議会での質問・討論(詳細)
2011年2月10日

■「現年度議案関連質問」 かわじ民夫議員(2011.02.10)

※実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように、対応する質疑と答弁を交互に記載しました。

かわじ議員:私は日本共産党を代表し、本定例会に提案された議案のうち、2件について林市長に伺います。
 最初は、市第169号議案、横浜市墓地等の経営の許可等に関する条例の全部改正についてです。

宗教活動期間要件を大幅に延長して墓地の名義貸し防止の強化を

かわじ議員:質問の第1は名義貸し防止の強化策についてです。相模原市は、宗教法人の資格要件を「市内で10年以上の宗教活動が行われている拠点の建物」を有するとしており、前橋市は「宗教法人で、主たる事務所を3年以上市内に有するもの」とし、本院以外の事務所を認めていません。
 それに対し本市は今回、本院、分院の区別なく、市内での宗教活動期間を一定期間、規則で3年とするとしています。これでは、経営困難な寺院に墓苑業者がつけこみ、市内に分院の形式を整えれば、4年後に開発が可能となってしまいます。名義貸し防止の強化策なら、3年とする宗教活動期間要件を大幅に延長して、条例に明記し、市外での宗教法人の分院を認めない等、さらに強化すべきと思いますが、伺います。

林市長:かわじ議員のご質問にお答え申し上げます。市第169号議案について、ご質問いただきました。
 名義貸しの防止策を強化すべきとのことについてですが、宗教法人が地域に根差した活動を行っていることを確認するため、市内に事務所が設置されてから一定年数以上経過していることを手続きの条件といたしました。ただし、経営主体を主たる事務所を市内に有する者に限定することにつきましては、主たる事務所も従たる事務所も宗教法人法上の取り扱いに差がないことから、これを規制することは困難であると考えています。このほか、自己資金の規制や借入先を銀行に限定すること、さらに財務状況について新たに設置する審査会で経営主体の的確性を審査することなどにより、名義貸し防止を強化していきます。

墓地建設には距離規定が不可欠

かわじ議員:第2は周辺環境への配慮についてです。川崎市の許可基準は病院・診療所から110メートル以上の距離規定や、境界から内側5メートル以上の緑地帯規定があり、相模原市は学校・病院・人家等との水平距離50メートル以上とし、千葉市やさいたま市は住宅で100メートル以上としています。
 それに対し本市は、距離規定を設ければ墓地供給がほとんど止まってしまうとして、改正案では一部で5%の緑地率の上乗せと通路の拡幅のみで、市民の大きな要望の距離規定はありません。これでは、首都圏で事業化ができなくなってしまった業者を横浜に呼び込んでしまいます。目の前に突然墓石が林立し、住環境の激変を強いられる周辺住民との紛争多発化は必至です。
 首都圏では距離規定が大勢となりつつある今日、横浜でも、いっそう環境への配慮のために、福祉施設、学校、医療施設、住宅との距離規定を設けることが不可欠と思いますが、市長の見解はどうか、伺います。

林市長:距離規制についてですが、先ほどもお答えいたしましたが、都市化の進んだ本市において距離規制を設けることは実質的な墓地の供給規制につながる、今後増加していく墓地重要に応えられなくなる恐れがございまして、現実的ではないと考えています。

協議期間360日の設定は住民に泣き寝入りを強いるもの

かわじ議員:第3の問題は、紛争の解決について、周辺住民との話し合いの期間を360日に限定したことです。現条例で対応した2003年4月1日から2009年12月31日の紛争事例のうち、協議に要した期間は平均23か月で、最長5年超です。周辺住民との調整には、長時間かかっています。弁護士の判断を参考に、協議期間は一年が妥当としていますが、何の論拠もありません。有期限化は、住民の意向や理解などお構いなく、1年経てば申請できるもので、周辺住民の協力と理解や合意という墓地建設の手かせ、足かせをはずしたことになります。協議の義務付けに伴い、協議期間を設定することは、角を矯めて牛を殺す結果しかもたらしません。周辺住民に泣き寝入りを強いたままで、事業者には早期事業化の便宜をはかってまで墓地提供を急ぐ必要はありません、市長の見解を伺います。

