実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように、対応する質疑と答弁を交互に記載しました。
中島議員:私は、日本共産党を代表し、本定例会に提出された議案に関連して、市長並びに教育長に質問します。
入居を希望する市民の切実な要望に応えて、市営住宅建設の促進を
最初は、市第66号議案「市営住宅条例」および67号議案「改良住宅条例」の一部改正についてです。いずれも、公営住宅法施行令の改正に伴って、来年4月から家賃算定方法や市営住宅に入居申し込み可能な世帯収入の上限を現在の20万円から15万8000円に、そして明け渡し基準を39万7000円から31万3000円にそれぞれ引き下げ、5年間の激変緩和措置をとるものです。結果として、入居制限を強化するだけでなく、現在の入居世帯の約30%に家賃の負担増をもたらすものであります。
貧困と格差の広がり、税金と社会保障の負担増、物価高騰による国民の苦しみに追い打ちをかけるものであり、「改定」実施を撤回するよう国に求めるべきです。合わせて、国言いなりになっての単なる条例改定で良しとせず、本市独自による減免制度の拡充や救済措置を検討すべきです。市長の答弁を求めます。
低額家賃で一定の質をもった民間賃貸住宅が不足している今、公営住宅の新規建設を急ぐことこそ求められています。横浜市の市営住宅戸数は363万人の人口に対して3万1000戸余であり、人口比で大阪市や神戸市、名古屋市などの1/4から1/3と、他都市に比べて異常に低い水準であります。本市が行っている「市営住宅の新規建設中止」をただちに改め、入居を希望する市民の切実な要望に応えて、市営住宅建設を促進すべきですが、いかがですか。
また、宝くじを当てるような高倍率の中で、市営住宅を希望しながら入居できない市民のために、市営住宅へ入居できるまでの間、民間住宅入居者へ「家賃補助制度」創設等を検討すべきです。とりわけ、来年度から予定されている「住み替え家賃助成制度の打ち切り」で引越しを余儀なくされる高齢者等に対し、希望者には優先的に市営住宅に入居出来るようにすべきです。合わせて、市長の答弁を求めます。
中田市長:お答え申し上げます。
まず、市第66号議案および市第67号議案についてのご質問であります。
国に対して施行令改正の実施の撤回を求めるべきであるということでありますけれども、当該施行令は平成19年12月27日に交付をすでにされておりますが、本市として国に撤回を求めるということは考えてはおりません。
本市独自の減免制度の拡充や救済措置を検討すべきであるということでありますが、今回の施行令改正に伴い、全入居世帯の約7割については使用料が減額になります。残りの3割の世帯については使用料が増額になりますが、増額分についても5年間の経過措置が設けられております。このため、本市独自の対応は考えておりません。
市営住宅の建設促進についてでありますが、昨年交付されました住宅セーフティネット法基本方針の中においては、低額所得者などについて公営住宅だけでなくその他の公的賃貸住宅や民間賃貸住宅を活用し、居住の安定を図ることとされております。本市においても、限られた財源や民間住宅を含む既存ストックなどの資産を、多様な方法で効果的に活用して、居住の安定を図るように努めてまいりたいと思います。
民間の賃貸住宅の家賃住宅についてでありますが、現在低額所得者などについては生活保護制度において住宅扶助として家賃補助が行われております。ご指摘のような新たな家賃補助制度の検討については、現時点では考えておりません。
市営住宅への優先入居についてでありますが、公営住宅法においては入居者の選定は公募によることとなっておりまして、ご指摘のような優先入居については制度上不可能であります。本市においては、高齢者、障がい者などには優遇倍率を設定し、当選しやすくなるように、現在も配慮を行っているところであります。
奨学金は廃止・引き下げではなく拡充こそ必要
中島議員:次は、市第71号議案「奨学条例の一部改正」についてですが、これは本市独自に行ってきた大学奨学金月額4万4000円の無利子貸付廃止と、高等学校奨学金を月額1万2000円から1万円に給付を引き下げようとするものです。
まず、大学奨学金の廃止についてですが、1953年以来の「教育の機会均等、経済的理由への修学援助」を、「なぜ今、打ち切るのか」、自治体の基本姿勢が問われる問題であります。それも「貸付方式」で、1学年10人程度、4学年全体でも40人と、本市の財政負担はわずかなものです。日本の大学・高校の授業料が「世界一高い」ことや、今後景気悪化による国民生活の困難が予想されるなかで、廃止などはすべきではありません。教育長の明確な答弁を求めます。
高校奨学金についてですが、これは「給付方式」により、受けられる枠はわずか450人で、現在6倍を超える倍率です。本市高校生が7万人を越えるなかで、余りに少ない定員枠と言わざるを得ません。今回支給額を月額2000円切り下げて、対象者を増やそうとするやり方は改善とも拡充とも言えません。この措置によって対象者が仮に30人増えたとして、現状の水準で奨学金を支給しても、年間予算はわずか400万円余の増額に過ぎません。奨学金の拡充や対象者の拡大こそ必要です。明確な答弁を求めます。
