かわじ民夫です。日本共産党を代表し、今定例会で上程された議案と請願について、討論を行います。
検証もないまま義務教育学校に移行するな
まず、市第84号議案「横浜市立学校条例の一部改正」についてです。議案は、金沢区の釜利谷西小学校と西金沢中学校を統合し、新たに西金沢義務教育学校として開校するものです。
義務教育学校は、1人の校長のもと、1つの学校として9年間一貫した教育を行うもので、本市では今年4月に緑区の霧が丘学園を第1校目として開校しました。その検証には、少なくても1年生が卒業するまでの9年間が必要です。もともと義務教育学校については、学校の大規模化や小学校高学年の主体的成長が損なわれるなどの弊害が指摘されています。検証もない中で、2校目開校は改めるべきです。
さらに、本会議質問で教育長は「施設を一体とすることで、効果的な施設環境が整う」との答弁です。しかし、施設を一体としたはずの西金沢中学校のプールやグラウンドは、学校用地とするものの民地への移行も予想され、子どもたちが継続的に自由に伸び伸びと使える保証はなく、施設環境が整うとは言い難いものです。
継続雇用の保障ない指定管理者制度はやめよ
次は、市第91号議案から市第94号議案の4件です。議案は、それぞれ指定管理者を指定するものです。
党市議団は、指定管理者制度そのものに反対です。理由は、指定管理者制度は、事業職種に関係なく期間を区切った運営管理のため、継続しての雇用が保障できないからです。
今回の議案でも、地区センター4施設では、合計職員総数39人のうち、正規雇用は3人、非正規・アルバイト雇用は36人です。公会堂4施設では、合計職員総数50人のうち、正規雇用は1人、非正規・アルバイト雇用は49人です。
こうした非正規雇用の増大につながる施設管理運営の仕組みを改めるべきです。そして、国に対しても、指定管理者制度を廃止して、別の仕組みの構築を検討するよう求めるべきです。
横浜市大中期目標で今までの経営組織に偏ったやり方を反省
次は、市第96号議案、横浜市大の中期目標についてです。
2003年に地方独立行政法人法が施行され、2005年4月から横浜市大も公立大学法人となりました。
法人化の際、めざす大学像を「教育に重点を置く国際教養大学」として、「プラクティカルなリベラルアーツ」、つまり実践的な教養教育を行うとしました。そのために、商学部、国際文化学部、理学部の3学部を統合して、国際総合科学部を設置しました。また、経営組織と教育研究組織を分離し、経営組織に強い権限を与える一方、大学の最高の意思決定機関である評議会を廃止、教授会権限を弱め、さらに教員の全員任期制も導入しました。
この中田前市長が主導した「改革」は、多くの大学関係者が市大の歴史を軽んじ、専門性を後退させるだけとして、異論を唱えていたものです。その結果、安心して研究できないとして、多くの教員が他大学に流出しました。全員任期制は、労働法改正と大学関係者の声が反映し、本年4月から原則廃止となり、国際総合科学部の再編も大学で検討中と聞いています。前市長の改革路線の実質的な修正です。前市長に追随した会派の責任も問われるものです。
横浜市大の中期目標については、誤った大学像を実行するものとして、これまで日本共産党は反対してきました。
今回の議案では、教育に関する全学的な目標に、「教職員が一体となって教育を実践するため、教職員の機能強化や領域横断的な教育体制の確立等を通じ、教職員協働型の教育推進体制を整備する」という文言が入っています。これまでの経営組織に偏ったやり方を反省し改めたものと判断し、賛成することにしました。今後、学部再編は、教職員と学生が十分議論し検討が行われることを強く求めるものです。
通学路の安全対策の責任を取ろうとしない教育委員会
次は、市第98号「平成28年度横浜市一般会計補正予算、第3号」についてです。
わが党は、今回の補正予算案のうち、横浜環状南線・北西線など、高速道路関連の補正には反対ですが、それ以外には賛成の立場です。しかし、通学路の安全対策の責任を取ろうとしない教育委員会の姿勢を批判せずにはおられません。
10月28日、港南区内の通学路で小学校1年生が亡くなった事故に関わって、改めて通学路の安全対策についての責任はどこなのかが、問われています。
わが党が学校教育の執行機関である教育委員会が責任を持つべきだと主張した質問に、教育長は「教育委員会だけでは安全を確保できないため、警察や道路局、区役所などと連携して、スクールゾーン対策として実施している」と、責任回避の答弁です。
例えば、同じ政令市の相模原市教育委員会は、相模原市通学路交通安全プログラムにおいて、「市教育委員会は、学校からの改善要望を受け、現地の状況を把握した上で警察、関係機関と連携し、安全対策を検討・実施します」としています。しかし、横浜市の通学路交通安全プログラムの所管は道路局で、そのプログラムのどこにも教育委員会の役割はみえません。通学路の安全対策の所管を教育委員会に移し、子どもたちのための通学路の安全対策推進の責任を教育委員会が持つことを、改めて強く求めます。
横浜にカジノを含むIR誘致活動は直ちにやめよ
その他、補正予算では、新港9号岸壁での客船バース等整備に約23億円を増額補正します。本予算と合わせると、41億円の大規模プロジェクトです。整備を急ぐのは、増加が見込まれる客船寄港数に対応するためです。これまでの横浜市の観光振興は、開港以来の歴史、文化、港、街並み、海浜や自然をより魅力ある資源と位置づけられてきました。
