
日本共産党を代表し、市第88号議案 令和7年度横浜市一般会計予算及び市第98号議案 横浜市市街地開発事業費会計予算に反対の立場から討論します。
新年度予算案では、防災や地域交通の拡充、子育て世帯や高齢者を支える施策の前進も多くあり、それらについては賛成します。
具体的に、能登半島地震を教訓にした新しい地震防災戦略では、強化の柱の一つである「避難所の環境改善・備蓄品の拡充」で、「雑魚寝状態」を解消するための備品拡充や、食料・水の備蓄数の倍化、空調整備設置の加速、災害用トイレの充実などは、市民の不安に応えるもので歓迎します。ただ、5年かけて整備するとしていますが、大地震は明日にもやってくるかもしれません。取り組みのスピードをさらに早めることを要望します。
また、市民の6割が暮らしているマンションなどの集合住宅の防災対策については、個々のマンション・集合住宅任せにせず、市として、住民向けの啓発用のパンフを作成し配布する等、イニシアティブを発揮することが必要です。具体化をお願いします。
次に、ワゴン型バスなど地域交通の拡充についてです。
市内に200か所点在する交通圏域外の地域の解消に向け、5年かけて50の地域でミニバス等の地域公共交通の運行を目指すとしています。これは、市民の足を確保しようとする前向きな取り組みであり歓迎します。
また、市営バス乗務員の確保の取り組みを24年度から引き続き強化することも盛り込まれました。今後も、市民の「移動の権利」を支える公の役割を発揮し、これ以上の減便がでないよう取り組みが進むことを期待します。
さらに、敬老パスについては、同様の制度を実施している他市で、本人負担の増額など制度の後退が図られている中、本市は、ワゴン型バスなどの地域交通への適用拡大を行い、75歳以上で免許返納した方は、3年間無料。要介護認定リスクのある方を対象にモニター調査を実施するなど、前進させたことを評価します。引き続き、横浜が誇る現制度をさらに良いものにしていただくことを求めます。
また、補聴器購入補助制度の導入、帯状疱疹ワクチンの予防接種費用補助の実施や各種がん検診の充実も、市民の要望を受け止めたものだと評価し、引き続き制度を前に進めていただくことを要望します。
一方、予算案で、私達が賛成できなかった3つの施策について述べます。
はじめに、2027年開催予定の国際園芸博覧会の計画についてです。
開催予定の地域は、長年米軍施設だったことから、自然が残されており、こうした豊かな自然を生かすとした理念や、環境と共生する未来社会の在り方を市民とともに考え、発信するとしたコンセプトには賛成するものです。
そのため、単に人を集める集客型のイベントにならないよう、また、市民の将来負担が増すような多額の税金がつぎ込まれることのないよう、有料入場者数の目標を半年で1,000万人集めるとした、過大な目標を改めるよう繰り返し求めてきました。
そんな中、園芸博の実施団体である博覧会協会は、21年に示した建設費320億円について、物価や人件費上昇のため最大で417億円に膨らむとの見通しを発表し、市へ負担増を要請しました。市負担の増額分は、28億円で 111億2,000万円まで膨らみます。
この増額分は、新年度の予算案には直接影響はないということですが、来年度以降の予算がどんと増えることを意味しています。
さらに、建設費同様の理由で、チケット代などで賄うとされている運営費の360億円も当然膨れ上がります。これはチケット代の値上げを招きかねず、購入者が少なくなれば、赤字という悪循環になりかねません。
また、途中で増額を繰り返すやり方は、大阪関西万博で、大きな批判を浴びたものと同じです。これを回避するには、有料入場者目標を引き下げて、規模の縮小化すること以外ありません。
A1の国際博覧会の要件は、会場の広さ50ヘクタール以上、3か月〜6か月の開催期間を設けることです。多額の費用増加の最大の原因となる有料入場者数1,000万人にこだわる必要など全くありません。
また、会場建設費以外にも、本市が主導する出展に関する費用、派遣している職員の人件費など、多額の公費負担があります。それらの費用は、本市が負担する会場建設費の倍以上になるのではないかと危惧しています。
そして、その費用負担を市民はまったく知りません。市民とともにつくるというのであれば、こういう税金の使い方をすることを明らかにすることが不可欠です。
さらに、花博のコンセプトについて、本当に実現できるのか、危うい状況だと言わざるを得ません。例えば、環境との共生を掲げる博覧会にもかかわらず、ビレッジ出展の一次公募で内定した8社は、スーパーゼネコンや、自動車メーカーと、これまで環境を二の次に開発を続けてきた企業がほとんどです。これらの企業がどのようなコンセプトで地球的規模で環境に貢献するとしているのか見えません。3月19日に発表された二次募集の内定企業の多くも同じような企業です。
また、「国際」の冠をつけて70か国の参加を目指していますが、開催2年前にもかかわらず、現在30か国にとどまっていると聞いています。これでは、『国際』の名が泣きます。そして、どんな展示が行われるのかなど詳細が示されず、本当に園芸博のコンセプトに沿ったものになっているのか、誰がチェックしているのでしょうか。情報開示の責を負わない協会というブラックボックスの中で決定され、決定過程は見せないという市民と議会のチェックが働く仕組みが確立されていないことも問題です。
