2023年10月19日
日本共産党横浜市議団 団長 古谷やすひこ
2023年第三回定例会の概要と2022年度決算の評価について
2023年第3回横浜市会定例会は、9月7日に開会、前半は市長提出議案の審議、後半は決算特別委員会での局別審査が行われ、10月19日の本会議での決算議決で、すべての日程を終了しました。市長提出議案の全てが原案どおり可決しました。日本共産党横浜市議団(5人)は、与えられた議会論戦の時間を最大限活用し、市民の暮らしを支える施策が一歩でも前進するように提案と問題ある事業の見直しを求めました。
議2023年第三回定例会の概要と2022年度決算の評価について案関連質問
前半戦の議案関連質問には大和田あきお議員が登壇。補正予算案の物価高騰対策について、対象になっていない診療所等にも支援範囲の拡大することなどを山中竹春市長に求めました。市長は「診療報酬の改定にあたって、物価高騰の影響などを反映するよう国に要望を行っている」などと答弁しました。
一般質問
一般質問には、みわ智恵美議員が登壇。マイナ保険証問題やノース・ドックの早期全面返還、デリバリー方式による中学校給食の問題点を取り上げました。市長は、マイナ保険証について「国の動きを注視しつつ、適正に保険診療を受けられるよう準備を進める」と答弁しました。
一般議案討論
9月21日の一般議案討論は白井まさ子議員が立ち、物価高騰対策を柱にした一般会計補正予算に賛成し、巨費を投じる旧上瀬谷通信施設地区の土地区画整理事業関連の議案に反対しました。
また請願については、小児医療費無償化の18歳までの拡大、健康保険証存続、福祉労働者の処遇改善、女性差別撤廃条約の早期批准などを求める請願などへの採択を求めました。しかし、自民、公明などの反対多数によって否決。また、選択的夫婦別姓を遠ざける旧姓使用の拡大を求める請願が自民、公明、立憲、維新によって採択され、党市議団は反対しましたが、国への意見書が上がることになりました。
決算特別委員会
後半戦の決算特別委員会では総合審査には古谷やすひこ議員が登壇。保育士の配置基準の改善や不登校問題などについて、市長や教育長らと一問一答式で質問しました。市長は、保育士については今後も支援の拡充に努めると答弁。教育長は不登校問題について、個別の教育支援計画の作成を徹底していくなど答えました。
局別審査では5人で各局を分担して取り組みました。(局別審査で問題が明らかになった事業については、後半の決算評価に示しています)
【局別審査のトピックス】
戦争には協力しない市政を
平和でこそミナトは栄える!…港湾局審査にて
米陸軍の物流拠点だった横浜ノース・ドック(神奈川区)に突然、戦場に直結する実働部隊を置くという軍備増強が、市にも相談なく決められました。そこで、「平和でこそミナトは栄える」という立場から、横浜港においては、上屋や埠頭を戦争の為に貸しださないよう求めました。
副市長は、「市として最も最重要なことは市民に不安を与えない、市民生活の安全・安心を守っていくことで、その影響が懸念される場合には、政策局・総務局と連携しながら適切な対応を講じていきたい」と答弁。ノース・ドックの早期返還はもとより、地方自治体として市民を守る平和の軸をしっかりと握って、戦争には協力しない姿勢を明確にして取り組んでいくよう強く求めました。
自衛隊に個人情報をわたさないで!
除外申請を受け付けることに…市民局審査にて
横浜市では、2021年度から自衛官募集の対象となる18歳と22歳になる市民の個人情報(氏名・住所)を宛名シールで自衛隊に提供しています。また、個人情報の提供を希望しない市民から“除外申請があっても法令が無いことなどを理由に除外対応をしていないどころか、市民に知らせてもいません。党市議団はこれを問題視し、少なくとも事実を市民に知らせ、除外申請を受付けること、そもそも名簿提供を取り止めることを申し入れています。10日市民局への追及で市は一転し“除外申請”を来年度から受け入れる方針と答えました。
補聴器購入助成制度を本市でも!