党市議団は、近年、外国航路乗降者数の伸びが顕著であり、この経済波及効果は大きく、その受入施設の整備は、国際港都横浜の観光政策の要として、事業の必要性、妥当性、緊急性は認めるものです。しかし、今般、カジノ推進法に関わっての林市長らの言動は、これまでの観光振興を台なしにする、あまりにも不見識なものと言わざるを得ません。
渡辺副市長は、IR議連の会合に出席し、今国会の法成立を要請し、「観光客の増加と消費の喚起には、施設の整備は極めて有効」と訴えたと、報じられています。
林市長は15日の記者会見で、法成立は「観光立国に向けて大きな一歩」と評価し、「経済界と連携して、組織を作り、オール横浜で検討を進める」と実質的な誘致宣言です。
カジノは賭博です。日本では、689年の持統天皇のすごろく禁止令以来、賭博は禁止されてきました。賭博は何も生み出さず、人の不運のもとに成り立つものです。賭博場の開帳は、観光都市横浜のブランドを傷つけるだけです。
2014年開催の決算特別委員会で、政策局長が「ギャンブル依存症、青少年への影響、暴力団等の関与、マネー・ロンダリング、地域環境への影響」 と答えているように、カジノによる悪影響は横浜市も認めているところです。
IRの客は、優待割引などを使って飲食・買い物・宿泊などを施設内で行います。現に、アメリカのアトランティック・シティでは、IRができてから市内のホテルやレストランがつぶれ、空き店舗が増えています。仮に山下ふ頭にIRができたら、周囲の関内や中華街、元町などがIRに客を奪われてしまう可能性が懸念されます。
カジノの運営は、海外業者に頼ることになります。市が2015年3月に発表したIR検討調査報告書では、8割が日本人客と想定しています。多くは神奈川県民、横浜市民です。ラスベガスのカジノ資本は5,000億円を日本に投じると公言しています。日本人から巻き上げたお金の多くが海外に流れてしまいます。国民経済からみて、マイナスは明らかです。
市長は、カジノはIRの中で3%から5%の面積だけと言いますが、マカオ・シンガポール・ラスベガスに拠点をもつカジノ資本のラスベガス・サンズ社では売上の7割以上がカジノに頼っています。
カジノ賛成派は、カジノ収益の一部をギャンブル依存症対策に使うといいますが、ギャンブル依存症は患者が自覚するまでに数年かかり、また治療すれば治るというものではありません。成人の4.8%、536万人がギャンブル依存症と推計されている日本でカジノを解禁すれば、ギャンブル依存症患者が増え、大きな社会的損失が生じることは明らかです。
横浜にカジノはいらない! これは多くの横浜市民の声です。世論調査では、カジノ解禁反対が約7割です。横浜市の誇りであり財産である横浜港を、賭博場にしてはなりません。横浜市は、カジノを含むIR誘致活動は直ちにやめるべきです。
30万人余に上る学童保育の充実・発展を求める請願署名
次は、請願第16号、学童保育の充実・発展についてです。
わが党は、学童保育も放課後キッズクラブも必要な事業であると主張するものです。
請願は横浜市が学童保育を放課後児童対策として、「横浜市子ども・子育て支援事業計画」に位置付けているのだから、運営においても責任ある対応を、と求めているものです。要望の1つ目は、学童保育と放課後キッズクラブの保育料の不公平感の改善です。2つ目は、新制度基準に基づく施設の広さや耐震を満たすための分割・移転は市の責任と負担を求めるものです。3つ目は、常勤職員2名と非常勤職員1名の指導体制にするための人件費の増額です。
新基準を満たすための分割・移転についての担当常任会審査では、当局自身「計画通りに進んでいない」と、認めています。分割移転の支援の必要性は、各会派の共通した認識です。学童保育の充実・発展を求める請願は、39年間毎年提出され、今回も30万7,118筆になっています。
各会派の議員の皆さん、本市の策定した「横浜市子ども・子育て支援事業計画」を推進する上からも、学童保育への支援は必要不可欠です。本請願に賛成下さるようお願いします。
ハマ弁は中学生の昼食の充実に寄与せず
次は、請願第21号、横浜市立中学校における給食の実施についてです。
今、子どもを取り巻く「食」の環境が悪化し、子どもの貧困率が16.3%にもなるなか、学校給食が子どもの命綱となっている家庭も多くなっています。また、偏った栄養摂取、朝食欠食など食生活の乱れや肥満、痩身傾向など、食をめぐってさまざまな問題が広がっています。
本市では、弁当を持参できない子どもへの対策として、ハマ弁を7月から開始し、現在68校で実施しています。
党市議団は横浜吉田中学校を訪問し、ハマ弁を試食しました。その後、生徒の昼食状況を視察し、びっくりしました。2年生のあるクラスでは、生徒数34中、家庭弁当の生徒が15人、ハマ弁注文者は2人、残りの生徒は市販のおにぎりやパンを食べていましたが、2人の生徒は何も食べていませんでした。弁当を持参できない生徒対策のはずのハマ弁は、少なくともこの学校では受け入れられず、中学生の昼食の充実に寄与していません。
今、求められているのは、学校給食法に基づく中学校給食の実施そのものであり、請願の不採択は市民にとって納得できるものではありません。
以上で、討論を終わります。