見解/声明
2015年8月6日

市民の信頼に足る教科書が子どもたちに手渡されるよう採択をやり直すべきです

2015年8月6日
日本共産党横浜市会議員団
団 長  大 貫 憲 夫

昨日の横浜市教育委員会定例会で、4年毎実施の中学校教科書採択が行われました。
採択の投票では教育長・教育委員6人中、社会科の歴史と公民、保健体育、英語で投票数が3対3であったものを、いずれも岡田優子教育長の権限で決定しました。
社会科の歴史と公民では、日本軍国主義による侵略戦争であったアジア・太平洋戦争を「自存自衛」「アジア解放」のための戦争だったと描く歴史を偽る育鵬社の歴史教科書、憲法の平和的民主的原則をゆがめて描く育鵬社の公民の教科書が採択となりました。
2013年8月の横浜市長選挙で再選を目指した林文子市長は、6月に自民党市連と政策協定を締結されています。そのなかに「新しい教育基本法の精神に基づいた教科書が採択されるよう、引き続き取り組む」と記されていたと各紙が報じています。岡田優子教育長の決定は、結果的にこの政策協定にそったものです。
横浜市政の自民党市政化については、自民党が2012年12月の総選挙で政権復帰したことに端を発しています。
林市長は、自民党の政権復帰、安倍政権誕生以降、教育長と3人の教育委員を議会の同意を得て任命しています。昨日の教科書採択の教育委員会での議論をみると、無記名投票にも拘わらずこの4人の内2名が育鵬社の教科書を選んだことは明らかです。
林市長の政治責任が問われるのは当然のことです。
教科書の採択は、主権者・国民の教育権にかかわることであり、その方法は、市民への説明責任をはたし、納得が得られるものでなくてはなりません。そこで、党市議団は、教科書採択にあたって、教育委員会の責任の重さを述べ、教科書採択の基本方針の改善をするよう求めてきました。
提案した改善点は、教科書採択の基本方針に「日本国憲法」を加えることや、教科によっては奇妙な評価となる全教科共通の観点ではなく、各教科別の観点での調査報告が必要であること、教科書取扱審議会には校長、副校長だけでなく現場教員を加えることなどでした。
しかし、この提案はことごとく、拒否されました。審議会委員には子どもたちの日々の学びや生活をつぶさに見、感じている一般の教員は一人も入っていませんでした。審議会は傍聴もできない秘密会であり、各教科別の観点での客観的な審議が、調査員の調査書をもとに行われたのかどうかも不明です。
今回の教科書採択で最大の問題点は、審議会で、どの教科書が子どもたちにとってふさわしい教科書かを評価する観点を、前回の中学教科書採択から大きく変更したことです。
前回の2011年、5位の評価だった育鵬社の歴史教科書と同率3位の育鵬社の公民教科書が選ばれたことに対して、審議会答申無視との市民の批判が集中しました。育鵬社の歴史教科書は、16の観点のうち好評価されたのは8だけで、あとの8の観点は評価されていません。評価されなかった観点は「子どもが学習問題や課題の解決に見通しを立てて、それにしたがって必要な情報を収集し、活用・整理していく能力を育むもの」「社会的事象を公正に判断する力を育むもの」「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を育むことができるように配慮されているもの」など、子どもの成長や自主性を育むために必要な教科書として大切な観点ばかりです。今回の観点では、育鵬社を評価しなかった8つの観点のうち7つを削除し、別の観点に差し替えています。育鵬社の歴史教科書が今回の評価で満点になったのは、評価の観点を育鵬社に有利になるよう設定したためであることは歴然としています。 
教科書採択の審議では審議会の答申のみが取り扱われ、専門家である教員の調査が生かされるような審議も一つもありませんでした。また、市民に開かれた採択とするためにと、採択会議の議事進行にあたっては、各委員が適切と判断する教科書について明確に意見表明をすることを私たちは求めましたが、採択会議ではどの委員がどの教科書を評価しているのか明らかにされませんでした。これでは議論になりません。投票も無記名となり、市民への説明責任を放棄するものでした。教育行政への信頼を大きく損ないながら、いったい何を守ろうとするのでしょうか。
まさに、日本共産党市議団として求めた公正で民主的な教科書採択が実施されていません。
意図的で、不透明な教科書採択は無効です。情報公開を徹底し、市民の信頼に足る教科書が子どもたちに手渡されるような教科書採択を実施できるよう、採択をやり直すべきです。


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