今回の整備費用の増額についても協会副会長である市長が全く協会内の決定にはかかわっていなかった、といわれていることでも、花博の運営に横浜市としてまともにコミットできていないと言わざるを得ません。そんな組織の計画に、多額の市税を投入していいのか、私達は市民の皆さんに納得がいく説明をすることができません。来年度からチケットの売り出しが始まる中、もし赤字になった時の責任はいったい誰が負うのかも全く見えません。
協会のほぼ半数を占める市職員のイニシアティブが見えず、派遣職員と市当局との情報共有が市民には感じられません。
さらに、この計画に無理があることは輸送計画を見ても明らかです。シャトルバスの運行は、最大来場者日で、1時間に60本以上という道路混雑必至の輸送計画であること、バス運転手のなり手不足問題が深刻化しているなかで、開園までに運転手の確保ができるのかも大きな不安を抱かざるを得ません。人件費とガソリン代の高騰も軽視できない負担です。環境破壊の排気ガスの排出も危惧されます。こういった懸念材料は、何一つ解消できていません。半年で有料入場者1,000万人目標は、まったく現実的ではないと考えます。
これらのことから、このまま突き進んでいけば、国際園芸博は掲げた理念や開催意義を達成することはできないと考えます。改めて協会が描く現行の計画を現実的なものに見直すことを強く求めます。
2つ目は、中学校給食についてです。
2026年度から全員制で実施されることは、長年市民のみなさんが求めてきたことで歓迎します。しかし、全校でデリバリー方式となっていることは、大問題です。
24年度は喫食率46%を目指し、34校を推進校として指定し、食缶による汁物の提供など、より良い給食の提供に向けて効果検証を実施しました。2月で喫食率は44.6%と目標に近接しましたが、そもそも夜中から工場で作られ、食中毒のリスク軽減のためにおかずを急速冷却して運ばれるデリバリー方式が本当に多くの生徒から望まれているのでしょうか。食べ残しの量では、小学校の副菜は8%である中、中学校は、34.1%と大量廃棄されていることから、栄養摂取も万全でなく、教育現場での食品ロスを起こす事態は大問題です。これで食育が進むと言えるでしょうか。
デリバリー方式は、導入時には、安価で始めることができるものの、長期的に見れば、輸送コストがかかり続けるうえに、一度事故が起きてしまえば、多くの生徒が食事をとれなくなる可能性もはらんでいます。様々なリスクを抱えるデリバリー方式を全員制にすることにこだわらなくてもいいのではないでしょうか。教育委員会自身が半数以上の学校で自校方式や親子方式の学校調理方式での提供が可能と認めています。今回の予算審査では、市会最大会派から「可能な学校から自校方式・学校調理に転換し、温かいおいしい給食を実現すべき」という要望が出されています。今、立ち止まり、先行実施している他都市に倣い、学校調理方式を柱にした計画に見直すことを改めて強く求めます。
3つめに大型開発への行き過ぎた公金投入の問題、税金の使い方についてです。
予算案では、旧上瀬谷通信施設跡地と東名高速道路を直結するインターチェンジの整備に向けた本格的な検討費2億6,000万円が計上され、高速道路でのトラックの自動運転走行が計画されており、インターチェンジ整備には物流事業者の負担も予定されています。また、瀬谷駅から同地区をつなぐ新たな交通の整備事業も3億9,000万円が計上されています。しかし、これら大型事業で、最大の利益を得るのは、来場者のアクセス手段を取得する観光賑わいゾーンで巨大テーマパーク事業を営む事業者です。新たな交通と新たなインターチェンジの整備費は総額1,000億円は下らない事業費が見込まれます。本市が進める施策ではありません。このまま押し進めていけば、市債発行など後年度負担をも増やし、財政を硬直させる事態を招くのは火を見るより明らかではないでしょうか。 また、インターチェンジ事業を「災害時のため」と、本来の狙いをそらす形で示していることは市民に不誠実であり、まったく納得できません。インターチェンジも新たな交通も最大の利益を得るのは極一部の物流事業者と巨大テーマパーク事業者であり、市民の納めた税金を充てて進めることではないと考えます。
そして、市街地開発事業費会計も問題です。関内駅前で高さ制限及び容積率の規制緩和がされる3棟の民間タワービルの建設計画が進んでいます。市庁舎跡地に立つ1棟は、「国際的な産学連携」等に資するとして、市による土地貸付料を相場の半分に大まけしています。しかし、肝心の産学連携を担う大学、企業は未だ公表されていません。市が便宜をはかるのはこの1棟に止まりません。関内駅前地区市街地再開発事業には、別のデベロッパーが隣接して約1,000億円を投じ2棟のタワービルを建設する再開発が予定され、ここには本市が217億円を補助するとしています。新年度は、51億円を計上。この2棟は、富裕層むけの賃貸住宅、オフィス、商業施設に供されるものと聞いています。当該地区は、老朽化したオフィスビル、道路の狭あいなどの防災上の課題がありますが、課題解消で得られる利益の大半は、民間事業者のものになります。約200億円の公金を投入する公共性はないと考えます。このような民間の開発事業は民間資金で行うのが当然のことです。補助金の大幅減額こそ必要です。
党市議団は、税金の使い方をしっかりチェックし、引き続き市民生活を支える税金の使い方にかえるために力をつくすことを表明し討論を終わります。