◎白井議員の質問と答弁は次の通りです。なお、実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように対応する質疑と答弁を交互に記載しました。
いまこそ中学校給食実施にむけて調査・検討を
白井議員:私は、日本共産党を代表して市長に質問します。
はじめに、中学校給食実施にむけての検討についてです。
中学校給食実施を求める請願が、多くの署名とともに毎年提出される中、市長は2月の本会議で、弁当は食事を自ら管理する能力を育てるので食育の観点からも意味があると高く評価されました。また、教育委員会も、中学校期は体格、食事量など個人差が大きくなるため、画一的な献立より個々に応じた昼食の方が望ましいと断言していますが、いずれも一面的で局部的指摘に過ぎません。
心身ともに成長期にある中学生にとって、最優先すべきは、成長に必要なさまざまな栄養素をバランスよく摂取することです。栄養士による栄養計算によれば、工夫しても家庭の弁当箱に必要な栄養素は詰めきれません。
また、格差と貧困が広がる中、さまざまな理由で、弁当を持参できない家庭が増えています。その上、校内での業者弁当販売は、持参弁当の代わりとしては保護者・生徒に不評で、1校平均24食にとどまっています。
給食実施に踏み出さない限り、成長するために必要な栄養補給を全ての生徒に保障できません。市長は、「学校給食は、法に基づいて栄養の摂取基準が定められているなど優れた点がある」と評価されています。持参弁当最適論と決別すべきと考えますが、いかがでしょうか。
2005年の食育基本法の制定で、地域の特色を生かした学校給食の実施をうたっており、食育推進基本計画では、学校給食を食育推進のため重要とし、食育の推進が国の重要課題と位置づけられました。2008年の学校給食法改正では、学校における食育の推進のために学校給食を活用することが新たに加わり、学校給食が単なる栄養補給にとどまらず、食の大切さや文化、栄養バランスなどを学ぶ教育の一環であるという趣旨がより明確にされました。
もともと学校給食法は、義務教育諸学校設置者の任務として、「学校給食が実施されるよう努めなければならない」と、実施に向けての努力を義務付けています。
本市は、国の基本計画に沿った「食教育推進計画」を定めたものの、中学校給食実施に向けての取り組みを具体化していません。本市の姿勢は、明らかに国の意向と法の趣旨に背くものと言わざるをえません。市長の見解をうかがいます。
2008年5月1日現在の全国の公立中学校給食実施比率は80.9%で、実施していない自治体は少数です。さらに、ここ数年、全国的にも県内でも中学校給食に踏み出す自治体が増えています。東京都多摩地区では、狛江、国分寺、武蔵野、八王子で始まり、西東京でも来年から、近隣の小学校で調理し、中学校へ運ぶ親子方式で始まります。県内では、厚木、愛川、相模原で始まり、伊勢原でも予定されています。
学校数がほぼ本市と同じ規模の大阪市は、昨年、給食実施を決定しました。給食検討会議を立ち上げて、自校調理方式、給食センター方式、親子方式、デリバリー方式などの費用を試算し、他都市の視察、保護者、小中学生、教職員へのアンケート調査などを行ったうえでの決定です。
このように、全国的には、財政難ではあっても、多様な方法で工夫しながらの実施がひろがっています。本市でも、中学校給食実施に向けて調査委員会を立ち上げ、実施形態等を具体的に検討すべき時期にきています。市長の決意を伺います。
林市長:白井議員のご質問にお答え申し上げます。
中学校給食の実施に向けた検討について、ご質問いただきました。
家庭からの弁当を基本とする考え方についてですが、学校給食は優れた点もあると思いますが、食事を生徒は自らが管理する能力を育てることも重要であり、弁当による昼食については、食育の観点からも意義のあることだと思います。
食育への横浜市の対応についてですが、教育委員会では、平成19年度に食育教育推進計画を策定し、この計画に基づき、各学校において様々な機会をとらえて食育を推進しており、国の方針と矛盾するものではありません。また、現在、横浜市食育推進計画を策定中ですが、これらの取組を通して横浜市全体で食育の推進を図ってまいります。
中学校給食の実施に向けた検討についてですが、先ほど申し上げました食育の観点や本市の厳しい財政状況を踏まえ、様々な視点から慎重に考える必要があると思います。
「つくる会」以外の中学校歴史教科書は自虐的か?
