日本共産党横浜市会議員団
団長 荒木 由美子
「(仮称)横浜市住宅宿泊事業に関する条例」骨子に対する日本共産党の見解
今年6月に「住宅宿泊事業法」所謂「民泊」新法が成立しました。この法は、住宅を利用して宿泊させる事業を新たに認めるものです。民泊に活用できる住宅の年間提供日数の上限は180日と定めました。これまでは宿泊は、旅館業法で、衛生や安全確保などの基準に適合し、許可されたものに限定されていました。新法では届け出さえすれば、民泊の営業を認めることを基本原則としました。
日本共産党は、この法による住宅での宿泊業の解禁は、宿泊者・周辺住民などの安全を脅かしかねないものであるとして反対しました。
法では、自治体の権限として、民泊事業者に対して、必要に応じて、業務改善命令や業務停止、立入検査等を可能としました。そして、騒音の発生やその他の事象による生活環境の悪化防止のため、合理的に必要と認められる限度において、地方自治体が、条例により、区域を定めて、住宅宿泊業を実施する期間の制限を可能としました。
横浜市は、法や政令に基づき2018年3月から住宅宿泊事業者の届け出がされるという切迫した状況の中で、期間制限区域と制限内容を規定する条例の制定をめざして骨子を示し、12月26日までの期限で市民からの意見を募集しています。
市の条例骨子では、低層住居専用地域についてのみ、規制をかけ、平日の月曜日から木曜日(祝日等を除く)の営業を禁じました。他は、法の適用で自由営業です。横浜市における低層住居専用地域は市街化区域の41%をしめ、良好な住居の環境を保護するための地域であり、店舗や事務所、宿泊施設等の立地がもともと制限されています。休日は、こどもたちが地域で遊び、多くの住民が最も安らぐ時でもあります。ここでの営業を認めることは、市自身が、住民に保障していることと矛盾しています。
現在、横浜市は「地震火災対策方針」で「燃えにくい街・燃え広がらないまち」の重点対策地域として住宅が密集する地域1,143haを指定しています。指定地域の86%を占める南・中・西・神奈川の4つ区に、横浜市が調査した民泊施設が集中しています。消防庁は、「住宅宿泊事業法」に関わって、民泊施設の消防用設備設置基準を設けていますが、民泊スペースが50㎡以下の場合は、消防用設備の設置を不要とし、150㎡以下の場合は、消火器設置を不要としています。この規定は、広大な密集住宅市街地を抱える横浜の場合、防火対策上も看過できない問題点です。ここでの民泊施設の営業は、安全な町づくりにも大きな支障をきたします。
東京都大田区は、羽田空港がある街として国の民泊特区で2015年から民泊を行っていますが、住居専用地域以外にも工業地域や工業専用地域、文教地区など該当地域では平日・週末に関わらず全ての期間において民泊を禁じました。
横浜市は、ホテルの開業が今後も多く予定されている点(4,000ベット増)から、そもそも、民泊の必要性は低いとしています。そして、議会の場で、住民の生活を安全安心にすることが基礎自治体の第一の役割との認識を明確にされました。住民の生活環境の保護・安全安心第一で取り組み、国に追随した規制緩和によって、これを犠牲とすることはあってはなりません。
横浜市は地域ブランド調査において5年連続で居住意欲度第一位を獲得しています。誰もが住みたい、住み続けたいと思えるくらしやすく魅力あふれるまちづくりの点からも、横浜を訪問された方々が、安心で快適な横浜の街を実感できるために働くべきです。住居を民泊に提供するならば、事業者として、宿泊客を守る視点からも近隣住民の安全安心の点からも旅館業法、建築基準法、消防法で規定されている旅館やホテルと同様の要件を守ることが必要だと私たちは考え、以下の提案を行うものです。この提案を条例の制定並びに執行に反映されるよう要請いたします。
1. 住居専用地域だけでなく、木造住宅密集地や袋小路になっている地域、横浜市歴史的景観保全地区、旅館業法で規制されている学校、児童福祉施設などの周辺、その他必要な地域では、「民泊」を認めないこと。
2. 民泊事業者は、民泊施設などを立地・提供する時は、地域住民に告知し、説明会を開くなど、住民の理解を得ること。
3. 民泊事業者は、宿泊者が使用開始する時に対面によって宿泊者を確認し、使用にあたっての説明を行うことができるようにすること。
4. 民泊事業者は宿泊者に対して、火災等緊急事態が発生した場合においては、避難及び救急医療等に係る適切な情報提供をおこなうことができる人員配置と体制を常時確保すること。
5. 民泊事業者が市への届け出をする際には、集合住宅での「民泊」事業が認められていることを証明する、管理組合の署名やマンションの規約のコピー提出を義務付けること。
6. 民泊から排出される廃棄物は事業系とすること。
7. 集合住宅での「民泊」事業については、実施後であっても規制を可能とすること。
8. 事業者への業務改善命令や業務停止、立入検査等を強化できるよう担当部署の人員強化を図り、住民と事業者の調整等に責任を持つこと。合わせて、区役所での住民からの相談体制を明確にすること。
以上