2018年6月21日
横浜市長 林 文子 様
日本共産党横浜市会議員団
団長 荒木由美子
はじめに
横浜都市交通計画の改訂作業の一環で、「改訂素案」に対するパブリックコメントが実施中です。この機会に、日本共産党横浜市会議員団として、「横浜都市交通計画改訂素案」(以下、「改訂素案」)に対する見解と提案を申し入れます。
昨今の社会的要請は、バリアフリーの推進やユニバーサルデザインのまちづくり等を喫緊の課題としています。一方、本市の交通・移動に係る現状は、買い物・通院難民といわれる高齢者、段差、階段などで自由に外出できない障害者などが、交通・移動の自由を享受できない状態で生活している深刻な実態があります。
公表された「改訂素案」について、日本共産党横浜市会議員団の見解の主なものについて述べます。
一、「改訂素案の問題点」
(1)「交通政策基本法」に位置づけられた、「交通は、国民の日常生活に欠くことのできないもの」(第二条)、「国民の日常生活の基盤」(第三条)、及び、「交通施策の推進は、国及び地方公共団体の責務」(第一条)との基本認識が「改定素案」に明記されていません。
特に推進体制で『市は調整役』としており、責務を認識しないものであり看過できません。
(2)必要性が高まっている地域交通サポート事業は、独自の項目が無く位置づけられていないことは問題です。中期4か年計画2018~2021(素案)には、実施目標37地区としていますが、現在、実施中13地区(内1地区は10月撤退見込)で、継続自体が困難を極めており、目標達成は見通せていません。
また、バリアフリーのまちづくりの推進では、都心臨海部の一部などを除けば、市内全域で事業は推進できておらず、計画があっても内容、規模において、市民の要望と大きなかい離があります。
(3)交通基盤の維持・更新・長寿命化、安全性確保等々が焦眉の課題です。そのためには、大きな財政出動が必要ですが、必要な予算確保の方針について言及がありません。
二、交通政策についての日本共産党の提案
交通は、人やモノの交流や活動を支え、市民が生活するうえで不可欠の基盤です。
交通・移動の権利は、日本国憲法が保障した居住・移転の自由(第22条)、生存権(第25条)、幸福追求権(第13条)など関連する人権を集合した「新しい人権」です。
交通計画の根拠法「交通政策基本法」は、国民に「交通、移動の権利を保障すること」やそのための施策を講じることが「国・市の責務」と定めています。
こうした交通、移動に係る「基本理念」をふまえた「交通計画」の策定が求められます。
日本共産党横浜市会議員団は、「横浜都市交通計画」の改訂にあたり、次のことを提案します。
(1)地域交通の確保・充実
地域交通の維持・確保・改善・充実は、喫緊の重要課題です。
「バス路線」は、住民のかけがえのない足・移動手段です。増便、不便地域に路線の新設などに積極的に取り組むべきです。さらに、不採算路線への財政支援を明記すること。
地域交通サポート事業は、現在実施している地区でも、継続すること自体が極めて困難であり、運行経費への公費投入など、特段の財政支援が必要です。財政的支援策を計画に盛り込むこと。
(2)バリアフリー化事業の一層の推進
2006年に制定された、バリアフリー法(バリアフリー新法)の「誰もが自由かつ安全に移動・利用することは基本的権利である」という「理念」の実現に向け、交通・移動の権利を保障しうる施策を実施すること。
「バリアフリーの一層の推進」に向けた主な施策・事業は、数値目標を明確にし、本市が責任をもって計画的、確実に実施すること。
(3)通学路の安全確保
通学路の安全対策を「歩行空間・自転車の利用環境の整備」の一部として扱うのでなく、通学路の安全対策を施策・事業として独自項目を掲げること。
さらに具体的には、学校の半径500m以内の道路は、時速30キロに制限し(「ゾーン30」規制)、速度違反には一般道路の2倍の反則金を科すなど徹底した安全対策を講じることを国、警察など関係機関に働きかけること。
(4)交通政策の「基本理念」の明記
自由な交通・移動の権利は、「市民の基本的権利」であること、及び、これを保障することが「本市の責務」であることを、「改訂案」に明記すること。