田村教育長:市第71号議案について、ご質問をいただきました。
大学奨学金の廃止についてですが、平成16年度に日本学生支援機構が設立をされ、大学奨学金は主に国が担うことになり、また横浜市の大学奨学金の応募者が年々減少し、倍率も低い状況にあることから、今回これを廃止するものでございます。
高校奨学金の拡充についてですが、奨学金の支給額を見直すことで、予算の範囲のなかで支給対象者を増やすよう努めてまいりたいと考えております。
指定管理者制度は図書館になじまない
中島議員:つぎに、市第72号議案「図書館条例の一部改正」についてです。これは、本市図書館18館のうち、青葉区の山内図書館に初めて指定管理者制度を導入しようとするものです。「あり方懇談会の提言を受けて」を理由としていますが、この「あり方懇」に市民代表として参加された複数の委員から、「検討した内容や事実に反する」と、抗議ともいえる「意見書」が市長や教育長に提出されるなど、こんな市民をないがしろにしたやり方は問題ではありませんか。
さらに、公立図書館に指定管理者制度を導入することは、図書館の目的に沿った安定的運営等にむけ、数多くの弊害や問題を生じさせます。
議案で、指定管理の期間を5か年としているように、同一の指定管理者が長年にわたることは制度上保障されません。これでは、図書館の大事な機能であるレファレンスや、司書など専門的知識を持つ図書館職員の養成・確保に弊害が出ることは明らかではありませんか。
また、山内図書館に指定管理者制度を導入することによって、年間1650万円のコストが削減できるとしていますが、コスト削減の大半は人件費の削減です。すでに導入された自治体のある図書館長は、「低予算で官制ワーキングプアの構造だ。低賃金では使命感も薄れる」と嘆いておられます。これで公立図書館の使命が果たせますか。
図書館の一体的運営、図書館間の連携にも弊害が危惧されます。当局は、中央図書館が中心となり、図書物流やレファレンス対応をするので問題ないとしていますが、指定管理者が民間企業としてのノウハウや技術、個人情報の管理や守秘義務に対する違いがあるのは当然です。
これら、弊害や問題点の指摘について、教育長の明確な答弁を求めます。
「社会教育法の精神に基づき、健全な発達を図り、国民の教育と文化の発展に寄与する」また「入館料その他資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」とする公立図書館の設置目的、および図書館運営に必要不可欠な安定性・継続性・蓄積性からして、図書館へ指定管理者制度の導入はそぐわないものであり、議案は撤回すべきです。答弁を求めます。
田村教育長:次に市第72号議案について、ご質問をいただきました。
横浜市立図書館のあり方懇談会の報告を踏まえて、指定管理者制度を導入するに至った原因ですが、報告書では効率的な管理運営を実現するための想定される手法として、外部委託の拡大、指定管理者制度の導入などをあげ、それぞれ比較考慮が必要であると述べられています。これを踏まえ、教育委員会として他都市での事例研究などを行い、新たな行政経費の増を伴わず、現行の図書館サービス水準の維持・向上を目指す効率的な管理運営手法として、指定管理者制度の導入案をまとめたものでございます。
指定管理者の変更に関しては、図書館サービスに支障がないよう、指定管理者間での引き継ぎを行うことを募集の際の条件に定めるほか、中央図書館が長期的視野に立った市立図書館の計画的な管理運営を担い、指定管理者制度導入館に対しても、その他の館と同様に支援をしてまいります。
指定期間につきましては、社会教育施設である図書館に導入されることや、他都市状況を勘案して、導入期間を5年が妥当だと考えております。
指定管理者制度では、公共図書館の設置目的を果たすことができないとのご指摘につきましては、今後も本市の公共図書館として図書館法の第1条に定める国民の教育と文化の発展に寄与するという目的を踏まえて、図書館行政の推進を図ってまいります。
指定管理者制度導入による図書館の一体的な運営への影響につきましては、継続的安定的な図書館サービスについては、中央図書館が長期的視野に立った管理運営を担うこと、司書のサービスの質については指定管理者の司書スタッフにより、地域図書館の現行サービス水準を維持すること、業務要求水準書の中で指定管理者に対し個人情報保護など法令順守を求めること等々の対策を講じ、引き続き市立図書館として一体的な運営に努めてまいります。
公共図書館に指定管理者制度導入はそぐわないとのご指摘ですが、指定管理者制度導入館においても、中央図書館の支援のもと市立図書館の一翼を担う地域図書館として、資料の収集・整理・保存や市民への情報提供など、公共図書館としての役割を果たしてまいります。
深刻な倒産の危険から中小零細企業をどう守るか
中島議員:最後に、市第85号議案「一般会計補正予算」緊急経済対策に関連して伺います。
