私は、日本共産党を代表し、提案された議案のうち、5件の議案および4件の請願の不採択に反対し、討論を行います。
経費節減が目的の全河川事業の道路局移管に反対
はじめに、市第60号議案、横浜市事務分掌条例の一部改正についてです。
これは、近年多発している集中豪雨への対策の強化と、河川と道路の指揮命令系統を一元化するため、環境創造局で行っている河川事業に関する事務を全て道路局に移管するというものです。
しかし、本来発災時、指揮命令系統は全庁的に危機管理室が行うものであり、河川と道路だけを別立てにすること事態混乱を招くものです。
そもそも、環境創造局は、4年前環境分野の施策体系をまとめ、総合的・一体的に環境施策を推進するため再編・設置され、浸水被害を踏まえた災害に強い安全なまちづくりについても、治水事業の根幹として下水事業と同一局にあって、連携して流域を単位とした総合的な浸水対策、水環境整備を進め効果を挙げてきたのであり、道路局への河川事業の移管は、こうした事業を「頓挫」させ、むしろ事業の後退を招くもので間違っています。
また、樹林地・農地を一体とした浸水対策や公園・河川の整備、樹林地・農地の保全と下水道など水と緑を一体的にとらえ、環境整備をする「水と緑の基本計画」の推進も困難になると考えられるのですが、その説明もありません。
今回の事務分掌の一部改正によって「河川と道路の指揮命令系統の一元化で効率のいい運営となる」との答弁は、まさに、安全を理由に職員削減による効率化を図ろうとするものであり、経費削減が本当の目的と言わざるを得ません。
低所得者に有利な公営住宅をというなら市営住宅の新設を
つぎに、市第66号、67号議案についてです。
公営住宅法施行令の改正に伴い、公営住宅への入居申し込み可能な月収を現在の20万円から15万8000円に、また住宅の明け渡しを迫られる高額所得者の月収を39万7000円から31万3000円にそれぞれ引き下げるものです。
その結果、これまではできた入居申し込みができなくなったり、市営住宅からの強制退去を余儀なくされる世帯も、推定で300世帯発生します。特に市営住宅から出なくてはならない人にとっては、これまでのくらしの変更を求めることになり、容易なことではありません。
また、収入区分の見直しで、入居世帯のうち9000世帯に家賃の負担増が発生します。改定による市の増収は8億円です。5年間の激変緩和を設けたとはいえ、7割については減額か影響はないというものの、不況のもとでの8億円の負担増には違いなく、容認できません。
社会情勢の変化で、「より低額所得者に有利なように対応する」ためというなら、市営住宅を新規建設し対応すべきです。新規建設も中止したままでは、市営住宅に低所得者や高齢者が集中し、コミュニティーの形成にも支障をきたすことを付け加えておきます。
削減・廃止ではなく奨学金予算の拡充を
つぎに、市第71号議案、横浜市奨学条例の一部改正についてです。
横浜市は、高校生に月額1万2000円を支給、大学生に月4万4000円を無利子貸付する奨学金制度を行っています。
2008年度の高校奨学金は、倍率が6倍という大変要望の強いものになっています。そこで、支給額を減額する代わりに支給対象者を拡大し、対応するということですが、現行でも応募者のうち、所得の低い家庭すべてが受けられるわけではなく、1万円に減額しても対象者はわずかに拡大するだけです。予算枠を拡大しないで小手先の見直しでは、要求に応える奨学金制度とはいえません。しかも、現行予算額6480万円を今後も確保するという保障もありません。現行で奨学金を受けられるのは450人、本市の高校生が7万人を超えるなかで、余りに少ない枠です。
また、横浜市から奨学金を貸与されていた学生については、独立行政法人「日本学生支援機構」の奨学金の応募資格を満たしており、その対象となるため、横浜市は大学奨学金を廃止するというものです。
世界一高い学費や生活費をまかなうため、2008年度の場合、3.2人に1人の学生が日本学生支援機構の奨学金を借りていますが、有利子で月10万円を4年間借りた場合、卒業と同時に抱え込む借金は645万円にもなります。卒業し安定した仕事につけるのか、奨学金を返せるのかと不安がつきまとうと、学生はいいます。これでは、奨学金ではなく、まるで貸金業です。市の大学奨学金は無利子であるため、負担が全く違います。応募資格があるとの理由で、日本学生支援機構に委ねることは筋違いです。
21世紀は「知の世紀」と言われ、今や大学や高校教育のレベルは、生きるために不可欠な最低限度の文化的生存権ともいわれています。景気悪化による市民生活の困難があるなかで、家庭の経済力にかかわらず、すべての子ども・青年の学ぶ権利が、充分な財政的援助で守られ、その希望や夢、未来に備える力が育まれることが必要です。奨学金制度の予算の拡充、支給対象者の枠を思い切って増やすことこそ求められているのではないでしょうか。
市民に増税を強いる横浜みどり税に反対
つぎに、市第87号議案についてです。これは、横浜みどりアップ計画新規・拡充策の推進に向けて、年間、個人900円、法人、均等割額の9%相当額の新たな税として「横浜みどり税」を市民税に超過課税、導入しようとするものです。
