2025.12.26 日本共産党横浜市議団団長 古谷やすひこ

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市民の暮らしを守る視点から問題を追及
11月25日~12月18日にかけて開催された第4回定例会は、35件の市長提出議案および、国の子ども手当2万円に伴う追加補正予算案1件、19件の請願、2件の議員提出議案(国への意見書など)の採決が行われました。日本共産党は2つの補正予算案含む32の議案に賛成し、スポーツ振興で企業版ふるさと納税の活用を図る議案など4件に反対しました。
1. 企業版ふるさと納税の“抜け穴”を追及 大和田議員が議案関連質問
12月4日、市長提出議案に対する関連質問が行われました。党市議団からは大和田あきお議員(戸塚区選出)が登壇。区づくり推進費の拡充、スポーツ振興事業への企業版ふるさと納税の基金の創設、小児医療費18歳までの無償化を“2026年4月実施へ”、 体育館エアコンと断熱化は“セットで”、の5つのテーマについて、山中竹春市長らに質問しました。
企業が自治体に寄付すると税金が最大9割控除される「企業版ふるさと納税」について大和田議員は、「企業と行政の癒着」につながる危険性を指摘。福島県での談合事件を例に、「寄付した企業が、その資金を使った事業を自ら受注する」という「見返りの温床(抜け穴)」になっていると述べました。市民がスポーツを楽しめる環境整備こそ優先すべきであり、特定企業への利益供与は許されない。
山中市長は、「国のルールにおいて適切に対応している」と述べるにとどまりました。
2. 学校給食の無償化は「全額国費」で、山下ふ頭再開発は市民の声を主役に みわ議員が一般質問
12月10日、みわ智恵美議員(港南区選出)が会派を代表して一般質問に立ちました。 みわ議員は、横浜市が現在策定している新たな横浜中期計画(2026~2029)素案、市民の命と健康を守る医療環境改善の取組み、学校給食の無料化、国際園芸博覧会に大阪・関西万博で不払いを起こしている企業の起用問題、山下ふ頭再開発、非核三原則堅持について市長に質問しました。
給食費無償化についてみわ議員は、憲法が定める「義務教育の無償」に基づき、学校給食の完全無償化を求め、国が地方に負担を押し付けるのではなく、物価高騰分も含めて全額国費で実施すべきと主張。 市長は、「(国の)今の給食無償化の議論は本来の無償化の議論から離れている」と述べ、「地方交付税措置というような方法ではなく、直接財政措置による全額の国費負担を国に強く要望していく」と、市としても国に求める姿勢を示しました。
また、みわ議員は、カジノ(IR)計画が撤回された山下ふ頭の再開発について、市は現在、市民意見を聞きながら民間業者にアイデアを募る調査(サウンディング)を進めているが、これでは営利企業の事業が優先になると指摘し、市の姿勢をただしました。その上で「民設民営(民間が建てて民間が運営する)」を前提にせず、市民の意見を反映させるべきだと主張しました。 山中市長は「民間活力を最大限生かすため、当初から民設民営を基本としている。再開発は市民の皆さまと共につくるという考え方が重要」と回答するにとどまりました。
4. 18歳までの小児医療費無償化を歓迎し問題ある議案には反対 白井議員が討論
12月18日、市長提出議案や請願、議員提出議案(国への意見書など)の採決が行われました。採決に先立ち、日本共産党を代表して白井正子議員が討論に立ちました。 白井議員は、企業版ふるさと納税を活用した「横浜市スポーツ・レクリエーション振興基金条例」について、寄付額の9割が税軽減される仕組みは実質的に法人税の節税であり、自治体と企業の癒着を広げかねないと指摘。とりわけ、公的スポーツ施設がプロスポーツチームのホームスタジアムやアリーナへ改修され専属的に利用されるなど、寄付企業に「間接的な利益」を与えることが禁止されていない問題を挙げ、市民共有の財産を一部企業の利益優先に使うべきではないとして反対しました。