白井議員:次に、自由社版中学校歴史教科書に関わっての市長の歴史認識についてです。
「新しい歴史教科書をつくる会」が編集した自由社版教科書が市内8区の中学1年生に配付され、私の息子も受け取りました。代表執筆者の藤岡信勝氏は、自由社版教科書の全文を収録した「日本人の歴史教科書」の巻頭で、他社発行教科書を自虐史観と決めつけ、「歴史を学んだ子どもが日本に誇りをもてなくなり、正義感の強い子どもほど自国を憎むようになるのも当然です」と、徹底批判しています。今田教育委員長は、「日本に生まれたことを悲しませるような歴史教科書はだめだ」と、同じように発言されています。この論理でいくと、「つくる会」以外の教科書で学んできた、または学んでいる本市の中学生も同様に自国憎悪感にとらわれることになってしまいます。「つくる会」教科書以外の教科書は自虐的と考えるのか、その点で市長の評価はどういうものか、伺います。
自由社版教科書では、台湾の植民地化や朝鮮併合は開発、近代化に貢献した、太平洋戦争を大東亜戦争と表記し、植民地化で独立に寄与したと肯定的な評価をし、日本の侵略と戦争はやむをえない自存自衛のためであったとしています。
一方、日本政府の公式見解である1995年の村山談話では、「わが国は植民地支配と侵略によって、多くの国々に多大の損害と苦痛を与えた。ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明する」と、日本の侵略戦争と植民地支配を謝罪しており、明らかに自由社版教科書の認識とは異なります。
国際港都横浜の市長として、歴史認識をどうもたれるのかは重要です。そこで市長の村山談話と太平洋戦争への認識を伺います。
小泉元首相の靖国神社参拝や、「新しい歴史教科書をつくる会」教科書の検定初合格を受けて、小泉元首相と金大中元大統領の合意で始まった日韓歴史共同研究委員会が今年3月に出した第2期の報告書では、「つくる会」教科書についても言及しています。新聞報道によると、韓国側は、「叙述が極端だ。最も右翼色が強い」と警戒感をあらわにしたとしています。一方、日本側は、「国内世論、学校現場も『つくる会』教科書には冷淡だ、採択率が低く影響力はほとんどない。多くの日本国民の支持を得ていない」としています。評価が低いのは本市においても同じで、事実、教科書取扱審議会での評価は厳しく、「つくる会」にとっては冷淡な答申をしています。
「つくる会」が編集した自由社版を採択したのは全国では本市だけで、8区で約1万7000人の中学生がこの教科書で学ばされます。大きな影響力があります。
羽田新滑走路も活用した国際的な観光、MICE都市をめざす本市は、国際港を有し、日本一の中華街があり、上海などの姉妹友好都市や釜山などのパートナ都市との友好関係を重視し、多文化共生社会の推進を標榜しています。また、本市の外国人登録者数は7万8671人で、中国が約42%、韓国・朝鮮が約20%です。日韓歴史共同研究委員会で韓国側が警戒し、日本側がその影響を懸念する教科書の使用は、国際都市横浜にマイナスの作用をもたらすことが危惧されます。市長の認識をうかがいます。
林市長:中学歴史教科書にかかわっての歴史認識について、ご質問いただきました。
「教科書をつくる会」以外の歴史教科書に対する評価ですが、教科書発行者がどこであれ、文部科学大臣の検定を経ている教科書は、いずれも厳正なる審査を経ており、横浜市教育委員会の権限と責任において、公平公正に採択されたもので、子どもの学習にとって適切な教科書であると理解をしております。
村山談話と第2次世界大戦に関する見解ですが、村山談話は、先の大戦が終わりを告げてから50年目の終戦記念日にあたって、当時の村山内閣総理大臣から出された談話であり、その後の内閣においても、その考え方は引き継がれているものと理解しております。私も、我が国責任ある国際社会の一員として、国際協調を促進し、平和の理念と民主主義を大切にしていかなければならないと考えております。
自由社版歴史教科書の使用についての見解ですが、本市の教科書は、国際社会に寄与する、開かれた心を育成するなどを目指した横浜教育ビジョン、この趣旨を尊重し、横浜市教科書採択の基本方針に基づいて、教育委員会の責任と権限において、採択されたものと理解しております。各学校においては当然、採択された教科書が適切に使用されているものと考えております。
東部方面線は住民の不安をそのままに一方的に進めるな
白井議員:つづいて、神奈川東部方面線の相鉄・東急直通線についてです。
神奈川東部方面線として相鉄・JR直通線の鉄道整備が始まり、あわせて相鉄・東急直通線の計画があります。法に基づく環境影響評価により、事業者が作成した方法書に対し、綱島温泉のラジウム鉱泉源がボーリング調査や地下路線工事により傷つき枯渇しないか、地下水位や水流の変化により地盤沈下はないか、地下のガス田や断層群への影響の有無などの懸念が住民から寄せられています。これらについての市長意見、また県知事意見の内容はどのようなものか、伺います。
今後、事業者が具体的な調査・予測・評価を行うに当たり、住民の懸念を払拭する対策と、不測の事態発生の場合の、住民が納得する対応が求められます。都市計画決定の手続きも進められおり、決定権者は横浜市です。住民の立場に立つ市長として、住民の不安にどう対応するのか伺います。
住民の懸念や不安をそのままにして、一方的に事業をすすめることのないよう申し上げて、質問を終わります。
林市長:神奈川東部方面線の相鉄・東急直通線について、ご質問いただきました。
環境影響評価手続きにおける市長意見、知事意見ですが、まず、横浜市環境影響評価審査会の答申を踏まえた市長意見を県に提出いたしました。その内容といたしましては、温泉の位置や利用状況についての調査、地盤および地下水の変動調査、監視体制の検討、東関東天然ガス田についての情報収集および安全対策などを、環境影響評価準備書に記載する必要があるとしています。
県では、この市長意見をふまえ、神奈川県環境影響評価審査会の答申をもとに、環境影響評価方法書に対する知事意見をまとめており、横浜市から提出した市長意見と同様の内容となっております。
住民の懸念への対応をどう担保するかについてですが、まず、今後の環境影響評価手続きの中で、環境保全措置の方策をお示しし、説明会などを行うとともに、市民のみなさまのご意見をいただきます。その後、神奈川県と本市の審査会において、専門的な見地から審議をいただき、最終的に環境保全の対策を評価書の中に取りまとめてまいります。さらに、事業の実施に際しては、事業者と連携しながら、節目ごとに市民のみなさまへの説明を行い、環境保全の対策を十分に行ってまいります。
なお、事業に伴って、予測していない事象を生じた場合には、事業者とともに速やかに対策を講じるなど、適切に対応してまいります。
訂正をさせていただきます。先ほど述べました神奈川東部方面線の相鉄・東急直通線についてご質問をいただいた際に、市長意見の提出をさせていただいて、その内容をご説明申しましたが、3点目、南関東天然ガス田という本来「南」と申し上げなくてはいけないのに「東」と言い誤りまして、申し訳ございません。訂正をさせていただきます。南関東天然ガス田についての情報収集および安全対策でございます。失礼いたしました。
白井議員のご質問にお答え申し上げました。