みわ議員:日本共産党のみわ智恵美です。党を代表し、市第28号議案、市第29号議案、市第38号議案及び、市第42号議案には反対の立場から、そして市第53号議案「令和4年度横浜市一般会計補正予算(第3号)」に賛成の立場から、また、請願第3号「所得税法第56条の廃止を求める意見書の提出方について」の委員会不採択に反対の立場から討論いたします。
最初に、市第28号議案と市第29号議案、旧上瀬谷通信施設地区の開発にかかわる条例制定についてです。
旧上瀬谷通信施設地区の土地区画整理事業は抜本的見直しを
旧上瀬谷通信施設地区は、戦前は日本海軍のそして戦後はいったん返還されたものの、米軍の通信施設として接収され、その後70年土地利用が制限されてきたことで、農地や緩やかな起伏の草地など豊かな自然環境が広がり、4本の川と谷戸地形等が残される中で、貴重な生態系が残されています。その地を、地方公共団体である横浜市が市街化調整区域にある民有地も公有地も一体的に開発できるように、構造改革特区計画「農地と宅地を一体的に活性化する区画整理特区」を申請し、これが2020年1月に国から認定され、今回の土地区画整理事業が実施できるようになりました。
日本共産党は同地区の活用に関しては、横浜市が、新たな時代要請である環境への積極的な取り組みを進めるという、2006年6月に策定した「横浜から始める首都圏の環境再生」を全体テーマとする「米軍施設返還跡地利用指針」に基づくべきと繰り返し提案してきました。市民の安全・安心を最優先とし、動植物などの生態系等や自然環境を維持することを基調とすることが何より重要です。また、「利用指針」では、旧上瀬谷通信施設について「農・緑・防災の大規模な野外活動空間」を利用方針のテーマと設定し「首都圏全体を見据えた防災と環境再生の一大拠点として位置付け、平常時には多く首都圏の人々が訪れ農と緑を楽しみ、災害時には首都圏の広域防災活動拠点となる空間の形成を目指します」としています。
今回、横浜市は土地区画整理法に基づいて、土地区画整理事業を施工するにあたって、施行規程及び事業計画を定めなければならないために、条例制定を求めています。土地区画整理事業の事業費約766億円のうち、保留地処分金が約638億円、国と横浜市で106億円補助、市単独で22億円負担となっています。保留地は「観光・賑わい地区」と「農業振興地区」に振り向けられていますが、このどちらも確たる事業者は明らかとなっていません。 旧上瀬谷地区土地区画整理事業は総事業費20億円を超える市施工の事業であることから、その必要性や効果等を客観的に評価し公表することにより、公共事業の効率性及び実施過程の透明性の向上を図ることを目的として、市公共事業評価委員会が開催され事前評価が実施されました。委員会では、都市づくり、環境学、社会科学、経済学などの専門家による評価が実施されました。委員からは、1500万人もの人が行きかうのは迷惑施設にはならないのか、テーマパークの汚水排出量の算定はされているのか、物流ゾーンはカーボンニュートラルという重要な目標から逆行する、テーマパークが決まっていないのに判断するのは難しい、「環境への配慮」とされた「自然環境を生かした土地利用」の客観性を高めるよう等の意見が出されたときいています。党議員団は、公共事業評価制度に基づく市民意見募集に参加し意見を出しましたが、評価委員会で出された委員の方々の意見は私たちが指摘してきたことと多くが一致します。
公共事業評価委員会で識者の方々の厳しい指摘が次々と出される中、委員長は、委員会を通さなければ区画整理の換地も始めらない、制度上どうしようもないので、「テーマパークの内容が決まった段階で再評価する」という、一旦通すが再評価が通過の条件としての意見具申をまとめられました。委員会をまとめた委員長は、当該の土地区画整理事業計画(案)を決定した都市計画審議会の会長です。市の事業として税金も使って進める公共事業計画の案を決め、同じ公共事業の事前評価も同じ方が仕切ること事態、なんとも公正性を欠くものではないでしょうか。しかも、公共事業評価制度に基づいて提出された68通の市民意見も、公共事業評価委員会の議事録も公表されていません。このまま強引に区画整理事業を進めていくことは問題です。今回の事業を進める必要性・優先度として挙げられているのは、「地権者の早期の生活再建が求められています」です。本来の生活再建の責任を果たすべきは、国であり、米軍であることを強く申し上げておきます。
横浜BUNTAI(旧横浜文化体育館)の指定管理者の指定など
次は、市第38号議案「スポーツ施設の指定管理者の指定」及び、市第42号議案「スポーツ施設の指定管理者の指定の変更」についてです。
この議案は、2024年4月にメインアリーナ―が供用開始されることに伴い施設の名称を横浜文化体育館から横浜BUNTAI及び横浜武道館にし、それぞれの指定管理者を株式会社YOKOHAMA文体に指定・変更しようとするものです。横浜文化体育館は、横浜港開港 100 周年事業の一環として、スポーツと文化の普及振興を目的に1962年(昭和 37年)に開設されました。 過去には、東京オリンピックのバレーボールをはじめ、国内外のアーティストの公演や様々な文化行事にも幅広く利用されてきました。そして、市民の方々が日ごろの練習の成果を発揮していただく市大会などのスポーツの競技・発表の場として活用されてきました。卓球のアジアカップ横浜などの国際大会から、バスケットボールリーグ(B1リーグ)などの活用もされてきました。横浜市立小学校体育実技発表会に活用されたのは土曜日でした。幼稚園や保育園のこどもと保護者のダンス発表会、高校の体育祭等々。今年は文体が閉鎖されたので横浜武道館に会場を移していますが、市老人クラブ連合会主催での「シニアの祭典」も、文体でのびのびと盛大に行われてきました。益々、市民のスポーツと文化の振興に寄与する施設としての期待が高まるところですが、利用料金の大幅引き上げは市民利用のハードルを上げるものとなります。