林市長:紛争を解決する期間として360日とした理由ですが、これまで周辺住民の方々と事業者で行っていた話し合いに、今後は本市が当初から積極的に関与するように改め、紛争の長期化を防ぎ、早期に解決することを目的に定めました。最長360日の期間については、これ以上期間を長く設定することは、墓地埋葬等に関する法律の趣旨や行政手続法の目的を逸脱する可能性がございます。また、法律の専門家からは、条例制定権の範囲を定めた地方自治法第14条や営業の自由を定めた憲法第22条に抵触する恐れがあるとの指摘を受けています。

市民が求めているのは安価で安心できる市営墓地

かわじ議員:第4は墓地必要数の算定根拠についてです。当局は、市内の墓地不足を吹聴しますが、実体に反します。1日に何度も売り込みの電話が鳴り、ポストや新聞折り込みには霊園の広告が毎日のように入っているのは、買い手が少ないからです。
 墓地問題研究会の報告書では、墓地必要数を推定死亡者数に墓地需要率と定住志向率を乗じて算出し、15年後までに9万4000区画の墓地整備が必要としています。需要率を24.7%としていますが、希望する購入先は6割が市営墓地で、公益法人・宗教法人の合計は9.1%だけです。強引なセールスにあるように、民間の高価な墓石式墓地は充分足りているのです。絶対的不足は、存続性のある管理費の安い安心できる市営墓地でありませんか。
 しかし、横浜市は財政難を理由に、現時点では従来型の公営墓地は造らず、民営で賄うとの方針です。規制緩和による墓石主流の民間墓地建設は、市内の貴重な緑地・調整区域の破壊につながるものです。市民は横浜みどりアップ計画と整合性をもつ、環境にやさしい財政負担の少ない樹木葬や共同墓地、さらに都市型納骨堂など、公営の安価で安心できる墓地提供を求めているのです。そうした方向への思い切った転換を図るべきであり、市長の決断が待たれているところです。見解を伺います。

林市長:現在、市営墓地の募集は、戸塚区のメモリアルグリーンで行っていますが、その募集も25年で終了します。また、横浜市墓地問題研究会からは、市営墓地に期待される役割として、比較的安価で市民の誰もが利用できる墓地を提供することが重要との報告をいただいておりますので、こうした点をふまえて、今後の市営墓地整備について検討してまいります。

マンション建設による日照被害などの切実な実態を把握しているか

かわじ議員:次は、市第173号議案、横浜市中高層建築物等の建築及び開発事業に係る住環境の保全等に関する条例についてです。
 近年、市内において、建築基準法に則って、適法に手続きした建築物だとして、住環境悪化を心配する周辺住民に対し、敵対的な態度をとる開発事業者が年々増えています。事業欲をむき出しにしての威圧的な姿勢をとる業者に対し、住民にとってより効力のある条例が求められます。
 条例案は、建築主の責務として、周辺の住環境に十分配慮し、安全で快適な住環境の保全及び形成に努めなければならないとし、市の責務として、地域における住環境の整備に必要な施策を実施し、安全で快適な住環境の保全及び形成に努めなければならないとしています。
 当局説明では2010年度、相談物件のうち住民側の要望に対する事業者側の対応について、概ね半分以上程度の要望が受け入れられたとしていますが、実態は相談件数に対する解決数で、それも説明不足の相談等がほとんどであり、問題の中心をなす日照に関する深刻な事態等が全く浮き彫りになっておりません。
 私は「自宅が完全に日陰になる。事業者に配慮を求めたが、受け入れてもらえない」との相談を受け、事業者説明に一緒に参加しました。しかし日照での配慮は全くなく、ひどいものでした。結局、「住宅の南側は擁壁となり、日が当たらず、布団も干せず、乾燥機を購入した」と、泣き寝入りです。こうした住民の深刻で切実な実態をリアルに把握すべきと思いますが、市長はどのように実態把握されているのか、伺います。

