議会での質問・討論(詳細)
2009年9月25日

【2009年第3回定例会】「議案反対討論」 河治民夫議員(09.09.25)

 私は日本共産党を代表し、今定例会に提案された市第25号、市第38号議案と、請願第17号、第19号の不採択に反対し、討論を行います。

福祉保健活動拠点の利用促進策を指定管理者まかせにするな

 はじめに、市第25号議案、横浜市福祉保健活動拠点条例等の一部改正についてです。本議案は、福祉保健活動拠点等の指定管理者について、これまで社会福祉法人に限定していたものを、社会福祉法人という限定を取り払おうというものです。現在、対象施設では、すべて社会福祉協議会が指定管理者になっています。
 先日発表された本市監査委員による監査結果報告は、本条例の対象施設の運営事業について厳しい評価をしています。桜木町の社会福祉センターは、「社会福祉に関する活動や交流を行う市民や団体」の利用率が40%を割り込んでいるとしています。福祉保健に携わる人材の養成・確保を目的に設置された、上大岡の福祉保健研修交流センターウィリング横浜では、福祉保健活動従事者の利用は全体の半分にも満たず、福祉保健に携わる人材の養成・確保のために活用するよう検討を要すとしています。福祉保健活動拠点は午前9時から午後9時まで開館していますが、午後5時以降はあまり利用されておらず、利用率が全ての部屋で40%を下回っている拠点が17か所中6か所あり、夜間の利用実態を踏まえ実情にあった運営時間に検討するよう求めています。
 こうしたことから、条例改正の狙いは、低い利用率等の改善策のひとつとして、社会福祉法人に限定していた要件をはずし、実質的に指定管理者を独占していた社会福祉協議会から民間にまで、指定管理者への門戸を広げたものと推定されます。ウィリング横浜の運営に民間のノウハウを取り入れ、利用率の引き上げを図ることは否定しませんが、問題は、これら公の施設の利用促進策を指定管理者まかせにしている本市の姿勢です。指定管理者の要件を変更する前に、利用者の意見等を施設運営に反映させる仕組みや、本市も加わった運営協議会を設置するなど、改善策を打つべきです。施設の運営を民に任せれば、改善が図られ、問題が解決するというのは、あまりにも安易過ぎます。

市・区庁舎駐車場の指定管理者には、
来庁者優先、市内業者・市民雇用を契約要件に

 次は、市第38号議案、庁舎駐車場の指定管理者の指定についてです。
 議案は、来年2月から市役所や区役所など庁舎駐車場に有料制を導入するにあたって、管理者にパーク24株式会社を指定管理者として指定しようとするものです。市内を2つのブロックに分け、指定管理者を公募したものですが、いずれも同社を優先交渉権者としました。
 反対の第1の理由は、来庁者の優先利用が保障されていない契約要件です。庁舎駐車場は何よりも、来庁者の利用を最優先に考えることが望まれるものです。特に、市庁舎駐車場は日常的に満車状態になっており、来庁者さえも待たなければ利用出来ない状態です。
 第2の理由は、公募要件が地方自治体として市内業者や市民の雇用の立場から外れていることです。市内経済活性化のために、公募要件に市内業者や市民を雇用すること等、明確にすべきでした。
  第3の理由は、選定過程の不透明さです。審査講評では、パーク24株式会社は「収入額の市への配分率について、他の応募者と比較して低い提案であったが、最低補償額が他の応募者と比較して1位であった」としていますが、これまでのコストに重きを置いた選定方法とあまりにも違いすぎます。