市民利用施設は市民が利用しやすい利用料への引き下げを行い、利用そのものも市民利用が最優先されるべきです。しかし今後メインアリーナは市民利用については100日が確保されているだけです。これでは、興業及び営業宣伝が優先されるのではないでしょうか。
また、指定管理者となる株式会社YOKOHAMA文体の構成員の筆頭は広告代理店です。この点でも興行・営業優先が懸念されることから、議案には同意できません。
物価高で生活に困っている市民への直接支援策を
次に、市第53号議案「令和4年度横浜市一般会計補正予算(第3号)」についてです。
市民は、新型コロナ感染症の第8波とインフルエンザシーズンとコロナワクチン接種が同時に来るのではないかと危惧しています。報道でも盛んに言われています。今、横浜市民300万人に接種しようと計画しているコロナワクチン接種会場は今の準備で大丈夫でしょうか。市中の診療所では、秋以降インフルエンザ対応が迫られている中でのワクチン接種の役割と、コロナ感染症の発熱外来もとなれば、またまた、医療機関に電話がつながらない、具合が悪いのに診てもらえないという医療ひっ迫となりかねません。この事態に対応するには、ワクチン接種については、市がもっと責任を持ち、若い世代への接種も、以前取り組んだ、仕事や出かけた帰りに立ち寄れる当日接種会場を設けること、また、今回9カ所にするとしているが集団接種会場はさらに増やすことが必要です。
今回の補正では、物価高で生活に困っている市民への直接支援策がありません。
政府は、14日に物価高に対応する総額6000億円の新たな交付金について全国の自治体から申請を受け付けるための事務連絡を出しました。活用には自治体が実施計画をつくり10月31日までに提出する必要があります。
市民の置かれた深刻な生活や生業の実態を踏まえたきめ細かな実施計画を早急に作成されるよう要望します。物価高騰による小中学校の保護者の負担を軽減するために、この際小中学校の給食費を無償にすること、こども食堂に対する負担軽減のための支援、ヤングケアラーに対する配食支援、町場の一人親方など建設の小規模零細事業者は資器材の高騰ガソリンの値上げ負担に苦しんでいます。対策を考える必要があります。
あらたな小児医療費助成を歓迎 さらなる拡充を
今回、小児医療費助成の拡充のためにシステム改修の設計等がされます。横浜市会の記録を紐解きますと、党市議団が横浜市に対して小児医療費を当面は3歳まで無料にと予算要望したのは1973年、半世紀前でした。党議員団は市民とともに、取組をすすめてきました。私自身は、小児医療費助成の拡充を質問に取り上げたのは、市会議員に初当選した2015年の第3回定例会で、小児医療費助成は小学3年生まででした。当時の林市長に対して「子育ても仕事も充実させて過ごすことのできるまちづくり、安心できる福祉充実のまちづくりへの大胆な投資を優先させてはいかがでしょうか。住みやすい、子育てしやすい『まち』横浜にしてこそ、生産年齢人口を確保することができます。子育て世代の求める医療費無料の年齢拡大を、所得制限をなくして小6、さらに中3までに拡大し、第2子、第3子と安心して産み育てる環境を横浜にも」と求めました。林市長は、「大切な支援策のひとつであると認識をしています」としつつも多額の予算が必要と「実施の時期や内容については、慎重に検討したいと考えております」との答弁でした。
あれから丸7年、昨年の市長選挙で市民が市長を変え、小児医療費助成は所得制限も一部負担金もなく中学3年生までとの方向が示されました。今回の市長提案が全国的にも直接的にはお隣の川崎にも影響を与えています。大横浜が動くとその影響力は絶大です。18歳までの医療費助成の高みに進むよう改めて要望します。
家族労働を必要経費と認めない同法の廃止を国に求める請願は採択を
最後に、請願第3号は「所得税法第56条の廃止を求める意見書」を国へ提出することを求めるものです。自営業・小規模事業・家族経営の多くは、事業主と配偶者、その家族の働きによって支えられています。2014年国は、「小規模企業振興基本法」を策定し、「地域経済の発展に寄与している」と、中小企業・家族経営の存在を評価しています。そして、すべての事業主に対し記帳を義務付けました。記帳問題を理由に所得税法第56条を残しておく必要はなくなりました。
国連の女性差別撤廃委員会は2016年、「所得税法は自営業者や農業従事者の配偶者・家族の所得を必要経費として認めておらず、女性の経済的独立を事実上妨げていることを懸念している。家族経営における女性のエンパワーメント(能力開花)を促進するために、家族経営における女性の労働を認めるよう所得税法の見直しの検討を進めることを求める」と日本政府に勧告しました。第4次男女共同参画基本計画も同じ趣旨で「税制等の在り方を検討する」としています。女性差別撤廃の視点からも所得税法第56条は廃止するべきです。第56条の廃止を求める意見書は、今年6月末時点、全国562自治体で採択されています。国際港都横浜市議会のみなさん、ジェンダー平等実現のため、国に意見書を提出しようではありませんか。心から呼びかけさせていただき討論を終わります。