議会での質問・討論(詳細)
2009年12月3日

【2009年第4回定例会】「一般質問」 河治民夫

※実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように、対応する質疑と答弁を交互に記載しました。

河治議員:私は日本共産党を代表し、林市長に質問いたします。

予算編成にあたって市長のいう「無駄」とは何か

 はじめに、2010年度予算編成の基本方針についてです。
 11月20日、日本経済は「緩やかなデフレ状況にある」と、政府はデフレ宣言をしました。持続的な物価下落が企業収益を悪化させ、さらなる賃下げや失業増など、今後の市内経済と市民生活への影響が危惧されます。そして市民は、「我慢できるものは買い控え、少しでも安いものを」と、生活防衛に必死です。このような状況の中で、来年度の予算編成は、まず市民生活を守るための施策を最優先とし、そのために不必要な支出を抑え、財源を確保していく立場が重要です。
 そこで、予算編成の基本方針では、「無駄な経費がないか厳しくチェックする」としていますが、市長の言う「無駄」とは何か、伺います。

林市長:ただいまのご質問にお答えいたします。
 平成22年度予算編成についてご質問をいただきました。
 無駄についての考え方ですが、横浜市は基礎自治体として市民サービスを直接提供する役割を担っていることから、全く必要がないという事業はほとんどないと思いますが、相対的にあるいは比較的にみて、より効率的にできるのではないかといった視点からの無駄ということがあると思います。
 たとえば、時代の変化に伴い、当初の目的や役割が終了しているもの、費用に対して効果や利益が多数の市民に広く及んでいないもの、他の方法で実施することでより高い効果が得られるもの、目的等が他の事業と重複しているものなどがあげられると考えています。

市民のくらしの充実のために大型開発は中止・凍結すべき

河治議員:市長は「市政運営の基本的な考え方」で、5つの方向性を示し、中でも特に市民生活に直結した分野として、「市民のくらしの充実」、「現場目線でぬくもりある行政サービスへ」を重視するとしています。今後は急激な景気回復も見込めず、個人市民税・法人市民税の大幅な減収により、530億円の収支不足が見込まれるとする中、「市民のくらしの充実」を優先とするなら、今、直ちに必要といえない巨額な市税投入を伴う「横浜駅周辺大改造計画」や「関内地区再開発事業」などは中止もしくは凍結すべきですが、市長自らの思いを伺います。

林市長:市民のくらしの充実のために、大型開発は中止もしくは凍結すべきとの考えについてですが、現在進めている社会資本の整備については、いずれも市民生活や市内の経済活動を支えるために必要なものです。しかしながら、危機的な財政状況にありますので、予算編成に際しては、他の行政サービスともあわせ、全市的な視点から、緊急度や投資効果を見極めながら進めていきます。

企業会計等の赤字解消期間を延長して捻出した財源を
市民生活の充実に充てよ

河治議員:第3回定例会の一般質問で、わが党は「地下鉄など特別会計や公営企業会計の債務をできる限り長期に返済」して、市民生活を守るよう質問した際、市長は「安易な先送りは慎むべき」との答弁でした。税収が厳しい中で市民生活を守るため、予算編成に際しては、赤字を補填するための一般会計からの繰り入れ期間の延長に再考すべきと思うが、伺います。

林市長:特別会計、企業会計との借入金を早期に返済せず、市民生活の充実に充てるべきとの考えについてですが、これまでも一般会計の債務にとどまらず、市税等で償還する必要がある特別会計、公営企業会計、および外郭団体の債務については、計画的に一般会計予算に計上してきました。厳しい財政状況にあっても、市民生活を守るという気概を持って取り組んでいきますが、本市全体の中長的な財政の健全性の確立により、いまの市民生活だけでなく、将来の市民生活も守らなければならないという観点から、安易に債務を先送りすることは慎むべきと考えています。

保育所の最低基準の引き下げは保育の質の低下に

河治議員:次は、保育行政についてです。
 「生活が厳しく、働きたくても保育園に入れない」待機児童の問題は深刻です。今年3月、厚労省の委託研究・全国社会福祉協議会は、「機能面に着目した保育所の環境空間にかかる研究事業総合報告書」で、「少なくとも現行の最低基準以上のものとなるよう取り組み」を求めています。保育園の面積の縮小が保育の質の低下になるからです。
 8都県市は協同し、国に対して「待機児童解消に向けた保育所設置基準等の見直しに関する要望」書を提出しました。要望書には、「保育所の施設整備に関する基準については、全国一律の最低基準という位置づけを見直し」、「地方自治体の創意工夫が生かせる施策にすること」とありますが、具体的にどういうことを考えているのか、伺います。また、今でも世界的にみて最低レベルの面積基準をさらに引き下げることになる規制緩和に関わって、「保育の質」の担保をどのように考えているのか、伺います。

