河治民夫です。日本共産党を代表し2件の追加議案と3件の請願の不採択に反対し討論を行います。
市第161号議案 横浜市指定障害福祉サービス事業等の人員、設備、運営等の基準に関する条例等の一部改正について、及び市第162号議案 横浜市指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営の基準等に関する条例等の一部改正については、国の法に基づく省令の一部改正に伴うもので、障害福祉サービスや介護老人施設事業者に対し、感染症対策、業務継続、非常災害対策等の強化を図るための指針の整備や訓練の実施等を義務づけるとともに職員要件や配置基準、設置基準を緩和するものです。感染症対策、災害対策は必要な今日的措置でありますが、問題は事業者まかせとしていることです。そして各種要件・基準の緩和は利用者へのサービスの低下を招くものです。以下その内容について述べます。
障害者福祉施設や高齢者福祉施設の現場では、深刻な人手不足の中、ギリギリの人員で日々の業務をこなさなければならない全く余裕のない状態です。新たに感染症や災害対策の指針の整備や研修・訓練の実施等を義務付けるのであれば、事業所への財政的支援を行うべきです。このことに対し市長は「基準の改正等、全体でプラス0.56%の報酬改定が行われるので改正の趣旨を遵守していただく」との答弁でした。報酬改定はあまりにも低いものです。関係者からは「プラス改定になったものの、抜本的な改善からは程遠い」との厳しい指摘です。
公益財団法人 介護労働安全センターが行った2019年度の介護労働実態調査では事業所による運営の問題点として、人材や財源の確保があげられ、「人材の確保が難しい」が56.7%、「今の介護報酬では、人材の確保・定着の十分な賃金を払えない」が47.5%とあります。こうした事業所の状況の改善なしには、感染症対策等の強化にはなりません。
次に個々の議案についてです。
市第161号議案の問題点は、就労移行支援サービスを担う就労支援員の常勤要件を廃止することです。就労移行支援とは、一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害者を対象に、求職活動の支援及び就職後の定着のための支援を行うもので、そこでの中心的な役割を担うのが就労支援員です。
現行の就労支援事業における就労支援員の人員配置基準は、利用者15人に対し1名配置で、支援員1人以上は常勤配置です。議案はこの常勤配置の要件を廃止するもので、非常勤職員2人が一人分の仕事を担うことをよしとするものです。市長は「支援員が就労定着支援事業と兼務することで、別々の提供サービスが同一の支援員となり、よりきめ細かな支援も可能。利用者は安心して働き続けられる」との答弁です。しかし、常勤要件の廃止は利用者にとって、支援の質の低下であることは紛れもない事実です。
市第162号議案については2つの問題点を指摘します。1つは、特別養護老人ホーム等の定員緩和です。施設系サービスである特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院における個室ユニット型施設については、ユニットの入居定員が定められています。現行の「おおむね10人以下」としているものを、「原則としておおむね10人以下とし、15人を超えないもの」とする定員緩和です。それにより職員の担当する入居者が増え、業務量が増えることになれば当然、ケアの質の低下になり看過できません。
2つは、認知症グループホームの夜勤職員体制について緩和です。現行の1ユニットごとに夜勤1人以上の配置から、同じフロアにある3ユニットについては、夜勤2人以上にするというものです。認知症グループホームの職員から、「夜勤体制が緩和されれば、利用者の転倒が多発することになると思う。グループホームは要支援2から要介護5の利用者を対象にしているという事実を軽視しているのではないか」との安全性を危惧する訴えです。夜勤体制は、現行の基準でも人手不足です。終の住処になっている介護施設では、みとり期の利用者も生活しています。施設で利用者の転倒が起きれば、病院へ搬送されることになり、職員はその対応に追われることになります。夜勤体制の緩和は、介護の質の低下のみならず、災害時、救急時の対応水準の悪化を招くことになるものです。