先行する自治体に倣って…健康福祉局審査にて
加齢性難聴者を対象とした補聴器購入助成制度の必要性を訴えました。当局からは、「加齢性難聴者にとって、生活の質を上げるという観点では、補聴器の使用による一定の効果があるとは考えている。補聴器の使用による認知症の予防効果についての研究が進められていますので、今後の研究結果や国の動向を注視していきたいと考えています」と答弁がありました。引き続き、補助金創設に向け議会で力を尽くします。
【決算討論】 決算一般会計に賛成(認定)するが、問題ある事業は見直しを
10月19日の最終日には宇佐美さやか議員が登壇し、決算議案に賛成しつつ、大都市制度の行き過ぎた啓発や、必要性に乏しいみなとみらい歩行者デッキ、住民合意のないまま進められた高速道路環状南線、デリバー方式の中学校給食、ずさんなレシ活事業などの問題点を指摘し、事業の見直しを求めました。
また、港湾整備事業費会計や開発市街地開発事業費会計など5つの事業費会計については反対する討論を行いました。また、教員の未配置問題の解消と定員オーバーで支援が受けられない生徒が多数出ている横浜市高等教育奨学制度(奨学金)の拡充を強く求めました。
最後にイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの大規模軍事侵攻について、関係各国と国際機関が今、あらゆる外交努力を行うよう強く呼びかけました。
【横浜市の2022年度決算について 日本共産党横浜市議団の評価】
●一般会計決算は子育て支援等が着実に前進したことは評価。しかし、強引な税取り立てはだめ
2022年度市税収入は8,672億7,600万円で、前年度比283億7,500万円の増となり、3年ぶりの増収で、過去最高額を更新しました。
増収の内訳は、法人市民税が49億円、新増築家屋の増などによる固定資産税が84億円増、そしてもっとも多かったのが個人市民税で116億円増となっています。
横浜市は20政令市の中で、突出して、個人市民税が多い都市ですが、改めて市民一人一人が、この横浜市を支えていることが明らかになりました。
日本共産党は、モノではなく人に、大規模・大型開発ではなく市民の暮らしにこそ光を当て、予算を重点的に振り向けるよう提案を行ってきました。
一般会計では、子育て世代への直接支援策について、中学校3年生までの医療費完全無償化にむけたシステム改修の設計を着実に行ってきたことや、保育所等の整備などによる1,322人分の受入枠確保、保育士への市独自賃金上乗せ、虐待対応の専任化などは市民要望にかなったものであるとして評価しています。引き続き、市民の困難に寄り添い、暮らしを支える施策を力強く前進させることを要望します。
市税関係で気になる点として、市税収納率が過去最高だった前年度と同率の99.3%、市税滞納額が前年度比4億円減の47億円となったことについてです。安定的な市税の収納率は、市財政の根幹を支えるという積極的な意味がありますが、党市議団に寄せられる市民相談では、やむにやまれない事情があって、税や国保料などを滞納してしまった方が、納める意思を持って、行政に納税の相談に行き、分割で払っていくことも可能と示された矢先に、差押えが行われてしまったとの訴えがありました。滞納してしまった方は、悪質な場合を除き、多くは様々な生活困難を抱えています。収納率を上げる、滞納額を減らすという目標に突き進むあまり、困難を抱えた人に寄り添う姿勢が後景に追いやられてしまうのではないかと危惧しています。
「市民に寄りそう行政」として全国的に有名な滋賀県野洲市では、債権管理にあたって、「差押えによる一時的な徴収よりも、生活再建を経て納税していただく方が納税額が大きい」という生活再建優先の考え方で対応しています。税の滞納は市民からのSOSです。税の分野でも市民の困難に寄り添う姿勢を堅持することを要望します。
●コロナ・物価高騰対策について