一方、補正予算案については、党が長年求めてきた「小児医療費助成の18歳までの拡大」に向けた準備経費を高く評価し、賛成しました。ただし、補正予算案にある象の鼻エリアに設置予定の案内サイン1基4,000万円については「高すぎる」として、コスト縮減を求めました。
請願については、学校給食無償化や少人数学級の拡大、日米地位協定の抜本改定など、市民の切実な訴えの採択を呼びかけました。 採決の結果、市長提出議案は可決。日本共産党が賛成したこれらの請願はいずれも反対多数で不採択となりました。
5. 物価高対策:市独自の「上乗せ支援」を(古谷議員)
同日、国で成立した総額18兆3,000億円に上る補正予算を受け、横浜市会では子育て応援手当2万円の支給に関する追加の補正予算議案が提案され、関連質問が行われました。 党市議団からは古谷やすひこ議員(鶴見区/党市議団団長)が登壇。国の物価高騰対策の「脆弱さ」を厳しく指摘。横浜市に対し、国の方針を待つだけでなく市独自の踏み込んだ支援策を講じるよう強く迫りました。
また、長引く物価高に対する市の対応の遅さを追及しました。国の対策は一時しのぎで不十分。他都市が年内に予算化する中、横浜市の対応は遅いと批判。すべての世帯に行き渡るよう、「上下水道料金の減免」や「給食費の軽減」、市内中小企業・小規模事業者への賃上げ支援などに市独自の予算を上乗せして実施すべきと主張しました。 山中市長は、年内に計画を具体化できなかったことについては「具体的な活用策を検討している。早期に発表ができるよう努める」と答弁。また、市独自の上乗せ支援については「これまでも市民の皆様の暮らしをしっかり支えることができるよう、国の交付金も活用して、物価高対策に取り組んできた。今回もこうした考え方を基本に、本市として必要な物価高対策を実施していく」と答弁しました。
6. 市政ピックアップ 中期計画素案やその他の市民意見募集など
各常任委員会で報告された市政計画や市民意見募集などで注視が必要だと感じているのは下記のものです。 ●横浜市中期計画2026年~2029年(素案)が発表され、各常任委員会で最初の議論が始まりました。
【素案の概要(市ホームページより)】
〇共にめざす都市像「明日をひらく都市」を継承し、横浜に関わる全ての人が前を向き、未来に希望を抱くことができる「横浜のありたい姿」として設定します。
○戦略として「市民生活の安心・安全×横浜の持続的な成長・発展」を掲げ、「総合的な取組<14の政策群>」と「横断的な取組<明日をひらく都市プロジェクト>」により、「明日をひらく都市」の実現に取り組みます。
○14の政策群は、政策分野に関連する取組をまとめた33の施策群で構成します。
[14の政策群]
①「毎日の安心・安全」②「防災・減災」③「医療・保健」④「こども・子育て」⑤「教育」⑥「高齢・長寿」⑦「障害児・者」⑧「暮らし・コミュニティ」⑨「交通」⑩「にぎわい・スポーツ・文化」⑪「産業」⑫「まちづくり」⑬「環境との共生」⑭みどり ○「明日をひらく都市プロジェクト」は3つのテーマ①循環型都市への移行、②観光・経済活性化、③未来を創るまちづくりで、施策横断的に取り組みます。
○データ駆動型経営に本格移行し、「市民目線の経営サイクル(PDCA)」の中で、「目指すべき状態」と「アウトカム指標」の進捗状況を適時適切に検証し、改善を図ることで、成果を発現します。
○計画期間:2026(令和8)年度から2029(令和11)年度
14の政策群など一つ一つの方針について、市民の暮らしを守ることが柱になっているのかチェックし、前進面は応援し、問題のある点は改善を求めていきます。特に都心臨海部の魅力を高めるとして、横浜駅から山下ふ頭をつなぐ「水際線まちづくり」や、横浜駅周辺、関内・関外地区、新横浜地区の大型再開発などでは、市民が求めている公共性が本当にあるのかという視点で、民間事業者への過度な公金投入などの問題を厳しく追及し改善を求めていきます。
