※実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように、対応する質疑と答弁を交互に記載しました。
敬老パスの利用者負担増は福祉制度に反する
岩崎議員:日本共産党を代表して、質問をいたします。私自身としましては、8年ぶりの本会議質問でございます。よろしく答弁お願いいたします。
提案された市第4号議案、市第14号議案、および「市政運営における総合的な震災対策の考え方」に関わって、林市長に質問します。
はじめに、市第4号議案「横浜市敬老特別乗車証条例の一部改正」について、質問します。
敬老パスは高齢者の外出支援などを目的とし、市民から高く評価されている横浜の誇るべき福祉施策です。
改定案には、市の財政負担を抑える努力はうかがえますが、看過できない重大な問題点があります。それは、生活保護受給者に負担金を新設したことをはじめ、利用者に負担増を押し付けるものであり、高齢者の福祉制度の目的に反するといわざるを得ません。改定案の撤回を求めます。
そこで、市長にうかがいます。
なぜこの時期に値上げ提案なのか
先ず、何故この時期に値上げ提案なのかについてです。
前期の議会は当初スケジュール案を認めていません。にもかかわらず、2011年10月実施という同じ実施時期の案を提出したことは、議会の意思を無視することにほかなりません。また、現行制度で2011年度予算が決められており、今年度の改定は行われないと考えるのが市民の素直な見方ではないでしょうか。これまでの経緯を無視して条例改定等を提出することは、案の段階での市会における議論を軽視し、市民に周知する期間を設ける等の手順が踏まれていないと考えます。二元代表制尊重を標榜される市長の考え方とは相反していますが、市長の見解をうかがいます。
林市長:岩崎議員のご質問にお答え申し上げます。
市第4号議案についてご質問いただきました。今回の提案についてですが、平成21年12月に、市会に敬老パス見直しの考え方をご提示して以来、およそ10回にわたり常任委員会や本会議で議論を重ねてまいりました。また、市会でのご意見により、市民3万人アンケートも実施いたしました。市会や市民の声を十分にお聞きした上での提案をさせていただいております。
今後6年間は利用者負担増はないか
岩崎議員:次に、先ほどもありましたが、今後6年間は利用者負担を増額しないと聞いています。このことは確約できますか。市長の見解を改めてうかがいます。
林市長:利用者負担についてですが、今回の見直しでは団塊の世代が70才に到達する6年後の29年頃を一応の目安としています。いまの時代、6年以上先を見通すことは難しいことですが、その時々の社会情勢、経済情勢に応じた持続可能な制度となるよう、先を見通した検討を進めていくことは必要と考えています。
低所得者の負担増は福祉の趣旨に反する
岩崎議員:次に、改定案では、生活保護受給者に負担金3200円を新たに求め、非課税世帯の半分に1.25倍の800円の負担増を求めています。生活保護世帯と住民税非課税世帯、所得150万円未満の利用者の負担増額、これが全体の負担増額の5割を占めるやり方は、福祉制度である敬老パスの趣旨に反する改定案と考えますが、市長の見解をうかがいます。
林市長:低所得者への負担の配慮についてですが、今回の見直しでは世帯全体が非課税の場合には負担額を据え置きとし、また同一世帯に課税者がいる場合でも800円の増額で年4000円に抑えるなど、低所得者に十分配慮したものとなっています。
岩崎議員:次に、改定案によれば、高齢夫婦の生活保護受給世帯では、更新時に2人分で6400円の出費となり、更新できないケースが生まれる心配があります。国の老齢加算廃止で生活が困難になっているときに、大幅な負担金の新設は、生活困難に追い討ちをかけることになります。生活保護受給者に新たな負担を求めるのは、やめるべきではないでしょうか。市長の見解をうかがいます。
林市長:生活保護受給者への負担増は制度の趣旨に反するのではないかとのご意見ですが、生活扶助費の中には一般的な交通費は含まれていると解されています。生活保護世帯の方でも70歳未満の方が交通機関を利用する場合には、通常の料金を負担しています。そのため、70歳となり、敬老パスをご利用いただくときにご負担をお願いしたとしても、生活保護制度の趣旨に反するものとはならないと考えています。
利用者負担増ではなくムダを省く知恵を