また、新型コロナウイルス感染症対策経費の決算額は2,220億7,000万円、原油価格・物価高騰対策経費は650億100万円です。このことから、昨年度のコロナ対策と物価高騰との闘いの厳しさが見て取れます。この間、児童福祉施設・社会福祉施設等に対する光熱費や食材費の高騰に対する支援などに48億円などの必要な手立てを打ってきたことは評価します。しかし、コロナと物価高騰の影響を受ける現場をしっかり支えるには、まだまだ支援の量も質も足りていません。今後、コロナ感染と季節性インフルエンザの同時流行への懸念が高まっています。コロナ5類引き下げによって、医療機関や福祉施設への様々な公的支援が打ち切られるなか、疲弊した現場が倒れないよう、必要な支援を続けていただくことを改めて要望するものです。
●予算が足りなくて必要な支援が届いていない問題について
支援のメニューはあっても、予算が足りず、必要な人に支援が届いていない施策があることも明らかになりました。特に早急に対策が必要なのが、横浜市高等学校奨学生制度です。
2022年度の定数は830人で、それに対して946人の応募がありました。最終的に採用されたのは851人だったので、95人の生徒は制度を利用することができませんでした。党市議団は、支援を必要としている生徒が利用できるよう成績要件の撤廃など要件緩和を求めてきました。今年度からは、成績要件が緩和され、支援対象が広がったことは一歩前進ですが、利用者の拡充ははかられず、定数900人としました。しかし1,318人の生徒からの応募があり、最終的には、定数にわずか6人プラスしただけで、残りの416人は、支援を受けることができませんでした。要件を満たしていたにも関わらずです。経済的に苦しいけど学びたいという生徒全員が制度を利用できるように、成績要件を無くし募集人数の定数を増やすなどの対策を実施することを求めます。
また教育分野の深刻な問題として、児童生徒の学習権の保障が危ぶまれる教員の未配置問題が解決に向かっていません。原因は、最初から欠員臨任頼みにした採用枠にあります。解決は、正規の教員を最初からもっと多くとることです。決断の時です。必要な予算の確保をお願いします。
●決算一般議案に賛成するが、容認できないものも
子育て施策の前進への評価などから、決算一般議案へ賛成しますが、一つ一つの事業については、問題を指摘しなければならないものもあります。政策局の施策では、盛んに大都市制度への啓発事業を行っていますが、いまこれが本当に貴重な予算を使ってやるべきことなのでしょうか。立ち止まることを呼びかけます。
他にも、子ども青少年局の認定こども園の虐待対応の遅れや、必要性に乏しい都市整備局のみなとみらい歩行者デッキ、住民合意がないままに進められた道路局の高速環状南線、デリバリー方式による全員制の中学校給食などはこれで良しとはいきません。引き続き関連事業への見直しを求めていきます。
また、市民局の自衛隊への個人情報提供問題では、除外を求める市民からの申請すら受付けないという異常な姿勢が正されることになりましたが、名簿提供は続けられます。安保法制の強行によって、自衛隊の任務が変わり、アメリカの戦争に肩を並べて参加するというこれまでにない危険な特性が加わった今、未来を担う若者の名簿を渡すことは許されません。少なくても名簿提供しても良いという方にのみ送る「手上げ式」にするのが筋ではないでしょうか。見直しを求めます。
●レシ活事業を総点検し、再発防止策を
また、約100億円が投じられたレシ活事業については、コロナ臨時交付金の本来の使い方として、大きな問題があったことが明らかになりました。事業者に支払った公金のうち、市民に還元された実際の金額の全容が把握できていないこと、また、ポイント失効分の金額についての事業者から市に戻してもらうことに確実な担保がとれていないことなど、契約の内容、結び方、事業運営への関わり方など含めて、あまりにずさんな事業であったと思います。8月から9月にかけて、副市長をリーダーとした事業の振り返りを行ったとのことですが、何をふりかえったのかも明らかにされていません。そもそも振り返りなどという甘いものではなく、総点検を行い、問題点や課題点の洗い出し、責任の所在の追及、市財政に穴をあけないための徹底的な対策をし、公金の使い方として適切であったのかなどの反省をして、再発防止に努めることこそ責任ある対応です。しっかりとした対応を強く求めるものです。
