※実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように、対応する質疑と答弁を交互に記載しました。
白井議員:私は、日本共産党を代表して、3本の議案について質問いたします。
貧困ビジネスをNPO法人から排除する手立てを
まずはじめに、市第102号議案、特定非営利活動推進法施行条例の制定についてです。
市内のNPO法人の中には、生活保護受給者を居住させ保護費のほとんどを吸い上げる無料・低額宿泊所を運営している実態があり、社会的な批判が広がっています。鶴見区にあるNPO法人が運営する施設では、居住者の月13万円の保護費のうち11万9200円が請求され、本人の手元には1万円しか残らないのでこれでは生きていけないと、駆け込みの相談を同僚の議員が受けています。
弱い立場にある人の健康で文化的な最低限度の生活を支える生活保護が貧困ビジネスの食い物にされているのはゆゆしき事態です。
このような実態は放置できないとともに、NPO法人の発展にとってもよくありません。今回、所轄が市に移るのですから、こういった問題を打開する好機です。NPO法では暴力団関係者の関与するNPO法人の設立は認証できません。また、立ち入り調査や改善命令、法人設立認証の取り消しの監督権限の行使を規定しています。その行使にあたっては、自由な市民活動を促進することを目的とする法の趣旨からいうと、原則として抑制的であるべきです。しかし、必要があると判断する場合は行使することが制度自体の信頼性確保や問題解決につながるのも、事実です。
そこで、本市の行政長としての監督権限を行使するよう処分基準を定めるなど、悪質な法人の野放しを許さず、実効ある規制づくりのための手だてを講じるべきと考えますが、どうでしょうか。
また、日本弁護士連合会は2010年の6月、宿泊所問題で意見書を提出しています。社会福祉法は、一時的に住む施設として無料・低額宿泊所の開設を認めていますが、「入所者を何年も囲い込み、そこからの離脱を邪魔する悪質な宿泊所は違法だ」と指摘しています。
貧困ビジネスを防止するために、現行法での厳格な期制の実施を国に求めることも必要です。この点での市長の見解を伺います。
林市長:白井議員のご質問にお答え申し上げます。
市第102号議案について、ご質問いただきました。
貧困ビジネスを防止するための手立てを国に求めていくとともに、市としても手立てを検討すべきとのことですが、今回のNPO法の改正は、昨年6月に今後公共の担い手の主体の一つとしてNPO法人をより一層支援していこうとの趣旨で、議員立法により全会一致で改正されました。従って、本市としてもNPO法人支援の観点から、今後とも適正に事務を進めるとともに、所轄長として実務上の課題等について国に伝えていきます。
大企業への税金ばらまき的な企業立地条例は廃止すべき
白井議員:次に、市第107号議案は企業立地促進条例の一部改定です。
2011年1月、認定企業に対し助成金や税の軽減をどう評価したかを問うアンケート調査が実施されました。「横浜市への立地を決定した決め手は何ですか」の設問に複数の選択肢の中から3つまで回答を求めたところ、49社のうち「行政の支援」と答えた企業はわずか10%にとどまりました。アクセスの良さが20%、従業員の通勤と人材確保のし易さがそれぞれ12%です。このアンケート調査結果は、条例による助成金や税の軽減という行政支援は企業にとって立地の決め手になっていないことが、リアルに現れたものだと思います。
国で定めた企業立地促進法の概要を説明したパンフレットには、「企業は立地補助金や税よりも、人材育成や技術開発支援など長期的な行政サービスを求めている」とされています。
財団法人日本機械工業連合会の2007年の調査結果では、「補助金の大型化が即座に誘致企業の増加に結びつくことはなく、補助金の多い少ないよりもむしろ操業後のメリットを詳細に検討したうえで、立地地域の選定をしていることが明らかとなった」としています。また、財団法人日本立地センターの国内外資系企業への調査では、事業拠点選定の理由は「マーケットであるから」が71%で圧倒的に高いとなっており、「地方公共団体が熱心だから」は4%です。いくら熱心に助成しても決め手にはならないということです。
条例の期限が切れるにあたっては、こうした声や本市が行ったアンケート調査の結果を踏まえて、今後の方向を検討することが必要でした。しかし、経済局では1回目のアンケート調査結果が意図せぬものだったということを不都合として、違う結果を期待して設問を変えて2回目を実施しました。
こうしたやり方はあまりにも常軌を逸した姑息なやり方です。市長の見解を伺います。
多国籍企業の誘致へ向けた助成が新設されます。国内の多国籍企業も対象です。日本の大企業の大半は、国外に複数の現地法人を有する多国籍企業です。多国籍企業については投下資本への助成は15%であり、多国籍化している大企業にとっては今まで以上に大幅なお手盛りとなります。資本投下するということはそれなりの体力があるわけですから、体力ある企業へより支援することは、費用対効果から見ても不必要です。大企業を利する点があまりにも行き過ぎと思いますが、どうか伺います。
1回目のアンケート調査結果や研究機関の調査結果で明らかなように、立地企業は口をそろえてお金で立地するわけではないと言っているのですから、本市の財政状況が厳しい折から、この際、体力のある大企業へのばらまき的なこの立地条例は廃止すべきと考えますが、市長の見解を伺います。