岩崎議員:次に、市長は、本議会の冒頭の挨拶で、選択と集中をすすめると表明されました。敬老乗車証は優先されるべき事業であり、事業費の増額が必要ならば、利用者負担を増やすのではなく、無駄を省く知恵を出して捻出するべきではないでしょうか。市長の認識をうかがいます。
林市長:事業の選択と集中についての考え方ですが、私もかねてから敬老パス制度は存続させたいと考えており、どのように維持していくかを検討してきました。高齢者に望れる現行のフリーパス方式を変更することなく、安定的に運用するために、今回利用者のみなさまにも一定のご負担増をお願いすることになりますが、ぜひともご理解いただきたいと考えています。
防災計画に津波の河川遡上の考慮を
岩崎議員:次に、「市政運営における総合的な震災対策の考え方」について伺います。
東日本大震災は、原発事故も引き起こし、未曾有の大災害になっています。自然災害はとめられませんが、しっかりとした「防災対策」をもつことで、被害を最小限に食い止め、事故を未然に防ぐことができます。
市長が、東日本大震災と福島原発事故を機に、本市の「防災計画」を検討し見直すとしたことは、時宜にかなったこととして評価するものです。
そこで、「防災計画」を見直す視点について、市長の見解をうかがいます。
まず、市内を流れる主要河川の津波対策についてです。
横浜市内を流れる主な河川は、東京湾に注ぐ鶴見川、帷子川、大岡川、相模湾に注ぐ境川があります。
これらの流域では、市街地付近の河床、川の底のことです、河床が海面よりもかなり低いこと、海面より高いとされるところでもその差はわずかであるという特徴があります。つまり、河口から市街地のかなり奥深くまで、川の水面が海水面と同じ高さにあるということで、津波が川を遡上することが容易に想定できます。防災計画の見直しに当たってこの地域的特性を十分に考慮する必要があると考えますが、市長の認識をうかがいます。
林市長:総合的な震災対策の考え方について、ご質問いただきました。
防災計画を見直す視点の津波災害対策の想定ですが、現行の防災対策では南関東地震、横浜市直下型地震、東海地震が発生した場合を想定しています。その中で、津波の高さについては最大でも1メートル未満と想定していますが、実際には3月11日当日約1.6メーターが計測されましたので、被害想定の見直しが必要と認識をしております。
河川を遡上する津波を想定した津波対策を策定すべきとのご意見についてですが、津波からの避難を考える上で、市民の安全を確保する観点から、津波が沿岸部だけでなく、河川を遡上することも視野に入れることは大切な要素であると考えております。
コンビナート災害対策を国・県・企業まかせにするな
岩崎議員:次に、コンビナート災害についてです。
今回の震災では、仙台市や千葉県市原市などで石油コンビナート火災が発生し、手のつけられない事態になりました。横浜市の臨海部には、石油、天然ガス、鶴見区安善町の米軍ジェット燃料貯油施設を始め、多数の石油コンビナートがあります。震災対策をすすめるうえで、本市の地域的特性でもある石油コンビナートなどの防災対策についても、この機会に、国・県・企業まかせの現状を根本的に見直すことが必要と考えますが、市長の見解をうかがいます。
林市長:石油コンビナート防災対策の見直しの必要性についてですが、安全対策を定めている石油コンビナート等災害防止法では、都道府県が石油コンビナート等防災計画を策定し、災害対応にあたるものとしています。本市では、県の防災対策に基づき、災害の未然防止と被害の拡大を防ぐため、横浜市石油コンビナート等防災対策編を自主的に定めています。今回の東日本大震災を受け、今後は国や県と連携を図りながら、必要に応じた見直しをします。
米原子力空母を災害対策の対象に
岩崎議員:次に、原子力災害についてです。
米軍横須賀基地を母港とする空母ジョージ・ワシントンや原子力潜水艦などの艦船は、原子炉を搭載しています。
わが党はこれまでも、米軍艦船による原子力災害について、たびたび質問してきました。しかし答弁は、「政府が対応する問題」「米軍が安全だといっている」「国が対策を求めていない」などにとどまっていました。
わが党は、今度の福島原発事故について、35年前から取り返しのつかない大災害の危険を警告し続けてきましたが、不幸にも的中してしまいました。政府や米軍による「安全だ」「対策は無用」との論理は、今回の事態で完全に破綻しました。
