しています。高速道路整備も道路の維持管理も、ともに市民生活の安全安心の確保や横浜経済の活性化に必要不可欠でございますので、引き続きしっかり取り組んでまいります。
首都高速道路株式会社に橋脚等の点検や修繕を求めるべきとのことですが、首都高速道路は高速道路会社が利用者の安全確保に向け、責任を持って維持管理を行っています。さらに、大規模更新のあり方についても委員会を設立し、検討を行っているところです。本市としては、市民生活にとって重要な路線ですので、今後とも高速道路会社との連携調整を密にするとともに、必要な場合には維持管理について申し入れなどを行っていきます。
旧鶴見工業高校グランドを地元に開放せよ
古谷議員:最後に、本市の鶴見工業高校の跡地活用について伺います。
校舎側に予定されております特別養護老人ホームの建設について、当初の計画では、2013年度には計画の「目鼻をつける」という話でしたが、現在のところ校舎を封鎖しているだけで何も進んでおりません。鶴見では特別養護老人ホームが少なく、地元では切望され、建設を今か今かと待っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。その特養の計画の進捗について伺います。
また、この鶴見工業高校の跡地活用では、グラウンド・体育館側の活用について、体育館の一部を民間保育園の改修代替地として無償で貸与すると聞いています。現在グラウンド部分は、何も活用されていない状態です。この間、地元町内会からは地元住民にも解放してほしいとの要望が出されています。体育館はこども青少年局を介して民間保育園に貸しているのであれば、跡地活用が本格化するまでの間、区役所を介して地元住民にもグランドを開放すべきと思いますが、その考えを伺って、質問を終えます。
林文子市長:鶴見工業高校の跡地利用について、ご質問いただきました。
現在の進捗状況ですが、道路をはさんで東西にある敷地毎に段階的に整備することにしています。東側敷地は、校舎の解体を含め特別養護老人ホーム等の整備に向けた準備を進めています。西側敷地では、具体的な土地利用計画的について地域のみなさまによるまちづくり協議会の組織化を働きかけ、防災まちづくりなど住宅密集地における住環境の改善や地域課題の解決も視野に入れて、検討を進めています。
グラウンドを貸すことについてですが、無人の施設であり、安全面、管理運営面の課題がありますので、局で検討を進めます。
残りの質問については、教育委員長および教育長よりご答弁させていただきます。以上、ご答弁申し上げました。