林市長:市第107号議案について、ご質問いただきました。
ヒアリング結果の取り扱いについてですが、昨年1月に実施したアンケートは設問内容や選択枝に不明確なものがありました。そこで企業の意向を正確に把握するため、質問内容を明確にして本年1月から2月にかけて再調査を実施いたしました。
多国籍企業である大企業に対する助成についてですが、グローバル経済の進展に対応し、成長著しいアジアの新興国等で幅広く企業活動を展開する国内大企業の本社機能を誘致することは、今後の横浜経済の活性化を図る上で大きな効果があると考えています。
企業が求めているのは企業目線での行政サービスであるというご意見についてですが、本市では立地場所の情報提供、人材の確保や、企業間の連携支援など、様々な企業ニーズに対応したサービスを提供しています。しかし、経営環境が厳しい中、企業が移転を決断する上でコストに対する関心は高く、条例による助成金交付や税軽減は立地促進に大きな効果があると考えています。
30年前の計画ありきの高速横浜環状北西線の整備は中止を
白井議員:続いて、市第129号議案は首都高速道路株式会社が高速横浜環状北西線を整備することに本市が同意するものです。
北西線の原計画である高速横浜環状道路計画が「よこはま21世紀プラン」という本市の総合計画に盛り込まれたのは1981年、今から30年前です。この間、社会経済を巡る状況は激変しました。今後の見通しでは、人口減少、超高齢化、産業は縮小するとされ、経済産業省の2009年の報告では家計支出は2007年2030年比で10%減少する、製造業は生産拠点を海外移転し、国内工場も商品も減り、物流は減少するとされています。ここ数年について言えば、リーマンショックや円高、ユーロ危機、中国経済の先行き不安など世界経済情勢は危機的状況です。
交通量はまさに経済状況が反映されるものですから北西線の議論にあたっては新たな社会経済状況を反映させた上で市内の交通ネットワーク計画を再構築し、その上で高速道路はどうあるべきかを検討するのが本来のあり方ではないでしょうか。北西線は本市の負担が1000億円を超え、10年間毎年100億円の大型公共事業であり、本市の厳しい財政状況からいっても慎重の上にも慎重に進めるべきです。それなのに30年前の計画ありきで進めており、納得できるものではありません。いかがでしょうか。
国では北西線整備後の予測交通量を1日4万5000台としていますが、予測の前提となる社会経済情勢は一変しています。国は2008年に全国交通量の将来予測を見直し、大幅下方修正しました。しかし、横浜が位置する関東地域では交通量は微増するとしていました。だとしてもいずれは全国的傾向と同様に減少すると思われるため、国任せにせず本市独自に交通量を予測すべきではないかと考えます。
また、国が予測にあたり基準としたのは2005年度の交通量で、ここ数年の社会経済状況の変化からすると、直近の交通量を基準にして再予測すればまったく違った結果が出るはずです。1日4万5000台という数字は信頼性に欠けます。これをもって事業を進めるわけにはいかないと考えますが、いかがでしょうか。
現在、保土ヶ谷バイパスは1日の交通量が16万8000台で渋滞が激しく、北西線の整備が保土ヶ谷バイパスの交通を分散させる効果があるとされています。完成すれば、保土ヶ谷バイパスの交通量のうち1万台が減ることになるという説明があったかと思えば、まあ3万台が減るという説明もあって、どの数字を信じていいかわかりません。客観的な数字が出せないわけですから、北西線を整備すれば保土ヶ谷バイパスの混雑が解消できるとは言えないのではないでしょうか。
現在、国により横浜町田インターチェンジの先で、500億円以上かけて国道246号線との立体交差事業が行われ、8割方進んでいると聞いています。完成すれば混雑は大幅に改善されると期待されます。ですから、本市の財政が厳しい折、巨費をかけてまで北西線という別のルートを作らなくてもいいと考えますが、見解を伺います。以上です。
林市長:市第127号議案について、ご質問いただきました。
横浜環状道路計画の見直しなしに北西線を加える同意は認められないとのことですが、横浜環状道路は横浜版成長戦略を支える事業として、中期4か年計画にも位置付けておりまして、着実に推進していく考えです。また、国は現在横浜周辺の交通需要について少なくとも平成42年までは増加すると推計しており、最近行った事業評価についても、横浜環状南線をはじめとした横浜環状道路について引き続き事業を継続することが妥当としています。
北西線の将来交通量についてですが、国、首都高速道路株式会社、横浜市の3者が調査等を行い、平成23年に首都高速道路株式会社が現段階での最新のデータを用いて推計を行いました。結果については、第三者の有識者から構成される国の社会資本整備審議会が妥当と判断しています。本市におきましても結果について確認を行っています。
保土ヶ谷バイパスに集中する交通の分散効果についてですが、国の平成22年の調査によれば、保土ヶ谷バイパスの現在の交通量は1日あたり約17万台となっています。北西線が整備された後の将来交通量については、国の社会資本整備審議会の資料で約13万台と推定されています。
また、北西線整備の必要性についてですが、国が行っている町田立体事業は、横浜町田インターチェンジ付近の混雑緩和を目的としたものですので、保土ヶ谷バイパス全体の混雑緩和のためには北西線は必要と考えています。
以上、白井議員のご質問にご答弁申し上げました。