コロナ禍で、人は誰しも、他者によるケアなしに尊厳ある生活をおくれないことが一層明らかになりました。ケア労働の価値が改めて見直された期に人員配置などの緩和はやめるべきです。また、医療・介護・障害福祉などの現場では、労働環境が劣悪で慢性的な人手不足が常態化しています。公益財団法人介護労働安全センターの介護労働実態調査では、事業所による運営の問題点として、人材や財源の確保があげられ、「人材の確保が難しい」は56.7%、「今の介護報酬では、人材の確保・定着の十分な賃金を払えない」は47.5%とあります。また、介護人材の不足感は全体で65.3%。職員の不足理由は他産業に比べて、労働条件が良くない」が52%とあります。また、労働者からは「仕事の内容のわりに賃金が低い」が39.8%とあります。これが介護サービス事業者の置かれている実態です。 感染症対策や災害対策の強化を図るために今必要なことは、研修や訓練が実施できる体制にするための制度改善や財政支援を国に求めることであり、本市独自の手立てをすることです。以上、述べましたように、議案は、サービス事業者に様々な業務の押し付け、従業員の労働強化、利用者に対するサービスの低下をもたらすものであり、認めることはできません。
次は請願についてです。
請願第64号及び請願第67号はIRカジノに関するもので、IR法廃止法案を議論するよう国に求めることと、本市の2021年度予算からIR関連予算の削除を求めるものです。「IRは白紙」と言って当選した市長が一転し誘致表明したことに対し、「カジノの是非を決める住民投票条例制定を求める」署名の有効数は、法定数の3倍超の19万3193筆にもなりました。市長は昨年秋、「賛成反対の直接的意見は付さず議会に委ねる」「住民投票が行われ、市民の多数が反対であれば結果に従う」との発言でした。しかし、条例制定時では「住民投票の意義を見出しがたい」と否定的意見を付与しました。そして、自民党・公明党の反対で条例案は否決となりました。まさに市民の声を市政に反映するという直接民主主義を否定するものです。
現在、新型コロナウイルスの蔓延が続き、緊急事態宣言が解除されたとはいえ、市民生活や生業など多くの市民が生活悪化や収入減収の中で、更なるコロナ対策が必要です。IRカジノは三蜜の事業であり、経済効果や外国人観光客のインバウンドは期待できません。今必要なことは新型コロナ対策であり、IR事業の推進ではありません。IRカジノ事業の予算や職員をコロナ対策や市民生活の事業に振り向け、市民の暮らしを守ることこそ多くの市民が望んでいるものであり、請願は採択すべきものです。
請願第63号は後期高齢者の医療費窓口負担の現状維持を求める、国への意見書提出を求めるものです。政府の狙う「全世代型社会保障」は、高齢者と現役世代を分断し、高齢者へ新たな負担を強いるものです。75歳以上の高齢者の医療費窓口負担について、2割負担の導入を盛り込もうとするものです。その対象者は単身世帯で年収200万円以上の人、及び、夫婦とも75歳以上の世帯で年収320万円以上の人であり、全国で約370万人、30%の人が、該当するものです。
75歳以上の高齢者といえば、最も病気にかかりやすく、治療には何回も通院が必要になり、費用もかかる人たちです。現行の1割負担のもとでも、75歳以上の高齢者は、年収比で、若い世代の4~6倍もの負担率です。負担を苦にした診療抑制に、コロナによる診療抑制が重なっています。
また、75歳以上の人の受診回数は、75歳未満の人に比べて、外来で2.4倍、入院で6.2倍であり、いまでも窓口負担が重くのしかかっています。受け取る年金が年々減らされ厳しい生活であり、必要な医療が保証されていない状態の中で、更なる窓口負担は診療抑制を一層広げるものです。後期高齢者の暮らしと健康、命を守るためにも、国に対し後期高 齢者の医療費窓口負担は現状維持するよう求めることは、議会として当然のことではないでしょうか。請願は、ぜひ採択いただけるよう求めて討論を終わります。