林市長:保育行政について、ご質問いただきました。
 規制緩和に対する地方自治体の創意工夫ですが、本市では8都県市首脳会議を通じて、全国一律の最低基準という位置づけを見直し、国は標準を示すにとどめ、地方自治体が条例により決定しうるなど、地方自治体の創意工夫が生かせるような方策にするよう、国へ要望しています。地方自治体の創意工夫とは、地域の実情に応じて、保育施策を主体的に展開できるということです。
 保育の質の担保についてですが、施設の設備内容や、職員配置数などは、保育所運営の質に大きく変わりますので、適正かつ良質な保育所運営ができるような水準を保つべきと考えており、現場の職員の意見や市民の方のご意見をいただきながら、保育行政を進めてまいります。

市立保育園にアルバイトではなく正規職員配置を

河治議員:横浜市は待機児の解消策の一つに、市立保育園で定員を上回る園児を受け入れ、保育補助員としてアルバイト職員を配置しています。定員外入所が一時的ではなく、何年も続くのであれば、入所定員数を定員外の入所も加えた数に改め、正規職員を配置するなどして、安定した質の高い保育を保障すべきと思うが、伺います。

林市長:定員外入所に正規職員を配置することについてですが、市立保育所では国の配置基準に加え、予備保育士を定員規模に応じて配置しています。定員以外での受け入れについては、児童数に柔軟に対応するため、アルバイト保育士を配置しています。

保育所待機児解消の決め手は保育所の増設

河治議員:本市は待機児の解消に取り組んできたものの追いつかず、今年4月で1290人となっており、特に2歳児以下が多く残されています。解消策は保育所の増設が決めてです。町田市は保育所の新設誘導策として「20年間期間限定認可保育所」の制度をつくりました。土地所有者が市から3000万円の補助金を受けて建物を建て、社会福祉法人がそれを借り、20年間保育所を運営するという制度です。期間を20年間に限定することで、運営する側は少子化による将来の経営不安は解消され、土地所有者もその期間は安定した賃貸収入になるとのことです。町田市によれば、初期投資は5分の1以下ですむとのことです。
 そこで、本市も町田市の例にならい、2歳児以下の保育ニーズの高い部分に応じた、保育所設置をさまざまな工夫を凝らして進めるべきだと思うが、伺います。

林市長: 待機児童対策について、保育所整備を基本として既存保育資源の活用など、あらゆる手法を用いて進めていきます。特に待機児童が多い、0から2歳児対策としては、横浜保育室の整備費助成や運営費等の助成を拡充し、新たな算入促進を図ります。また、認可保育所の通園の利便性を高めるため、通園バス購入助成に加え、複数の保育所と駅を循環し、送迎を行う送迎保育ステーションを設けるなど、新たな施策にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。

年度途中で運営主体が変わった保育所を認可した市の責任は重大

河治議員:株式会社エキスパートシステムは、2005年に中区で馬車道保育園を整備・開園、2006年度港北区でゆめみらい保育園を整備・開園しました。馬車道園の園長と運営法人エキスパートシステムの社長は、馬車道園が借りていたビルの親会社の社長と同一人物でした。
 親会社は、2008年に、国と本市から保育園が賃貸するビルを差し押さえられ、経営破綻状況にあります。それに関わってか、監査で、ずさんな会計処理で、運営費の使途の改善・是正を再三指導されていました。保育士の入れ替わりが激しく、不安を感じた保護者が園長に説明を求めても、納得のできる説明が得られず、結局ゆめみらい園は10月から、馬車道園は12月から同一別法人に引き継がれました。年度途中に運営主体が変わるなど、この法人に園の運営の資格や能力がなかったことが実証されたわけで、認可権者の市の責任は重大です。株式会社エキスパートシステムを認可した責任をどのように受け止めているのか、伺います。

林市長:認可した責任の認識についてですが、ゆめみらい、馬車道保育園については、児童福祉施設の認可基準などの法令に基づく基準に適合していましたので、認可しました。また、認可後は、施設への定期監査や日常的な運営指導などを行うことで、認可した保育所が安定した運営ができるよう、監督・指導しています。