緑を守り育てることは、地球温暖化対策からも最重要課題といえます。今回の「横浜みどりアップ計画、新規・拡充施策」素案は、緑の保全・増加に向けた意欲を示しており、一定の評価をするものです。みどりアップ計画の事業費は約600億円です。うち新税で、当初案では年38億円、5年間で190億円、第二次案は年32億円、5年間で160億円、最終案は年24億円、5年間で120億円と税負担を縮減させましたが、縮減分の補てん財源も示さず、みどりアップ計画の見直しもされておらず、計画の実効性に疑いをもたざるを得ません。
議案に反対する理由の第一は、個人181万人、法人9万5000社という納税義務者に対して税金を課すという、きわめて異例で重大な問題にもかかわらず、市民へ周知徹底もせず、意見もよく聞かずに、あまりに拙速に進めたことです。わが議員団には、連日電話やメールでみどり税に対する意見が寄せられていますが、特徴を大別すると、一にはじめて知った、二に開発を野放しにした市の責任追及、三に開発業者に税負担をというもので、はじめて知ったと言う人がほとんどです。
意見募集の際に発行した公報よこはま特別号の発行部数が、通常規模の156万部の全戸配布規模の1割以下のわずか11万部であり、しかも23日間の意見募集期間の短さからも、市民意見を聞くという真摯な姿勢はうかがえません。
市長は、10日の記者会見で、来年度の市民意識調査で導入の是非を聞きたいと述べられましたが、順序が逆です。導入前に聞くべきです。
第二は、大不況と言われている今、なぜ新たに課税するのかということです。市は、今議会で「緊急借換特別資金」を創設して、不況にあえぐ中小業者を支援しようとしていますが、そういう時期にあえて新税を設けることは、緑の保全が喫緊だとしても、許されると考えるのは間違っています。
第三は、緑の減少の原因を明らかにすることなく、分割開発など乱開発を容認したままにしていること、池子の森の米軍住宅建設容認など市自身が緑を破壊していること、農地の保全に欠かせない農業施策が不十分などの問題です。
第四は、不要不急の公共事業などを見直すことなく、新税を導入することです。緑の保全・創造を喫緊の課題と位置づけるならば、予算の上での優先順位をあげるべきです。
なお、委員会での議案の採決にあたって、賛成会派による附帯意見についても一言申し上げざるをえません。それは、市長に行政改革の一層の推進と事務事業の徹底した見直しを最初にあげていることについてです。市長に対し、これまで以上の市民サービスの切捨て、公務部分の縮小を迫るものであり、市民の願いに背を向けるものです。
住民合意が得られぬまま墓地計画を進めるな
つぎに、請願56号は、都筑区牛久保墓地計画についてですが、当初の説明会に暴力団風の者が出席したことについての事業者の説明がなされておらず、住民が納得しないまま、墓地条例の手続きが進められ、事業者の本申請を市が受理したことの是正等を議会に求めたものです。
本申請とあっせんが同時に行われる事態は前例のないことで、本申請を受理した市の責任が問われるのは当然です。暴力団風の者との関わりについても、現在においても事業者の説明責任が果されているとは認められず、墓地の経営主体としての適格性も問われる問題と考えます。住民が市を提訴したこともあり、推移をみるなど慎重な扱いが必要で、不採択に反対します。
保険業法適用による過大負担から自主的な共済を守れ
請願60号は、自主的な共済に対し、保険業法の適用除外を求めるものです。中小業者や知的障害者、PTA、医師会など組織内の相互の助け合いを目的としている共済や互助会に保険会社に準じた規制がなされ、経費が増大して廃業が相次いでいます。全国で6000万人の加入者の利益を守るため、請願に基づき国に意見書を提出するのは当然のことです。
自家労働を必要経費と認めよ
請願61号は、所得税法56条廃止の意見書の国への提出を求めるものです。同56条は、「配偶者とその親族が事業に従事したとき、その対価の支払いは必要経費に算入しない」というものです。働き分を認めるのは世界標準であり、必要経費に算入しない所得税法56条は家制度のなごりです。一人ひとりの個人の人格を尊重する立場からも、廃止すべきです。不採択に反対です。
40万人を越える署名の学童保育改善の願いに応えよ
請願71号は、横浜学童保育連絡協議会から学童保育の改善を求めた40万1468人の署名とともに提出されたものです。
2008年度は、94クラブ全体の58%が運営費を減額され、保育料の値上げも50クラブと少なくありません。少子化対策の中心的事業にもかかわらず、学童保育は運営費を200万円以上切り下げられ、半数以上で運営が厳しくなっています。入所児童数は増え続け、特に高学年が毎年200人程度増えており、放課後の学童にとってなくてはならない居場所になっています。6年生にまで補助対象を拡大すべきです。
2008年度、厚労省が学童保育2万か所分を予算化したことから、計画的な増設が可能になりました。大規模クラブの解消の際、家賃補助をするなど、市の責任で施設を確保することが大事です。
学童保育の改善を求めるこの改善は、「はまっこ」や「キッズ」では行われていることです。
学童保育の役割、40万人を超える改善の声に、議会としても応えるべきです。請願の不採択に反対し、私の討論を終わります。ありがとうございました。