被災地の救援と復興に全力を
私は、日本共産党を代表し、予算討論に先立って、11日、14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震で、痛ましい犠牲となった方々に対し、謹んで哀悼の意を表するとともに、被災者のみなさんに心から、お見舞いを申し上げます。
地震発生から1週間が経ちました。マグニチュード9.0という日本の観測史上未曾有の巨大地震であり、地震と津波による被害は甚大なものとなっています。いま、何をおいても緊急に求められるのは、救援と復興に全力をつくすこと、そして、福島原発の爆発等による原子炉格納容器の損傷や、放射性物質の飛散という重大な事態に対する危険性の除去、安全対策に全力をあげることです。そのためにあらゆる手をつくすことを政府および東電に強く求めます。
日本共産党は、中央・各県・各地区委員会に同地震災害対策本部を設置し、全国各地で、被災者の方々への救援募金や支援物資など、物心両面での援助活動に取り組んでいます。
わが党市会議員団は14日、林市長に対して「被災自治体等からの支援要請に積極的に応えること」「『計画停電』にあたって医療機関や在宅医療への手立てを講じること」等、7項目にわたって「緊急申し入れ」を行ったところです。
いまこそ、くらしと地方自治、地域経済を立て直すため自治体の役割発揮を
続いて、2011年度横浜市一般会計ほか17件の会計予算および4件の予算関連議案に反対の討論を行います。
一般会計予算の歳入は、大企業の収益回復などによる市税の増収で、「2年ぶりのプラス予算」を見込んでいます。しかし、長引く不況の影響で、「暮し向きが苦しい」「仕事がない」の悲鳴がますます広がり、市民のくらし、中小企業の仕事や雇用状況は、好転するどころか依然として深刻な事態です。いまこそ、自治体の役割を発揮し、くらしと地方自治、地域経済を立て直すための、思い切った転換が求められているのではないでしょうか。その立場から、以下、予算案に対する問題点を述べます。
福祉とくらし最優先を貫け
問題点の第一は、福祉と暮らし最優先が貫かれていないことです。
高すぎる国民健康保険料が全国どこでも大問題となっています。本市では3年連続の値上げが予定されており、所得300万円4人家族の国保料は約33万円、前年比で3万4200円もの値上げとなって、所得に占める国保料の割合は11%に膨らみます。
国や県に交付金増額を求めるのは当然としても、国保料値上げを抑制するために、市一般会計繰入金を拡充すべきです。他都市では、この間、福岡市、所沢市、新座市、北名古屋市などで、住民要望をうけて国保料の値下げがされています。
生活や営業が厳しくなって、国保料を払えない本市の滞納世帯は11万1247世帯で、56万加入世帯の約2割となっています。この滞納世帯から保険証を取り上げての資格証明書発行は3万世帯にのぼり、全国を見ても最悪水準です。保険証がないことから医療機関への受診が遅れたため死亡した事例は、昨年1年間に71人、全日本民医連調査、という深刻な事態を引き起こしています。
国民健康保険は、法で「社会保障及び国民保健の向上」を目的とし、国民に医療を保障する制度です。その制度が、国民の生活苦に追い打ちをかけ、人権や命を脅かすことなどあってはなりません。
特別養護老人ホームの整備についてです。待機者は2010年10月現在で約5000人を超えているにもかかわらず、新年度わずか400床の整備目標はあまりに少なすぎます。実態に合わせて整備目標を引き上げるべきです。
保育所の待機児童解消など子育て支援の強化を
次は、子育て支援についてです。
2013年平成25年4月までに、保育所の待機児童解消を図るとして、認可保育所や横浜保育室の2011年度受入枠を4005人増やすとしています。深刻な保育所待機児童の解消への目標や取組みについては一定の評価ができますが、定員外の受け入れ、いわゆる詰め込み等に頼ることなく、認可保育所の増設が基本であることを貫くべきであります。また、待機児解消にむけた保育資源として位置付けている横浜保育室に対しては、「認可並」をめざした援護費等の助成の拡充を強く求めます。
本市が、保育の公的責任や質を確保するためにも、これ以上の市立保育園の民営化や、認可保育所への株式会社参入は行うべきではないこと、そして約38万人の署名に託された「学童クラブの充実を」の願いに応えた指導員の待遇改善や保護者負担の軽減等に向け、「法」にもとづいた放課後児童健全育成事業の拡充の必要性を、合わせて強く指摘しておきます。
小児医療費助成の年齢引上げについて、実施に踏み切ろうとしないことも問題であります。現に、「小学校入学前まで」とする横浜市の水準は、県の助成内容の枠を出ておらず、しかも所得制限があって、県内最低レベルです。
神奈川県下では、「小学校卒業まで」が5市3町1村、「中学校卒業まで」が3町に、また所得制限のない自治体も17市町村に広がっています。「子育て支援」を標榜する林市長として、せめて小学校卒業までの医療費無料を願う市民要望に応えるべきではありませんか。
中学校給食の実施や教員不足解消など教育の充実を
次は、教育の充実に向けてです。
まず、中学校給食の実施についてですが、市民の切実な要求に依然として背を向けていることは問題であります。すでに、全国の公立中学校の80.9%で給食が実施されており、未実施だったところでも大阪市のように、実施に踏み切る自治体が増加をしております。