貸付金として不正に処理した運営金は市に返却させよ

河治議員:最初に譲渡されたゆめみらい園の受けた2007年度の補助金のうち、3146万円が貸付金として期末に至るまでも精算されずに、収支報告・財務諸表に計上されています。そもそも貸付金は、期中のみ認められているものであり、期末には精算されていなければいけない費目です。事業を継承したJPホールディングスは、決算報告書でゆめみらい園を8000万円で譲り受けたと公表しています。貸付金の使途が園の運営に無関係であれば、本市は返却を求めるべきだと思います。先の決算審査で、当該局長はこの貸付金の貸付先や使途について調査を約束されましたが、その後の調査でどこまで明らかになったのか、伺います。

林市長:当該法人の貸付金につきましては、当該法人は二つの保育所を経営していたために、資金が両施設の間、運営法人本部と施設の間で複雑に移動していました。そのため、貸付金を含めた施設および運営法人の決裁書類については、過年度分までさかのぼり、現在局において精査しています。

本市独自で保育運営費の厳格な運営基準を

河治議員:保育運営費は保育士などの人件費や給食の食材費に使われるものですが、市との事前協議により、運営費の4分の1までは弾力的運用として、家賃や修繕費などの目的外の使用が限定的に認められています。本市の事前協議がなく、ゆめみらい園は1165万円、馬車道園には1219万9490円の認められない弾力運用が監査で明るみになっています。弾力運用は国が認めるところですが、園の運営に必要な経費を公費として出しているわけですから、極めて限定すべきです。貸付金の期中といえども、安易な使途は認めるべきではありません。弾力運用と貸付金については、園の運営を円滑に進めるために、国基準ではなく、本市独自の厳格な運営基準を持つべきだと思うが、伺います。

林市長:保育所運営費の弾力運用等について、厳格な運用基準を本市独自に設定すべきということについてですが、保育所運営費については、財源に国費が入っていることもあり、本市としては国が定める基準にしたがって、弾力運用や貸付金等の処理を行っています。なお、国の基準を運営するにあたり、厳格な指導・監査を実施するとともに、基準違反がある場合には、改善に向けた指導を徹底しています。

景気に左右される営利企業による保育所認可は慎重に

河治議員:営利企業は景気動向に大きく左右されることから、営利企業の認可条件には過去3年を目途に経営状況も審査の対象としています。しかし今回の例は、運営法人を設立した親会社が経営不振に陥ったことが全てです。認可の審査に当たっては、運営法人だけでなく、親会社の財務状況も審査すべきであり、そのためには財務に精通した人を加えるべきと思うがどうか、また再発防止をどのように考えているのか、伺います。

林市長:認可の審査に、財務に精通した人を加えることと、再発防止についてですが、国の審査基準によると直近の会計年度において、3年以上連続して損失を計上している場合は、財務内容が適正ではないとされています。現在本市では、過去3期のうち2期損失を計上している場合についても、財務内容が適正ではないとしており、国の基準より厳しい審査を行っています。さらに、企業に対する認可の審査にあたっては、中小企業診断士による財務分析を行い、認可の判断材料としています。認可後、年度途中などで保育園が廃止とならないよう、定期的な指導・監査や運営指導のほかに、保護者や保育園と本市とが日常的に連絡を取り合いながら、運営上生じる様々な課題をクリアしていきたいと考えています。

本市独自で保育の場にふさわしい園庭・調理室・日照・近隣公園の基準を

河治議員:今回、新法人に移った馬車道園の園庭要件は、国や本市の基準をクリアしていると聞いています。しかし、保護者からは、「子ども達は10分くらい歩いて、横浜公園や赤レンガ倉庫に行っている」と聞いています。実態は、本市基準の「子どもの足で5分程度の範囲」の2倍になっています。調理室は狭くて大変。一階の保育室は日照がほとんどなく、保育園の環境が問われます。
 保育園は、子どもが日中ほとんどを過ごす場所です。園庭や調理室、日照などは、国基準をよしとせず、保育の場所にふさわしい、近隣公園の規定については距離の明示化など、本市独自の面積・距離・日照時間の基準を設けるべきだと思います。市長に見解を伺いまして、私の質問を終わります。

林市長:認可に当たって、園庭の面積基準などを市独自に数値として示すということですが、本市では独自に園庭の面積基準や保育士の配置基準を設定しています。これらを保育所整備の手引きとして取りまとめ、保育所整備を希望する事業者・法人などへ案内しています。
 以上、お答え申し上げました。


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