今年9月に示された「新たな中期計画の基本的方向」では、前回の中期計画で基調とされていた「平和や人権の尊重を市政運営」の記述が無く、明記を求めてきましたが、発表された素案ではしっかり書かれており一安心です。国際都市・多文化共生の都市横浜においても、排外主義やデマの流布などが一部の政治家によって広げられ、市民間の分断と人権の後退が進む危険があります。誰もが安心して自分らしく生き暮らしていける街を目指すことを働きかけていきます。
また、横浜ノース・ドック(米軍基地:神奈川区)では、新たな米軍新部隊の配備が進み、オスプレイの飛来が繰り返され、初の自衛隊の陸海空の合同訓練やミサイル防衛に係る機動展開訓練が行われるなど、市是である「早期全面返還」を遠ざける運用が行われています。平和を掲げる市として、基地機能の強化はするな、早期全面返還を進めよと引き続き働きかけていきます。
中期計画素案を巡っては、局の再編が進むことが示されており、国際局の廃止が検討されています。地方自治体の中で国際局という部署を持っているのは横浜だけです。また、この間、国際局の平和に関する事業の予算は増えてきました。国際局の廃止が市民や交流を深めてきた諸外国にとってどんなメッセージとして捉えられるのか心配です。廃止が妥当なのかどうかしっかり議論していきます。
●旧上瀬谷通信施設地区に整備する広域防災拠点における現地指令施設の検討 国際園芸博後、会場は広域防災拠点の機能をもった公園として整備されます。その機能を発揮するとされた「現地指令施設」整備の検討状況が市民・にぎわいスポーツ・消防委員会で示されました。(党市議団議員不在委員会)防災力の強化は歓迎ですが、新たなインターチェンジの整備は同地区の観光にぎわいゾーンや物流ゾーンに誘致する民間事業者が最大の利益を得るものなので、整備するのなら少なくとも事業者に応分の負担をしてもらうよう求めていきます。
●10ある行政サービスコーナー(SC)を3年かけて8つ廃止する計画 マイナンバーカードの普及に伴い、コンビニ交付やオンライン申請、郵送請求による非来庁手続きが増えていることから、2026年度に港南台、新横浜駅、東戸塚駅、2027年度に二俣川駅、日吉駅、上大岡駅、2028年度にあざみの駅、鶴見駅西口のSCを廃止するとしています。残る2つの横浜駅、戸塚駅についても今後の状況を踏まえて検討するとしています。本当に廃止していいのか。身近なところの行政窓口が減ることは住民サービスの低下を招く恐れもあり、公の役割とは何か問題提起し、見直しを求めていきます。
●パシフィコ横浜の第1期大規模改修への最大35億円の支援を発表 コロナ禍による売り上げ激減による資金繰り悪化の影響を考慮して、国立大ホールの改修費(見込み総工事費70億円)の2分の1相当を上限にした補助を行う。これまで市が実施してきた土地の減額貸付や市債権の一部返済猶予など経営支援を2027年度以降も継続する検討が示されています。税金の使い方として適切なのか注視し問題点を指摘していきます。
●横浜国際プール再整備事業の実施方針について 都筑区にある国際プールのメインプールを廃止し、通年スポーツフロア化などを行う再整備事業について、民間資金等の活用で整備を進める「PFI方式」を活用した実施方針を発表。PFI事業者が実施する業務について内容の詳細が示されました。水泳団体の理解を得ずに方向性が発表される、再整備の総事業費は100億円以上の高額な事業となるなど、世間を騒がせている事案なだけに、内容をしっかりチェックし問題があれば指摘し、見直しを求めていきます。
●「横浜未来の文化ビジョン(仮称)素案」について 10年後の横浜の文化の将来像を描くとして「横浜未来の文化ビジョン(仮称)素案」が発表されました。横浜文化の創造を掲げ、実現のために①独自コンテンツの追求、②文化の担い手の育成、③文化の継承と新たな創造の両立、④開放性・多様性あるネットワークを施策として掲げています。期待できる方向性だと感じており、市民参加で文化ビジョンがより良いものとなるよう後押ししていきます。
以上