見解/声明
2016年2月1日

横浜市の2016年度予算案の発表にあたって

2016年2月1日
日本共産党横浜市会議員団
団 長 大貫 憲夫

 林文子市長は2月1日、2016年度横浜市予算案を発表しました。
 一般会計は1兆5,143億円(前年度比1.3%増)、特別会計と企業会計の全会計総計で3兆3,968億円(純計2兆6,634億円)です。一般会計での前年度比1.3%増189億円増額の内訳は、扶助費158億円増、繰出金55億円増が主なものです。施設等整備費は、前年度比3%減の2,290億円です。しかし、高速道路は135億円増の475億円、国際コンテナ戦略港湾には85億円増の167億円など大型公共事業は大幅増です。市民生活関連の公共事業がその犠牲となっています。歳入では、市税実収見込み額は、前年度比64億円増の7,159億円です。個人市民税は、給与所得の増などで21億円増の2.943億円、法人市民税は、企業収益改善により15億円増の563億円です。市長は「景気の回復基調が反映」したとしています。市債は、中期4か年計画の制約により、前年度比8.1%減の1,479億円を発行します。
 市民の声と運動のひろがりのなかで実現した市民要求は、延焼危険地域での不燃化建物工事費助成戸数のほぼ倍加、防災用屋外スピーカーの設置、子どもの貧困対策としての寄り添い型学習支援の全区実施、学童保育クラブでの障害児受入加算額の増額、救急隊の3隊増などです。これらは党議員団が議会で取り上げ、市民とともに求めていたものです。
林市長は「あらゆる人の力の発揮支援」「賑わいづくり・まちづくり加速」「経済の活性化推進」のための予算としていますが、その実態は、「国が推進する国家戦略特区や地方創生、一億総活躍社会の実現などと連携した施策を推進」と明言しているように、アベノミクスの忠実な実行者の姿です。
 いま地方政治が優先してとりくむ仕事は、安倍政権のもとで消費税増税、非正規雇用の拡大、年金・医療・介護・生活保護の切り下げ・負担増に苦しむ市民のくらし、福祉を応援することです。

●子ども・子育て支援では、受入枠2,676人の保育所等整備を行います。その内、認可保育所整備は、1,330人です。学童保育所は、11か所新設し、分割移転支援は23か所で、障害者受入加算が拡充されます。子ども貧困対策として108億円計上していますが、児童扶養手当104億円を除くと4億円です。実効ある対策としては十分ではありません。小児医療費助成は、新年度では前進はありませんが、2017年度4月からの小6までの対象拡大に向けての準備経費0.7億円が予算化に。年齢引き上げにあわせ一部負担金の導入を検討すると明言しており、医療費の実質有料化を許さない運動が求められています。

●教育では、グローバル人材の育成として、14億円を振り向けます。中学3年生での英検全校実施は、教育関係者から選別教育として批判が上がっています。グローバルな人材というならば、歴史的事実に即した歴史認識と不可分のはずです。日本の侵略戦争をアジア独立に貢献したと描く育鵬社版の採択は、グローバル人材育成と両立しません。現在、小1、2で実施されている35人学級の拡大はありません。中学校では、いよいよ新年度から段階的に配達弁当が実施されます。関係予算は約5億円です。給食と位置づけられている他都市の配達弁当の喫食率は2割~3割にとどまっています。市教委は2割の生徒が注文すると試算していますが、安易すぎます。子どもの利益を第一に考えるならば、家庭弁当優れ論の自民党の主張に屈することなく、自校調理方式を中心とした中学校給食実施に踏み切るべきです。

●福祉では、特別養護老人ホーム整備は、着工300床、継続220床と例年水準です。ごみ屋敷対策として条例を9月議会に策定します。障害者施策は、障害者差別解消法の施行をふまえて専門委員会の設置、区役所での手話通訳対応を行います。市民要望の多い国民健康保険料、介護保険料、医療費の負担軽減対策の改善はありません。

●防災・減災対策では、がけ対策予算が8億円から15億円に増額されます。防災用屋外スピーカーは境川の浸水想定区域(瀬谷区瀬谷など)に設置されます。

●中小企業・雇用では、中小企業融資事業の融資枠1.400億円は前年度比100億円削減です。信用保証料助成も削られ、民間融資だのみに傾斜しすぎです。MM21地区等への誘致企業への助成金は、31億円です。商店街振興策は2億円足らずで、振興とは名ばかりです。「特区」推進事業は4.5億円を充て、横浜駅西口で外国人向けのマンション・ホテル用高層ビルを新たに事業化などします。地域経済対策と効果が立証されている住宅リフォーム助成制度や全国に広がる公契約条例制定については検討すらしません。

●施設整備費のうち、大型開発事業の突出ぶりは、高速道路、港湾に限りません。カジノ誘致先として有力視されている山下ふ頭の再開発には、倉庫など既存施設の移転補償、用地取得費など135億円が特別会計として組まれています。カジノをふくむIR等の新たな都市づくり検討として、前年度と同額の0.1億円を計上しています。「エキサイトよこはま22」の横浜駅周辺のまちづくり費は10億円、市街地の再開発事業費は前年度比倍加の50億円です。総額749億円の新市庁舎整備費は、今年度は基本・実施設計などに17億円、推定事業費約300億円規模の文化体育館再整備には0.25億円投じます。みなとみらい21地区20街区での展示場・会議棟施設(MICE)整備費は0.5億円ですが、市の最終負担額は約500億円となります。
 市営住宅など公的住宅提供は、前年度比3割減の24億円です。子育て世帯向け賃貸住宅の新規認定が230戸されるものの、市営住宅の新規建設はゼロです。新たな地域課題となっている空き家対策では、モデル検証を実施等します。

●地球温暖化対策は総額70億円で、前年並みです。水素エネルギーの利活用に力を入れています。その一方で、温暖化対策統括本部の予算規模は10億円から6億円に縮小です。再生可能エネルギー導入推進基金事業の終了のためです。原発再稼働の中、市民レベルでの再生可能エネルギー導入の取り組み加速化には自治体の支援は不可欠です。

 日本共産党市議団は、2月2日から始まる予算市会において、公約の実現と市民施策の拡充をすすめるために、提案型の質問に心掛け、共同の輪をひろげ、予算組み替え提案をふくめ全力をあげる決意です。市民のみなさんのご支援、ご協力よろしくお願いします。


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