横浜の中心部は、横須賀港から20キロ圏内にすっぽり入ります。防災計画の見直しにあたっては、原子力事故・災害対策の対象に、米軍原子力艦船と核施設の存在を位置付ける必要があると考えますが、市長の認識をうかがいます。
林市長:原子力空母などを防災計画の対象とすべきとのご意見についてでございますが、今回の福島第一原発の事故を受けて、横須賀市は国に対して23年4月15日に米原子力軍艦の安全性について確認要請を実施しました。この要請に対して米国は、原子力軍艦の安全性について書簡を発しています。原子力空母などの防災対策については、従来より神奈川県や関係市で構成された神奈川県基地関係県市連絡協議会の場を通じて、国に対して申し入れをしておりますので、今後も広域的な連携の中で引き続き国に強く要請をしてまいります。
被災者支援対策を防災計画に入れよ
岩崎議員:次に、被災者・被災地支援対策についてうかがいます。
本市の防災計画は、他の地域から大量の避難者を来ることを想定していません。東日本大震災、福島原発事故による被災・避難の事態を体験した現時点では、他の自治体・地域からの避難者の受け入れについて、しっかりとした計画を確立すべきです。
避難者受け入れ計画は、市内で災害が発生した場合にも、被災者支援にそのまま役立つ大切なものでもあります。
避難してきた被災者の実態を把握する仕組みの整備や、避難者の困難な立場を踏まえた丁寧な対応マニュアルなどを、本市の防災計画に位置付ける必要があると考えますが、市長の認識をうかがいます。
林市長:被災者支援の防災計画の位置付けについてですが、本市においては、たきがしら会館や野島青少年研修センターへの受け入れや、旭区にある市営ひかりが丘団地への入居など、被災者の方々の受け入れ支援を行っています。たきがしら会館や野島青少年研修センターでは、従事職員のマニュアルなどを作成して対応しております。また、旭区では、入居者からのお問い合わせに対し、ワンストップ相談体制を整えるなどしております。こうした経験を生かし、今後とも被災者の方々の受け入れ支援に努めてまいります。
横浜に来てよかったと思える避難者支援を
岩崎議員:最後に、喫緊の課題である、市内で受け入れた東日本大震災の避難者支援についてです。
今回の震災の被災地から横浜市に避難した方の受け入れ状況を調査しました。
旭区にある市営住宅ひかりが丘団地でお聞きした状況は、次のようなものです。第一次で入居した世帯に対して横浜市が準備していたのは、風呂桶、照明器具、ガステーブル、換気扇、それに毛布1枚のみだったようです。現在は、これに布団が追加されているとのことです。一方、東京都では、都営住宅に家電製品が準備されていたと聞いています。
着の身着のままで避難して来たため、多くの方が希望したものは、食糧、冷蔵庫、洗濯機、レンジなどの生活必需品、および当面の生活費だったようです。
こうした困難な事態を急きょ支援したのは、団地の自治会など地元の組織でした。義援金を集めて各世帯に1万円を配布、また居住者に呼びかけて家電製品を提供してもらい、必要な人に届けるなど、地元組織は大きな役割を果たしました。
この状況を見ると、本市が受け入れている方々の実態把握や対応が十分できていないように見受けられます。
被災者のみなさんの状況は様々です。突然横浜に避難して来られのですから、途方にくれている状況におられます。
横浜市が素早く対応すべき支援は、被災者が、疲労と不安の中でも、「横浜に来てホッとできた」と思えるようにすることではないでしょうか。
本市が、被災者・避難者の困難な状況を速やかに把握するとともに、本市に寄せられている義援金の効果的活用も含め、入居期間の延長、生活支援費用の支給など、親切・丁寧な対応を行うことを求めます。市長の見解をうかがって質問とします。
林市長:東日本大震災の被災者支援における被災者の実態把握と、支援を強化すべきとのことについてですが、これまでも市営住宅に入居された被災者の皆様や、たきがしら会館、野島青少年研修センターに避難されている被災者の皆様に、寝具の提供や福祉制度等のご案内、また社会福祉協議会や地域の皆様、ボランティアの方々による支援等を行ってきました。また、全国避難者情報システムの導入により、避難元の自治体からの情報を提供できる体制となっております。
先ほど、岩崎先生からきめ細やかなお話もいただきました。今後も引き続き、市としてもきめ細やかにしっかりとご支援してまいりますので、よろしくお願いいたします。
以上、岩崎議員のご質問にご答弁申し上げました。