※実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように、対応する質疑と答弁を交互に記載しました。
河治議員:私は日本共産党を代表し、今定例会に提案された議案のうち、2件の議案について市長に質問いたします。
権利濫用を理由に情報開示請求を阻害するな
最初に市第109号議案 横浜市の保有する情報の公開に関する条例の一部改正についてです。
先に質問もありましたが、別の角度から質問をいたします。
議案は、情報公開において、業務妨害や職員へのいやがらせなどと思われる常識を逸脱した開示請求が発生しているため、情報公開の権利の濫用の禁止および濫用に該当する請求を拒否できる旨を条例に加えるものです。
横浜市情報公開・個人情報保護審査会は、近年、開示請求者の責務に反するものではないかと思われる請求が繰り返されることから、昨年7月に「行政文書開示請求権の適正な利用について」という意見書を市長に提出し、それを受けて市長からの諮問について、昨年12月に権利濫用の禁止と請求拒否を条例に明記すべきとの答申を出しました。
情報公開制度は、横浜市が市政に関して市民に説明する責任を全うし、公正で民主的な市政を推進するために創設されたものであり、権利濫用を理由として、開示請求権を阻害するものであってはなりません。
たとえば、開示請求するものが、職員とやり取りして文書を特定しようとしても職員に趣旨が伝わらず、「○○に関するすべての文書」と開示請求せざるを得ない場合は、職員から過大な請求だと受け取られかねません。また、行政の不正を明らかにするための請求に対し、行政に不利になるとして、職員の協力が得られない場合などは、「濫用」と判断されかねません。
濫用禁止と請求拒否を条例に規定することについて、市民団体から「条例改正は、権利濫用を理由とする請求拒否を積極的に肯定する意味を持」つとして、慎重な対応を求める旨の意見書が提出されています。
濫用禁止規定の運用基準は、裁判例などを参考として、市民意見等を伺いながら定めるとしていますが、これでは行政の都合のよい基準になりかねません。何をもって濫用とするかという情報公開にとって根幹を成す部分は、条例にはっきり明記し、議会の議決を得るべきです。なぜ、そうしないのか。先ほど他の会派から運用について条例で明文化すべきだがどうかとの質問がありましたが、市長の答弁はありませんでした。明確にお答えください。
林市長:河治議員のご質問にお答え申し上げます。
市第109号議案について、ご質問をいただきました。
濫用禁止規定の運用基準は、条例に盛り込むべきとのことですが、この運用基準は、横浜市行政手続き条例第5条に規定する審査基準に該当するものであり、他の非開示事由などの運用基準と同様に、条例の解釈・運用の手引きに規定し、公表することを考えております。なお、この運用基準の内容については、現在検討中ですが、審査会からの意見書や判例等を参考として定めていきたいと考えています。
河治議員:審査会の意見書でも「権利濫用に該当する開示請求の事例を一般的に示すことは困難」としており、市民団体も「権利濫用を名目に必要な請求が拒否されかねない」と懸念しています。運用基準を定めても、濫用にあたるかどうかは、現場の担当部署の職員の判断によることになります。市民団体は、「これまでの実際の運用で、職員が請求範囲を限定するように執拗に要求することがしばしばある」とも述べています。
こうしたことから、条例で濫用禁止を規定することは、行政の恣意的な運用につながりかねないと思いますがどうか、また、それをどのようにして回避するのか、伺います。
林市長:濫用禁止規定の恣意的運用を回避すべきとのことですが、特定の開示請求が権利濫用に該当するか否かについては、広く市民のみなさまの意見を伺って策定する統一的な運用基準により、公正公平に運用してまいります。
河治議員:審査会の答申では、「権利濫用の法理は法の一般原則であり、条例に明文の規定がなくても適用することはできる」と述べています。
また、条例に「濫用禁止」を規定している自治体は、千葉県、三重県、富山県、福岡市などいくつかありますが、その多くは請求拒否まで盛り込んでいません。審査会の答申では、なぜ拒否を明記すべきかの説明はありません。「請求拒否」を明記することは、行政の都合で「請求拒否」の乱発をまねく危険性もあります。
条例第4条で利用者の責務が定められており、あえて「権利濫用」の文言を加えなくても、開示請求を拒否できるものです。
条例を改正しなくても、濫用を防ぐことが出来、したがって請求拒否の明文化も必要ないのに、なぜ条文化するのか、伺います。
林市長:本市で開示拒否規定を定める理由についてですが、行政処分としての性格を明らかにすることにより、行政不服審査の対象となることを明確にしたものです。
これ以上の市立保育所の民間移管はやめよ
河治議員:次は、市第110号議案 横浜市保育所条例の一部改正についてです。
本議案は、下永谷保育園など4つの横浜市立保育所を民間移管するために、条例から削除しようとするものです。横浜市では、保育ニーズの多様性などを理由に、2004年から毎年4園ずつ、計24園まで民間移管しました。そして、2011年からまた民間移管を続行する方針です。