●ふるさと納税のマイナスの影響額を市民サービスに充てられたらどんな良いか
次のふるさと納税について一言申し上げます。2022年度のふるさと納税の税収影響額はマイナス222億円となりました。
ふるさと納税は、郷里への応援、被災地支援など、それ自体としては積極的な意味を持っています。しかし、ふるさと納税は、そもそも納税ではありません。寄付にあたるものです。
住民税などの地方税は、自治体の行政サービスの費用を住民が負担し合う仕組みですが、「寄付である」ふるさと納税を利用すると、寄付額の多くが住民税などから控除されます。
つまり、住んでいる自治体のサービスを受けているのに、そのサービスの原資になる住民税が、十分に払われないという事態がおきています。市民の中には、ふるさと納税を行うことで住んでいる自治体の税収が減ることを知らない方がほとんどではないでしょうか。マイナスの影響になった200億円の原資があれば、小学校給食費無償化80億円をはじめ、出産費用や敬老パスの負担軽減のための予算措置が抜本的に拡充するができるはずです。
日本共産党は、返礼品競争の過熱防止や、富裕層優遇とならないように仕組みを見直すことなどを求めています。市としても、国に制度の見直しを求めるよう要望します。
●5つの特別会計に反対
港湾整備事業費会計、市街地開発事業費会計、みどり保全創造事業費会計、埋立事業会計国民健康保険事業の5会計については、市民の暮らしを支え、困難に寄り添うという地方自治体の役割とはあまりに遠い税金の使い方で、こういうお金の使い方は認められないという立場で反対します。特に、旧上瀬谷通信施設の開発については、抜本的な見直しが必要です。当該区域では、巨大テーマパーク立地に向けた巨額の公費を投入する土地区画整理事業は、年間1,500万人を集客するという過大な目標のもと、その集客の命綱となる新たな交通の内容も、本市の財政負担も採算リスクも明らかにされないまま基盤整備事業が始まっています。将来世代への負の遺産とならない確かな保障、見通しがないなかでこのまま事業を進めることを認めることはできません。そもそも、当該区域の土地利用は、本来であれば「首都圏全体を見据えた防災と環境再生の一大拠点」として位置づけられた2006年の「米軍施設返還跡地利用指針」に沿ったものであるべきです。全ての事業を巨大化させる要因となっている年間1,500万人集客という目標人数を現実的なものとすることを強く求めます。
また、黒字になっているにもかかわらず、保険料を引き上げた国民健康保険事業費会計、コンテナ貨物量増の見通しがないなかでの新本牧ふ頭整備を進めた港湾整備事業費会計、民間タワーマンション建設への法外な補助金支給など、大型開発事業等の市街地開発事業費会計、多額の赤字が発生した埋立事業会計、みどり税を徴取しながら、貴重なみどりを守り切れていないみどり保全創造事業費会計について、認定することはできません。厳しい財政というならこういう税金の使い方こそ真っ先に見直してもらいたいと思います。
市長選公約であった3つのゼロなどの重点公約を実現させるため、市長が目指す「子育てしたいまちヨコハマ」 「住み続けたいまちヨコハマ」のため、旧上瀬谷通信施設での巨費を投じてのテーマパーク立地や、民間デベロッパーを利するだけの補助金は見直しや中止をし、地方自治体の本来の役割である「住民の福祉の向上」のために大事な税金を使う本来の税金の使い方に変え、市民に寄り添った市政への転換を行うことを求めます。
そのために、歴代市長によって国策で進められた、大型公共事業にメスを入れ、歳入歳出の改革を行うことを強く要望します。
印刷用PDFは
です。