食育基本法の基本計画では「学校給食を食育推進の重要課題」と位置付け、さらに2008年の学校給食法の改正によって「学校による食育の推進のために学校給食を活用する」ことが新たに加わっています。もともと、学校給食法では、義務教育諸学校の設置者の任務として「学校給食が実施されるよう努めなければならない」としています。市長の「厳しい財政状況」を理由とする態度は、努力義務も果たさない「脱法行為」といわざるを得ません。ただちに、中学校給食の実施に向けた調査・検討に踏み切るよう強く求めておきます。
つぎに、本市の「教師の不足」への対応や、「少人数学級」にむけた取組みについてです。
教育の根幹をなすのは教員です。しかし、本市において、欠員教員について、正規教員をあてるべきところを、いわゆる「臨任」が常態化し、今年度は386人におよんでいます。「臨任」の雇用は長くて一年で、「仕事に打ち込めない」という声や、児童・生徒への影響が問題であり、本来の正規教員であてられるようにすることと合わせ、少人数学級への対応に向け、教員の確保・増員に向けた抜本的な取組みを求めます。
地域に根ざした中小企業、地場産業の振興策強化を
第二は、地域に根ざした産業振興策に問題があることです。
みなとみらい21地区等への進出企業に対して、建設費の助成や市税の軽減等の支援を行う企業立地促進条例が2004年に制定され、2009年に助成限度額を50億円から20億円に見直しはされたものの、現在までに、認定された支援総額は65件で333億円に上っています。内、日産など大企業への支援額は47件、l305億円で全体の約92%と大半を占めています。
リーマン・ショック以降、助成金や減税の恩恵を受けた大企業の派遣切りや工場閉鎖、移転が全国で相次いでいます。この横浜でも、日産横浜工場等の派遣切りや、綱島地区のパナソニックグループ会社の閉鎖・移転が問題になっているところです。
日産自動車に対する助成均等を検証してみると、本社建設に横浜市から17億7200万円、神奈川県からの30億3300万円を合わせて48億500万円の支援。加えて、横浜工場の1期から4期まで、本市から44億6800万円の支援が行われ、日産自動車だけで県・市合わせて92億7300万円の税金投入です。
この4回にわたる日産横浜工場への助成内容を見ると、他から横浜に生産部門が移転したものでもなく、工場の建直しや増設によるものでもなく、新型エンジン等の生産ラインの更新費用の助成です。社員の雇用を増やすことなく、経費と言えるものです。これでは、企業誘致に名を借りた至れり尽くせりの税金バラマキ支援以外、何ものでもありません。
多額の税金を注ぎ込み、「大企業を呼び込めば、そのおこぼれで地域が栄える」という破たんした古いやり方と決別し、その地域に現にある力を育て、それによって雇用と消費を増やし、さらに力をつける振興策、いわゆる内発型・循環型の地域振興策に転換することが、いまこそ求められています。
地域に根ざした中小企業、地場産業等を総合的に支援してこそ、安定した雇用と仕事、地域経済に活力を与え、地域社会の安定への大きな力となるものです。
そのために、
1.中小企業振興基本条例を活用し、中小企業への仕事おこしや商店街への支援を抜本的に強化すること。
2.地域経済の活性化に力を発揮する住宅リフォーム助成の創設を図ること。
3.適正な賃金等の確保等で「官製ワーキングプア」をなくすために、公契約条例を制定すること。
4.新卒者の就職をはじめ、青年の雇用対策を強化すること。
5.地震等の防災対策を抜本的に強化し、安全・安心のまちづくりを推進すること、を提案し、予算編成に組み入れることを強く求めるものであります。
「将来への投資」の名による大型公共事業推進は問題
第三は、「将来への投資」の名による大型公共事業推進の問題点についてであります。
昨年秋、日本共産党が行った「市民アンケート」には、5000通を超える回答が寄せられました。その46%の方々から、道路や歩道の整備・修繕、カーブミラーの設置など生活インフラの改善要望と合わせ、保育所や特別養護老人ホーム、障害者施設の増設や充実など、福祉や医療に関わる要望が寄せられています。
しかし、予算案では、これら生活密着型の公共事業が横ばいか減額されている一方で、巨大事業の横浜環状など高速道路関連は80億円から117億円に、ハブポート化による高規格コンテナ戦略港湾整備は50億円から83億円へと6割強も増加しています。これでは、限られた財源の中で、つり合いのとれた税金の使い方とは言えません。落ち込んでいる横浜の経済に元気を取り戻すために、地元の建設業者や中小業者の仕事おこしにも通ずる生活密着型の公共工事を増やし、地域経済の活性化への転換に向けた予算の組替えを強く求めます。
368万市民の期待に応えて市政の前進を
最後に、私事になりますが、今期をもって議員活動を引退するにあたり、4期16年にわたってみなさんの協力に対して心よりお礼申し上げます。みなさんの健勝と合わせ、この横浜市政が自治体の本来の役割を発揮し、368万市民の期待に応えて前進することを願って、日本共産党を代表しての私の予算案に対する討論を終わります。ありがとうございました。