市長は、選挙時に市民団体が行った保育所の運営主体にかかわる公開質問に関して、わが党が昨年の決算特別委員会・総合審査で行った質問に対し、「行政の責任において質の高い保育サービスを提供するという意味であって、必ずしも実施主体が行政に限るという意味ではない」と答えています。しかし、公開質問に対して市長は、「基本的には保育所は公でやるのが最善」と答えています。
本市は、昨年9月に「市立保育所のあり方について」で、各区3か所程度の市立保育所を地域基幹保育所として、残りはすべて民間移管等の対象にするという方針を出しました。この方針は前市長の意向を受けたものだと思われますが、林市長が行った公開質問への回答の立場に立つなら、市立保育所の半減ともなる「市立保育園のあり方について」の方針は撤回すべきと思いますが、どうか、伺います。
林市長:市第110号議案について、ご質問をいただきました。
横浜市の民営化、民間委託化問題を考える懇談会からの公開アンケートに対しまして、「基本的には保育所は公でやるのが最善と考えており、質の高い保育サービスの提供に向け、行政が責任をもって行うべきである」とお答えしております。この「公でやる」ということについては、行政の責任において、保育に欠ける児童に対して質の高い保育サービスを提供するという意味であって、必ずしも実施主体を行政に限るという意味ではありません。
市立保育所の民間移管につきましては、厳しい財政状況のなかで、多様な保育ニーズに迅速かつ効率的に対応するためには、進めていく必要があるものと考えております。
河治議員:今、保育園ではさまざまな問題が起きており、民間園では保育の質にかかわる看過できない事態が生まれています。
昨年、横浜市では、株式会社が、港北区と中区で運営していた認可保育所2園を年度途中で他の株式会社にまるごと譲渡し、子どもやその保護者、職員に大きな混乱や悪影響を与えたという事件がありました。現在は新法人に移って運営されていますが、中区の保育所では、日の当たらない保育室、園庭は屋上だけという環境は何ら変わっておりません。
また、仙台市の福祉法人が運営する保育所で、職員が保育方針や処遇などを問題にし、相次いで退職し、子どもたちに悪影響を与えたと報道されています。
最近、わが団に保育園に関して寄せられた相談を紹介します。緑区のある社会福祉法人の運営する認可保育園では、長年にわたり、保育士が夫妻である園長と主任から、大声で怒鳴られたり、罵声を浴びせられ、長時間にわたるいじめや嫌がらせで、恐怖におののき、自主退職に追い込まれるケースが続いており、先日も11か月間まで勤務した保育士がやめ、現在、保育士の最長勤務月数はわずか4か月だということです。園長と主任が興奮して、机を蹴飛ばしながらの職員への罵声が、保護者や子どもの前でも起きており、子どもたちが園に行きたがらないなどの悪影響が出ていることを見かねた保護者が解決を求めて横浜市に通報しても、園側が指導に従わず、これまでの市の対応ではきわめて不十分とのことです。
こうした事態が解決されずに、長年続いているのは、廃園によって子どもたちが行き場を失うことを理由に、保育内容のチェックを担う部署が、指導に及び腰になっているからです。
横浜市は認可保育所を認可する自治体として、定期的に保育所の監査を行う義務が課せられています。林市長には民間保育園の現場で起きているこれらの実体や問題を認識してほしいと思うものです。
そこで、市長は、先に述べたような民間認可保育所の運営状況について、どのように認識しておられるのでしょうか。また、横浜市のこのような実態をどのようにして把握し、さらに、これらの事件を未然に防ぐために、市はどのようにすべきと思っておられるのか、林市長のお考えを伺います。
林市長:民間認可保育所の運営状況への認識と把握についてですが、本市では年1回、指導・監査により、保育内容や会計処理が適正に行われているかを確認しています。また、日々の運営のなかで、園においてトラブル等が発生した場合については、区が随時立ち入り調査等を行うことで、運営状況の把握に努めており、児童の処遇に大きな影響を与えるような事例については、報告を受けています。児童の保育に影響のある園への対処につきましては、日々の保育所運営が適正に行われるよう、区・局が連携して運営指導を行っています。また、指導監査において、改善に向けた指導を行うとともに、最低基準に達しない時は設置者に対し、改善勧告などを行います。
河治議員:そもそも、先に述べたような問題等は、民間であるがゆえに、行政の指導が徹底しきれずに起こっているものだと思います。この際、これ以上の市立保育所の民間移管はやめ、高い保育の質を示すモデルとして、市立保育所の役割を果たすべきだと思いますがどうか伺いまして、私の質問を終わります。
林市長:保育所の民間移管事業についてですが、移管先法人の選考にあたっては、学識経験者などからなる法人選考委員会が実地調査等を行ったうえで、実績のある優良な法人を選んでいます。移管の際には、基本的に当該園で行われている保育を引き継ぐことを移管条件とし、保護者代表、法人、横浜市からなる3者協議会において、移管条件が遵守されているかを確認するなど、移管後の保育が良好に行われるよう、協議しています。
また、民間移管された園を対象に20年3月に実施したアンケートでは、およそ9割の保護者が移管園の保育内容に、満足、どちらかといえば満足と回答しておられます。
以上、ご質問にお答えいたしました。