林市長:市第173号議案についてご質問いただきました。
 中高層建築物の建設に伴う住民の声についてですが、本条例は住民説明の義務化やあっせん・調停制度など、住民のみなさまの声を受け止め、調整することにより、紛争の未然防止、建築紛争の円滑な解決を図るものです。これまでも多くのケースで歩み寄りや相互理解が得られ、一定の機能を果たしていると考えています。今回の改正では、制度を運用するなかでみえてきた課題等に対応するため、見直しをはかるものであるため、今後も引き続き住民の皆様からの声を受け止め、適切な対応に努めることにより、良好な近隣関係の保持、安全て快適な住環境の保全・形成を図っていきます。

報告書の完全公開や住民の声が確認申請手続きに反映される仕組みを

かわじ議員:そこで、周辺住民の泣き寝入りを極力減らす実効性ある建築手続きにすべきと考え、以下、提案したいと思います。
 その1は、建築主が建築概要を示した標識を立てた後に提出する市への報告書には、住民への説明状況や周辺住民の日照の影響、プライバシー対策など、環境への配慮が記入されるものです。建築主と周辺住民とのトラブルを極力減らすために、報告書は全文、関係者に公開にすべきではないでしょうか。
 その2は、市長が建築主から報告書を受け、審査し、良好な近隣関係の保持や住環境の保全を図るための意見書も、建築主に、より実効性を持たせるために、利害関係のある住民に公開すべきではないでしょうか。
 その3は、建築主や住民との紛争に伴うあっせんや調停は、互いに歩み寄りが肝心です。自分の計画を絶対として歩み寄ることなく、あっせん調停を打ち切ったり、住民側のあっせん要請に応じないことは、条例の趣旨からしてあってはならないことです。調停が不同意の業者は、住民の住環境への配慮を欠く建築主の歩み寄りの強化となるよう、公表すべきだと思います。
 その4は、良好な近隣関係の保持や住環境の保全の立場から出される市長の意見書は、まちづくりに反映されるべきであり、その内容が確認申請手続きに反映される仕組みを導入すべきと思います。提案に対する市長の見解を伺います。

林市長:住民の声をさらに反映させる仕組みを導入する考えについてですが、報告書および市長意見書を公開する制度の導入については、現在でも市民のみなさまからからの求めに応じて原則開示をしています。また、あっせんや調停の不同意業者の公表および市長意見書の内容を建築確認手続きに反映させる仕組みの導入については、建築主側に一方的に不利益を与えることになり、双方の話し合いによる歩み寄りで紛争解決を図るという本条例の趣旨にそぐわないものと考えています。

住環境悪化の被害を受ける住民の立場に立った対応を

かわじ議員:さらに、市民の中には、問題をどこに相談したらいいか知らない人も多くあり、条例・制度の説明や、住民が身近で相談できる区役所に相談窓口を設けることが重要ではないでしょうか。伺います。また、標識を立てる前に住民に情報を知らせることや、住民説明会に建築主や事業者が立ち会うことを義務付け、住環境悪化の被害を受ける住民の立場に立った対応が求められるものです。市長の見解を伺って、質問を終わります。

林市長:住民への制度等の説明や身近な相談窓口の区役所への設置についてですが、現在、相談窓口として市役所の所管課をお知らせしており、住民のみなさまの相談に応じ、丁寧な対応を心掛けています。また、各区役所では、法律相談やまちづくりについてのご相談などを受けておりまして、今後も区・局で連携をとりながら、住民のみなさんからのご相談に対応していきます。
 標識設置前の住民説明会を実施や、説明会には建築主の立場で責任のある者の立会の義務付けについてですが、建築紛争を未然に防止するためには、標識設置の前後に関らず、建築計画ができた段階で、その内容を速やかにかつ丁寧に住民のみなさまにお知らせすることや、建築主に限らずきちんと計画を説明できる人が出席して、適切に対応していただくことが大切であると考えています。今後も説明時期等に関して、建築主に対し、適切な指導をしていきます。
 以上、河治議員のご質問にご答弁申し上げました。 


新着情報

過去記事一覧

PAGE TOP