アメリカ発の金融危機は、日本経済にも不況の進行など深刻な影響を引き起こしています。その原因を一言で言えば、ばくちのような投機、「カジノ資本主義」の破たんです。「破たんのつけを国民に回すな」、この立場でしっかり対応することが、政治の責任ではないでしょうか。
麻生内閣による景気対策の「目玉」は2兆円の「定額給付金」です。「所得制限」をめぐって迷走し、各地の首長から批判が続出しています。また、「消費税増税予約付き給付金」では、まじめな景気対策とは言えず、「公金を使った選挙買収」といわれても仕方がない代物です。「2兆円も使うならもっと効果的に」というのが、いまや国民の圧倒的な意見ではないでしょうか。政府の経済対策は、本市の施策にも影響いたします。市長は、この「定額給付金」による景気対策について、どのような見解をお持ちか、伺います。
深刻な倒産の危険から中小零細企業をどう守るかの問題です。貸し渋り・貸しはがしが激しさを増すなか、政府は批判の多い「部分保証制度」に対し、「新たな全額保証」の融資制度を示し、これに対応した本市での全額保証融資制度、いわゆる「セーフティーネット特別」に加えて、今回融資枠50億円の「緊急借換特別資金」を創設しようとしています。しかし、この制度は時限措置と同時に、50億円の融資枠で十分なのか危惧されるところであります。そこで伺いますが、本市で対象となる中小企業数はどの程度なのか。「借換融資」に特化した理由は何なのか。また、こういう時期だからこそ、従来からの制度融資拡充も検討すべきだと思いますが、合わせて答弁を求めます。
企業に雇用確保への働きかけを
また、進行しつつある大失業の危険への対応も求められます。トヨタグループで7800人、日産1500人、いすゞ1400人など、派遣や期間従業員の「雇い止め」「解雇」が連日のように報じられ、今後自動車から電機など他の産業にも広がる気配であります。
景気の「調整弁」のように人間を「使い捨て」にしていいのか。大企業の責任とともに、政治の責任が強く求められています。失業の増大は横浜経済にも重大な影響をもたらします。
本市緊急経済対策で、「ジョブマッチングよこはま」による就業相談等の拡充を打ち出しています。これらと合わせ、ぜひ本市として、市長をはじめ幹部職員が一丸となって、派遣や期間従業員など非正規雇用を多く抱える大企業、とりわけ本市の税金軽減や助成金による立地促進条例によって進出した企業を直接訪問し、「雇い止め」の自粛、雇用確保への「要請」を行うべきです。そして、中小企業には「雇用確保への特別助成制度」の創設などを検討し、大失業の危険を食い止める対策に乗り出すべきです。市長の見解を求めます。
以上、日本共産党を代表しての私の質問を終わります。
中田市長:次に、市第85号議案についてのご質問をいただきました。
まず、定額給付金についてでありますが、これについては国の動向を見極めて、本市での対応について今後検討をいたしてまいります。
緊急借換特別資金の対象となる中小企業についてでありますが、国の指定する618の業種に属して、かつ売上高や利益率が前年同期比3%以上減少していることなどが要件となります。国によると、全国の中小企業数の約65%が指定業種に属するとしておりますので、本市においては中小企業約7万3000社のうちやく4万7000社がこの業種に該当するというふうに推計されます。このうち、売上高の減少などの要件を満たす企業が本資金の対象となります。
借換に特化した資金として、緊急借換特別資金を創設する理由についてでありますが、現在の厳しい経済状況下、既存の借入金の返済負担に苦しむ市内中小企業が増えています。これらの企業が月々の返済負担を軽減し、資金繰りを円滑化するということによって、健全な企業活動が維持できるように、借換に特化した資金を創設をいたすものであります。
既存の制度融資の拡充についてでありますが、本年9月には原油・原材料高に苦しむ企業を対象として、金利を大幅に引き下げた原油・原材料価格高騰対策特別資金を創設をいたしました。さらに、10月31日には国の緊急総合対策を受けて、セーフティネット特別資金の対象業種を大幅に拡大をいたしまして、保証料の引き下げ、融資期間の延長といったことを行ったわけであります。
企業に対して、雇用確保を要請すべきということでありますが、これはすでに私どもとしても努力をしているわけでありまして、地元経済団体や労働関係機関で構成する横浜市地域連携雇用促進協議会において、すでに雇用の確保や就業支援について協議を行って、連携した取り組みを進めることを確認をしているところであります。企業にとってはもちろん厳しい経済情勢ではありますが、今後とも様々な機会を捉えて、雇用の確保については働きかけをいたしてまいりたいと思います。
特別助成等を創設して雇用確保の安定化を図るべきということでありますが、本市においては厳しい雇用情勢が続くなか、緊急経済対策として特に若年者、女性の雇用・就業を支援をする「ジョブマッチングよこはま」事業の拡充ということに取り組んでまいりました。さらにハローワークや商工会議所などとも連携をいたして、中小企業の雇用促進に対して助成を行うジョブカード制度の推進ということなど、国の助成制度も活用して雇用の確保に努めてまいりたいというふうに思います。