所得税法第56条廃止で業者婦人の「働き分」を認めよ

 次は、請願第17号、所得税法第56条を廃止するよう、国への意見書の提出を求めるもので、戸塚民主商工会婦人部ほか4団体2934人から提出されたものです。
 所得税法第56条は、「生活を一にする配偶者とその親族が事業に従事した際、対価の支払いは必要経費に算入しない」というものです。戦前の1887年に制定された所得税法は、家父長制のもと世帯主が納税するものとされました。1949年に「シャウプ勧告」を受け、翌年から個人単位課税に変えられたものの、56条はそのまま残されました。これは、国家権力が家父長制を前提にして家族従業員の無償労働を認めてきたものです。家族従業員のうち8割が女性で、事業主の配偶者や娘です。
 所得税法56条は、家族従業員の正当な給料を認めないという点で、憲法11条「基本的人権」、13条「個人の尊重」、14条「法の下の平等」、24条「両性の平等」、29条「財産権」に照らして憲法違反であり、さらに男女共同参画社会基本法に反するものです。つまり、56条は女性の人権を認めない差別法規なのです。
 日本の経済を根底で支えているのは中小業者であり、その経営の大半は事業主とその家族の労働によって成り立っています。この不況の中、中小業者は人を雇う余裕などなく、事業主の妻や子どもの働きによって苦境を乗り切ろうと懸命の努力をしています。
しかし、所得税法56条により、家族従業員の給与については税法上必要経費として計上することが認められず、事業主の所得とみなされて課税されます。所得控除はあるものの、家族従業員が働いた分が正当に反映されているとはいえず、中小業者の経営を圧迫するとともに、家族従業員は社会的にも経済的にも自立できずにいます。また、家族従業員は所得証明がないので、自治体によっては保育所入所で不利になったり、低所得とみなされて損害保険の補償が不当に低く算定されるなどの不利益を生じています。
 一方、「家族従業員の経費を認める青色申告にすればいい」との声があります。もともと青色申告制度は、税務署が税務調査を効率的に進めるために、特別控除や家族従業員の給与を経費に認めるなどの特典をつけて奨励してきたものです。そもそも、実際に行われた労働について、申告の形式によって差をつける制度自体がおかしなことです。
世界では、家族従業員の給料支払いは当然のことになっています。国内でも56条廃止を求める意見書は今年9月現在、全国で100の県市町村、県内でも三浦市、葉山町で採択されています。本横浜市議会でも理解を示すべきもので、不採択は残念でなりません。

意見書提出で、生活保護の母子加算復活の後押しを

 最後は、請願第19号、生活保護の母子加算復活を求める意見書の提出についてです。
 生活保護の母子加算は、子育てを一人でする母親には追加的な費用が必要だとして1949年に創設され、18歳以下の子どもがいる一人親家庭の生活保護費に、1か月約2万円が支給されていました。自民・公明政権は「骨太方針」で毎年2200億円の社会保障費を削減し、生活保護の母子加算も、「生活保護を受けていない一般母子家庭より、生活保護の母子家庭のほうが、消費水準が高い」として、2005年から段階的に廃止し、今年度全廃されました。
 そもそも、国の調査でも母子家庭の収入は一般家庭の収入の4割程度にしかならず、母子加算があってこそ始めて憲法25条でいう最低限度の生活が保障されるものです。また、政府が廃止の根拠とした一般母子世帯の平均消費支出額とは、わずか32世帯という少ないサンプルから導き出された不当なものです。
 請願書には、「食費を削り、風呂の回数も減らした」「子どもにいつも我慢させるのはつらい」という母子家庭の悲惨な声が紹介されており、母子加算復活などを求めて17日開らかれた集会でも、「母子加算があってもやりくりが大変だった。子どもたちには、その道しかないからそこへ進むのでなく、進みたい道に進んでほしい」と切実な思いが語られたと報道されています。また、今年の「母子加算廃止」に対する不服審査請求も、19道府県180人を数えます。
 国会では今年6月、日本共産党、民主党、社民党、国民新党は共同で生活保護の母子加算を復活させる法案を提出し、参議院では可決されています。8月の総選挙で誕生した鳩山内閣の長妻厚生労働大臣は17日の記者会見で、母子加算について「年内と言わず、なるべく早めに復活させたい」と明言したことが報道されています。
 やむを得ない事情により母子家庭で育つ子どもの生活を支え、明るい未来をつくっていくために、生活保護の母子加算を復活することは当然です。新政権が市民のくらしを支え、内需拡大をはかりながら景気回復を進めようとしているとき、一刻も早く母子加算を復活させる手助けをする意味でも、国へ意見書を提出すべきであり、各会派議員の皆さん方に賛成いただけるようお願いいたしまして、討論を終わります。


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